1999年初版
※
「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください
江戸川乱歩がベストテンに選んだだけある名作
アガサ・クリスティーとも並んで賞賛された作家ということで気になった
学者というのも頷ける、かなり突っ込んだ知識も多い
教会の鐘の音に楽譜?があるのか 初めて知った/驚
それに関する小題がついていて
各章の内容をさり気なく示唆しているのが粋
冒頭の年末年始の鐘の演奏から引き込まれ
後半の大洪水の描写では、息せき切って読み
自分も自然の大きな動きに巻き込まれた気持ちがした/汗
ドロシーの生まれ故郷が舞台なのか
沼沢地(フェン)という土地柄が暗い事件を呼び込んでいるようだ
今作で大活躍する
ピーター・ウィムジイ卿が見事に謎を解明する
所々でシャーロック・ホームズの偉名も出てくるのが
推理小説ファンにとっては嬉しい
緊迫感の中で、時々笑わせてくれる文章も好きv
にしてもかなりのボリュームの単行本
読み応えがあるとも言えるけど
ジェヴナイルなら難しいところは簡略化して
面白い部分をまとめてくれてるから
半日で読めるんだな
<半分読んだところまでの私の謎解き>(ネタバレ注意
読後、答え合わせしたら、なかなかいい線いってたのが分かるv
推理小説をたくさん読むほど勘が冴えてくるのかも?
クラントン→ウィムジイが12.31に見た 生きてる? 死んでる気がする
ディーコン→脱獄の時にルグロに話した?→穴で死亡 本人?
死体→ルグロ 悪党 鐘の名前を語る
ポッティの話が本当なら8人の鐘つきたちがみんなグル?
殺人と埋めたのは鐘を鳴らしながら交代に?
詩を書くのはディーコン→宝石のありかを詩にした
ソーデイがメアリーと再婚したのは
ディーコンの嫁だったから?
その頃からの仲とか?
ウィムジーがあの夜、休憩した時に見た明かりは死体を埋めてた?
流感のソーデイが怪しい
【内容抜粋メモ】
江戸川乱歩は第一次世界大戦前も十傑を選んでいるが
戦後さらに選び抜いたのがこのシリーズ
■まえがき
イギリスは世界で唯一、
鳴鐘法というわざを完成させた
<登場人物>
ピーター・ウィムジイ卿 貴族探偵
マーヴィン・バンター 従僕
【フェンチャーチ・セント・ポール】
セオドア・ヴェナブルズ 牧師
アグネス・ヴェナブルズ 妻
エミリー メイド
【ナイン・テイラーズ】
エズラ・ウィルダスピン 1番鐘 ガウデ 鍛冶屋
ウィリアム・ソーデイ 2番鐘 サベイオス
ウォルター・プラット 3番鐘 ジョン
ハリーゴダベッド 4番鐘 ジェリコー 墓守
ジョー・ヒンキンズ 5番鐘 ジュビリー 庭師
アルフレッド・ドニントン 6番鐘 ディミティ 赤牛亭主人
ジャック・ゴドフリー 7番鐘 バッティ・トーマス
ヘゼカイア・ラヴェンダー 8番鐘 テイラー・ポール
【赤屋敷】
サー・ヘンリー 当主
レディ・ソープ 妻
ヒラリー・ソープ 娘
エドワード・ソープ 叔父
ジェフリー・ディーコン 元執事
ゲイツ夫人 家政婦
ウィルブラハム夫人 エメラルドの首飾りの持ち主 ソープ家の遠縁
メアリ・ソーデイ ウィルの妻 元ディーコン妻
ジェイムズ・ソーデイ ウィルの兄 船乗り
ベインズ 医師
ポッティ・ピーク 村の変わり者
ノビー・クラントン 前科者
シュザンヌ・ルグロ 農家の娘
【警察】
ブランデル リームホルト警察署長
チャールズ・パーカー ロンドン警視庁警部 ウィムジイの妹の夫
アリスティード・ロジェ フランスの警察署長
■
第一部 八鐘によるケント式高音鐘変座短曲
●第一奏 鐘が上げられる トロイト『鳴鐘法』
横殴りの吹雪の中、運転しているピーター・ウィムジイ卿
助手席には従僕マーヴィン・バンターを乗せている
(主人が運転してるのは、趣味からか?
