メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

思わぬ瞬間

2005-08-30 16:38:18 | lyrics

思わぬ瞬間
思わぬ状況にて
生命(いのち)は減っている
たった今 の少し前
ノート上のアルファベットが




一定規則で
言葉になるんだよ
一分前の 零点一五秒後
手の甲にはりついた命
机上にのびきっている命
多種多様の手段を投じて




私たちは生き延びてきたけれど
この
気づかないうち
正確には
気づく 多少の寸前
奪われゆく生の
恍惚を伴う




おお可愛や マンブリナ
愛し恋しや マンブリナ
君はクール
唇は薄情
優しすぎる人間は恐い
笑顔のうまい奴は信用出来ない

なのに

マンブリナは鬼神か菩薩のように
万物に笑いかける




自らの記憶が他の者たちの記憶と
混じる時
奪われる生の恍惚が体中に走る

地球は一個になれない
余談であるが

人から好かれない奴は
やはり好きになれない
冷酷なマンブリナ
君は人気者




姿が美しい者は心も美しい
姿の美しさは
歯並びから始まる

だけど

マンブリナには歯がない
歯なしのマンブリナ
マンドリンと遊ぶマンブリナ
マリファナをやって
マンボを踊った
ブリキ製のバンダナを腰につけ
満開のリンドウをまっかに燃やす




サボテンさんの根が
グデングデンに腐ってしまった
君にはすっかりだまされてしまった
顔を見ただけじゃ死んでるなんて思えない

君は必ず再生する
生命(いのち)の再生には惰性を覚える
根は水を含んだ茶色で
土はカビている
夜の外気は
サボテンさんの魂にチャンスを与えに
近づいてくる




君の生命(いのち)はマンブリナに
しばし預けるとする
マンブリナは復活の神

サボテンさんの脳はまだ
腐っちゃいないよ
体の十分の一はカビてるし
トゲは紅葉色だけど
誰が死んでも
その意識は生き続けるのだから




謝ってばかりいる者は許したくない
機械の機嫌をとる
キカイはなかなかうまく私を使いこなす
キカイは私のほうかもしれない

時間内での自由
宇宙の選択
ノアの方舟は宇宙船かUFOか

君と一緒にもう少し生き延びてみよう
あともう少しだけ生き延びてみよう
地球爆破の瞬間
この目の裏に映してみたい



10
私が一兆分の一であるとすれば
足の下に這いずっている虫なんかなんだ
大森林の中の
一本の大木の中の
一枚の葉の裏に棲む
一匹の虫けら

お前らにとって その葉っぱの裏の
十平方センチメートルが全世界だ
十平方センチメートル内での
喜怒哀楽
生老病死

お前らに大木が理解できないどころか
大森林なんて地球上に
いっぱい存在していることも

一滴の水滴どころか
海という大水があることも

人間と呼ばれる我々が
コンクリートでできた囲いの中で
毎日、毎週、毎年、あくせくしていることなんかもちろんのこと

こんな地球のほかに
星なんかまだまだ
いくらでも宇宙に存在していることなど
分からないのだ

そんな大量のことを一度に教えたら
虫けらのなけなしの頭は
ちりぢりのこなごなだよ



11
背の高いハッピゲムは
頭のてっぺんに自意識を掲げて
頭の中にはオガクズを詰めている
夕暮れには影の射す部屋で
くせっ毛を大切に梳かす



12
人助けは優越感と良心の呵責
人は私が機械人間(アンドロイド)だとは
まだ気づいていない

美人、聡明、お人好しがハッピゲムのタイプ
そして加減のいい純情さが決めて

理想イメッジを掲げて歩いている奴は怖い
いちいち合わせていられない



13
人の欲望は限りない
一度満ち足りるとあっけない

サボテンさんの亡霊が
なま暖かい風に揺れている
雲はごうごうと空の中で流れている



14
影法師は自分のために泣いてたっけ
もうあんたについてゆくのはこれっきりだと
神経質な横顔は泣いていた

爪の間に
ひとの顔をかきむしった時の
皮が残っている

ハッピゲムはキャラメルみたいな目をしている
カーテンは開けたままで 夜が訪れる



15
そのまま朝が降りる
低空をカラスがまるで鷹になった気になって
翼を風に乗せようとしている







1989年3月5日記

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