道を間違えて、フェンチャーチ・セント・ポールに出て、教会を見つけて
牧師ヴェナブルズと妻が快く迎える
村は流感が流行りバタバタしている牧師だが
立派な教会建物と8つの鐘を自慢する
牧師と言えども、謙遜しないんだな
話しだしたら止まらず、やたらと物を置き忘れる憎めない人w
牧師館が舞台と分かり、アガサを意識してたのかと思ったけれども
ドロシーの父が牧師と分かって納得
だから、こうした教区の複雑な事情が細かく描けたのか
村人に溝にハマった車を出してもらい
鍛冶屋のウィルダスピンに修理してもらう
年末年始の鐘を9時間鳴らし続けるという新記録に挑もうとしていて興奮していると
ウィリアム・ソーデイが流感で倒れたと聞いてショックを受ける
こんな吹雪の中を出かけて、フラフラのところを
アシュトン夫妻が見かけて家まで送った
こうした細かい出来事も後々の伏線になるからキチンと覚えておこう
ウィムジイが鐘を鳴らしたことがあると聞いて
これは神のお導きだと、鳴らし手に加わるよう頼む
吹雪を運転してきたのに、喜んで引き受けるあたりが主人公っぽい
そうと決まったら、短い練習をするために8人揃って紹介する
牧師は教会での説教を始め、ウィムジイも参列する
上位天使の智天使(ケルビム)と熾天使(セラビム)の美しさにも感動する
死者の弔いの鐘も打つナイン・テイラーズ
夜0時から朝9時まで鐘の演奏が始まる
ナイン・テイラーズは時々、牧師と交替して休憩をとる
ウィムジイが午前3時に見た明かりが
私はずっと大事な伏線だと思ってたけど関係なかった?
赤屋敷でふせっていたレディ・ソープが元日に亡くなる
昔は金持ちだったが、ある事件があって不幸が続いたと聞き
探偵の興味がわいて話を聞く
●
エメラルドの首飾り事件
当主サー・ヘンリーの結婚式の夜
ウィルブラハム夫人の豪華なエメラルドの首飾りが紛失した
疑われたのは執事のディーコンと前科者のクラントン
夫人が宝石を便器の影に隠したのをメイドが見て(w
ディーコンの妻メアリに話したのがきっかけ
サー・ヘンリーは責任を感じて弁償したお蔭で財産を使い果たした
その上、健康も崩した
15歳の一人娘ヒラリーがいて、作家志望
ディーコンとクラントンの供述は食い違い、投獄されて
宝石も消えたまま未解決
ディーコンは看守を殺して脱獄し、メイドストーンの穴に落ちて死亡
ウィムジイは村を離れる際、仕事を探しているという男に
フェンチャーチ・セント・ポールの道を聞かれる
その手を見て、刑務所から出所したばかりだろうと推理する
■
第二部 七鐘によるグランドシャー・トリプル式長曲
ヒラリーは鐘の手入れをするゴドフリーの様子を見る
7番鐘のバッティ・トーマスには不吉な事件がある
鐘を鳴らす綱で首を吊られて死んだ話など
ヒラリーは意味不明な詩が書かれた紙を拾う
妻に先立たれたばかりのサー・ヘンリーも後を追うように亡くなり
ヒラリーは1人きりになってしまう
ヘンリーは妻と同じ墓に埋めて欲しいと希望していたため掘り返すと
見知らぬ死体が出てきて騒動になる
死体は縄で縛られた跡があり、死後、顔は判別できないほど殴られ
両手は切り取られていた
死亡推定日は、エズラのもとで働いていたよそ者が
3日ほどで行方不明になった日と重なり、その男ではないかと推測
ウィムジイが探偵でもあると気づいた牧師が解明を依頼
嬉々として村に戻り、よそ者とは、元旦の帰り道に道を聞いた男ではないかと推理
スティーブン・ドライヴァーと名乗ったが偽名の可能性が濃い
友だちから「トーマスとポールを訪ねろ」と言われたが
2つとも人ではなく鐘の名前と分かる
ウィムジイが地元警察署長ブランデルとともに村人からいろいろ聞き出す
クラントンが出所していることから、ドライヴァーはクラントンではないかと推理
(牧師館の時計が15分遅れてるっていうのもアガサっぽい
「何一つ持たないでこの世に来た
また、何一つ持たないでこの世を去って行く」
(ユーミンの好きな曲にもそんな歌詞があるな
ヒラリーはウィムジイから作家になれると言われて喜ぶ
叔父のエドワードは堅物で反対している
だが、屋敷は抵当に出され、叔父の家で暮らすことになる
ウィムジイとともに推理を進める
ウィムジイはブランデルからエメラルドの首飾り事件を改めて詳しく聞く
ウィルブラハム夫人はどケチで“三月ウサギ並みにイカレてた”てw
赤屋敷の家政婦ゲイツ夫人もかなりのクセ者で
レディ・ソープの葬儀に出した自分の花飾りが
いつの間にか位置が変わっていたのを
コッピンズが図々しく自分のをのけたと怒る
コッピンズ夫人に聞くと、ゲイツ夫人がレディなんてとんでもないと反論w
花飾りを動かしたのは自分じゃないと否定
誰かが死体を埋めた時に動かした
ウィムジイは釣り竿で井戸から事件に使われた縄と帽子を釣りあげる
教会に縄があると知っている人物
結び目から大体の察しが付く
村の変わり者ポッティが、事件当夜、墓地をうろついて
ナイン・テイラーズにもう1人いたことを話すが相手にしないブランデル
ポッティは子どもの頃、母が牛小屋で首を吊って死んでいたのを見てから
おかしな振る舞いをするようになった
事件から様子がおかしいソーデイを訪ねる
兄からもらった喋るオウムがなにか知ってそうだな
アシュトン夫妻は、ソーデイが銀行から大金をおろしたと話す
後で調べると金はすぐに銀行に戻されていた
死体は安っぽいイギリス製の服を着ていたのに
下着だけはフランス製で、やけにボロボロで丁寧に繕われているのがひっかかる
ウォルビーチの郵便局でバンターは一芝居打って
スティーブン宛てのフランスからの手紙を手に入れる
宛名はなぜかポール・テイラー
ウサギ:イギリスでクリケットやテニスが下手な人を意味する
ウィムジイ:
フランス人は差出人の名前と住所を表に書かない
手紙の多くはどこかで紛失するものだという固定観念がある(ww
イギリス人はこだわりがなくて親切だから
郵便局が開封して、中身を熟読し、文面から住所を見つけ出し
地元の郵便局員に返送してよしとしている
水門番もクラントンを覚えているのではと話を聞く
水門番:
ウォッシュ湾新放水路ができるというのに
ここの水門はどれほど訴えても直してくれないのは
どこが大金を出すかモメているせいだ
手紙はポール(これも偽名)の妻シュザンヌからで
3か月も音信不通で生活に困っているという切実なもの
息子は9歳 その頃、クラントンは牢屋にいたからポールは別人
ウィムジイはフランス語も達者なため、戦時中の経費節減のためにも
ブランデルの代わりにフランスに行き、地元のロジェ警察署長と
シュザンヌに会う
マルヌの退却で負傷した兵を助けたら、記憶喪失
その後、ジャン・ルグロという名で養子となり2人は結婚
下着を見せると夫のものだと分かり、真実を話すシュザンヌ
男は脱獄兵でかくまった
農場経営が苦しくなり、イギリスに金になる話があると
友だちに手紙を書き、ロンドンに行ったまま帰らない
とすると、死体は別人でクラントンは生きている
ディーコンは脱獄に協力させるためにクラントンに話したのか?
ヒラリーはウィムジイに鐘楼で拾った紙を送る
シュザンヌが使った紙と同じ
●クラントンの供述
ウィムジイが元旦に見たのはクラントン
ディーコンが宝石を持ってると分かり村に戻ったが
メアリに気づかれた気がして去った
その後、リウマチ熱にかかり今にも死にそうに臥せっているが殺人は否定
●暗号
詩はエメラルドの首飾りのありかを記した暗号と推理し
さまざまな方法で解読にかかるが全く糸口がない
ウィムジイ:
これに比べれば、シャーロック・ホームズの“踊る人形”は
いかにも胡散臭い(ww
鐘楼や教会全部のカギを持っているのは牧師さん
大晦日の晩、カギは見つからなかったが
忘れっぽい牧師さんのせいだと思われていた
鐘楼の影にビールの空き瓶を見つけて
指紋をとろうと思っていたが、メイドのエミリーが片付けてしまい
バンターは思わず叱りつけて泣かしてしまう
偶然に思えるが、彼女はソーデイの親戚
(これもアガサの牧師館の一件を思わせる
クォート瓶が売れるか麦束亭で聞くと
ソーデイ宅が買ったと分かる(小さい村だと何でもバレバレだな!
牧師の何気ない言葉から、暗号文は鳴鐘法が使われていると分かる
『詩編』「主はケルビムの上に座せられる」
ウィムジイは教会の回廊席を取り外した話を思い出す
そこには赤屋敷の使用人らが座っていた
ディーコンが日曜の朝、教会から出たところで逮捕されたことから
そこに宝石を隠したのでは?
死体のポケットに入っていた針金は、席の釘を抜く道具と推理
早速探してみると、あっさりエメラルドの首飾りが見つかる!
刑務所に問い合わせると、ルグロの本名がアーサー・コブリーで
ディーコンの死体が見つかった近くに住んでいたと分かる
■
第三部 七鐘によるステッドマン・トリプル式短曲
ウィムジイは死体の死因、殺した犯人以外の謎を解く
ソーデイ夫妻は姿を消すがすぐに逮捕される
ウィムジイ:
放っておいたほうがいいこともある
私も人が苦しむのを直視する勇気がないのです
ヘゼカイア:
正義を基準鐘にしなされよ
そいつについていきゃ、死のお召しが来るまで転座を見届けてくれる
ウィムジイは村を去る
●再びクラントンの供述
ディーコンは生きていた
脱獄して森に隠れていたら陸軍の兵隊が来て殴り殺してしまい穴に落とした
兵士の服を借りたら、そのまま前線に送られ、負傷していたのをシュザンヌが助けた
しばらくは2人で暮らしていたが、景気が悪くなり、宝石のことを思い出した
イギリスに帰るため、クラントンを仲間にして暗号文を書いた
クラントンが鐘楼を覗くと、ディーコンが縄に縛られ、物凄い形相で死んでいた
誰かが死体を墓地に埋めるのを隠れて見ていた
命からがら逃げる途中でリウマチ熱にかかった
ディーコンからもらった暗号文を鐘楼で落とした
クラントン:鐘は猫や鏡に似ている
●ソーデイの供述
ソーデイ:
女房は何も知らなかった
結婚式を挙げ直すためにロンドンへ2人で行った
ディーコンに金をやって追い返すために金をおろした
ウィルブラハム夫人が急逝し、遺産はヒラリーに譲られた
宝石はなぜかウィムジイに贈られ、ヒラリーの管財人に指定される
ヒラリーは遺産を拒み、成人するまで預かることにする
●ウォッシュ湾新放水路の開通式
技師から仕組みを聞き、水門番は彼にも頼んだが聞き入れられなかったと嘆く
1つほじくり返すと、別なところもほじくり返さなければならない仕組みは
今度の事件にも通じると思うウィムジイ
●ジム・ソーデイの供述
兄弟を盗聴器のある部屋で2人きりにすると
互いにディーコンを殺して埋めたと思ってかばい合っていたことが分かる
ウィリアム・ソーデイ:
12月30日の夜、教会でディーコンを見つけ
メアリを脅すつもりだと思い、金をやるから村から出ていけと言い
縄で鐘楼部屋に縛りつけて食事を運んだ
その後、流感で寝込んでしまった
ジム:
ウィルが教会に行って欲しいと頼むから行ったら
ディーコンが死んでいて、ウィルが殺したと思い墓地に埋める際
誰か分からなくするため、顔を潰した
ディーコンの手には大きな傷があるから両手も切り落とした
2人は事後従犯の罪にあたるが、殺したのは誰か、死因も分からないまま
■
第四部 八鐘によるケント式高音鐘変座長曲
ヒラリーにクリスマス休暇に会いに来て欲しいと招待されたウィムジイ
今度はすごい土砂降り
水門番はもうすぐ水が溢れると危惧する
10フィートも上がれば、村は水没してしまう
丘の上にある教会の上に貴重品、家畜を運び、避難するよう指示する牧師
ペットは逃げないよう籠に入れてと言うのも的確で感心した/驚
教会には千人ほど入るから、近隣のセント・ピーターの住人も収容できると提案
他の住民は大混乱したけど、セント・ポールは事前訓練のため整然と行動できたのは素晴らしいなあ!
ついに
水門は決壊!
教会にみんな集まり、点呼をとり、男女、病人、子ども、老人を分けて
てきぱきと温かいスープを作るバンターら
ウィリアム・ソーデイが最後まで水門に残り、水に飲まれた仲間を助けようとして
2人とも亡くなったと伝えると
メアリ:
ああ、ウィル! あの人、もう生きてたくなかったんだ!
可哀想な子どもたち 一体これからどうすればいいの?
悲痛な叫びを聞いていられなくなったウィムジイは
鐘楼部屋に入ると、警笛を鳴らす鐘の大音量で激しい眩暈に襲われ
鼻と耳から血を流しながら命からがら部屋から脱出する!
(この大洪水と眩暈のシーンは大迫力で、心臓が潰れそうになった!
14日後、水は民家の2階まで浸かってようやく引いた
教会ではゲームや余興、結婚式、出産まであり
ウィルとジョンの遺体も発見される
ウィムジイ:
彼はディーコンがどうして死んだのか気づいて責任を感じたんだろう
セント・ポール聖堂には、鳴鐘の間、鐘部屋に入ると死ぬ言い伝えがある
ラッパの音はエリコの石垣を突き崩し
ヴァイオリンの音はガラスの器を砕く
人間の身体は鐘の音に15分以上な耐えられないはずだ
ディーコンは9時間も閉じ込められていた
ブランデル:
この件については、これ以上何もしようがない
それですべておしまいです
(長編を読み終えると、金田一耕助の重厚なミステリー映画を観た後みたいな
感慨深さがあるなあ
(ウィキ参照
“江戸川乱歩の明智小五郎、高木彬光の神津恭介と並んで日本三大名探偵と称される”
高木彬光の神津恭介は知らないぞ 気になる・・・
■
鳴鐘法案内 門野集
ファビアン・ステッドマン『転座鳴鐘の技法』(1668)
軽い鐘は音が高く、重い鐘は低い
イギリスで最も重い低音鐘は、リヴァプール大聖堂のエマニュエル
代表的な鳴鐘法は、本書各部のタイトルにもなっている
グランドシャー、ステッドマン、高音鐘変座(トレブル・ボブ)の3種類
現在、鳴鐘法を学ぶためのバイブルはパウエルの『The Ringers Handbook』(1932)
■
解説 時代を先駆けた新しい女 大津波悦子
ドロシー・L.セイヤーズ
1893年 イギリス・オックスフォード生まれ
父は牧師
大叔父はパーシヴァル・リー
『パンチ』誌創設者の一人
ドロシーは大叔父が誇りでミドルネームを抜くと機嫌を損ねた
父から教育を受け、女性として初めてオックスフォード大学の学位を授与された中の1人
退役軍人エリック・ウェルブトンがウィムジイのモデル
長身で青白い顔のバイロン風青年
生計の足しに推理小説を書く
ジョン・クーノルスと交際したが、裏切られ
その間、別の男性の子どもを身ごもり
いとこに子どもを預けて職場復帰
オズワルド・フレミングと結婚
家庭内離婚状態となる
ピーター卿シリーズは長編11編、短編集3冊、リレー長編5冊
その他、ダンテの『神曲』の翻訳
当時、最先端のコピーライターとして活躍
オートバイを乗り回し、未婚で出産などかなり進んでいた
アガサ・クリスティーと並び称される
容姿に対するコンプレックスが強かった
●
ピーター・ウィムジイ卿
ピーター・デス・ブリドン・ウィムジイ卿
父 15代デンヴァー公爵の次男として1890年に生まれる
兄ジェラスド・クリスティアンが父の死後、公爵を継いだ
妹メアリはスコットランドヤードのチャールズ・パーカーと結婚
デビュー作『誰の死体?』
女性探偵小説家ハリエット・ヴェインと結婚
『忙しい蜜月旅行』を最後に長編は終わる
●
『ナイン・テイラーズ』について
シリーズ9作目
江戸川乱歩:彼女の生まれ故郷、東部イングランドの地方色がよく出ている
しばしば洪水となる湿地帯
鐘にはさまざまな伝承があり
教会の神聖、正義を象徴する
『毒を食らわば』がドロシーの創作最盛期
クロフツ、アガサ、クイーンなどの
「ミステリの黄金時代」を形成
『殺人は広告する』から前期、後期に分けられる
前期は「ハウダニット」、後期は人物、情景描写、ストーリーテリング
本書はドロシーの最大傑作
東京創元社から平井呈一翻訳が出たが幻の名作となった
創元推理文庫 浅羽芙子訳
酒類のセールスマン、モンターギュ・エッグ探偵ものもあるが
日本ではまとまった本になっていない
■
鑑賞 ピーター卿、蘇る 若竹七海
『名探偵カッレくん』リンドグレーン作 尾崎義/訳
ミステリ第一歩は子ども向けのホームズ、ルパン、少年探偵団で
将来の読書傾向が篩い分けられるように思う
ドロシーの翻訳は大人向けでも数冊しかなく超稀覯本!
普通、謎解きミステリの主眼は謎だが
本書では、事件が起きるのは100ページ以上も過ぎてから(それ思ったw
にも関わらず、本書はまぎれもない傑作
うーん、こうなると江戸川乱歩ベスト10の他の9冊も読みたくなってくる
すでにジュブナイルで読んだものはいいとして
いや、体力・気力・時間が無制限にあるなら
大人向けも全部読みたいのは山々だけれども
幸か不幸か、いまだジュブナイル化されていない作品も多い
全部、このボリュームなのかな?
だからこその読み応えが味わえるだろう