1985年 第34刷 前川康男/訳 原田維夫/絵
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「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください
ブラウン神父が解決する6つの事件をまとめてある
冴えない見た目で普段の振る舞いはトロい
血が流れたり、殺されたりしないのはいいんだけど
怪人二十面相的な荒唐無稽な可笑しさは
ジュブナイルとして意訳しているから?
フランス人の義賊的な
怪盗フランボウはほぼルパン
盗みが成功しても、ブラウン神父が説得すると
たとえ逃げてる木の上でもおとなしく聴いてるw
貧しい者にパンすらやらない金持ちのダイアモンドを取り戻して
彼らと楽しくクリスマスを過ごす神父に違和感を感じた
宗教と金の癒着を表現しているのか?
普段はおっとりしているのに
フランボウに脅された時は
怪盗もビックリするほど怖い言葉で脅し返してるし!
このシリーズは版画のような挿し絵だけど
ほかではどんな姿で描かれているのかな
【内容抜粋メモ】
●はじめに 前川康男
ブラウン神父は、だぶだぶの黒い服
つばの広い帽子、壊れかかった傘を持つ変わった坊さん
青い十字架
ヴァランタン探偵は今世紀最大の怪盗フランボウを探す
大男で優れた力を持つ、ガスコン生まれの巨人
(この後から、大男が出てくるたびに犯人だって分かっちゃうw
1つだけ感心なのは、けして人殺し、怪我をさせたりしない
天才的な方法で盗みをする
ブラウン神父は「イングランド東部の田舎者」という言葉通りの風貌
青い宝石つきの銀でできた大事なものを持っている
とわざわざ言いふらしている
ヴァランタン探偵:
探偵はいつも新しいものをつくりあげる
芸術家(犯人)を追い回す批評家みたいなものさ
2人を追って入ったレストランで
砂糖と塩が取り換えられていて店員に苦情を言うと
さっき来た2人の神父が壁にスープをぶちまけたとこぼす
果物店ではリンゴの棚をひっくり返したり
ホテルでは余分に勘定を払って窓を割ったり
菓子店では包みを忘れたから
宛名の場所に郵送したと話す店員
2人が行ったヒースの荒れ野に行くと
座って哲学的な話をしている
ブラウン神父:
どんな空想の世界にも
“なんじ、ぬすむことなかれ”という立て札が立っている
神父に化けたフランボウ:
私は地球とは別の世界では
人間の理性をこえたものがあると思っています
宇宙は神秘ですからね
(フランボウのほうが真理を突いてると思うぞ
フランボウはブラウン神父から銀の十字架をとってすり替えたと自慢するが
その前にニセモノとすり替えて
ホンモノは菓子店に預けてきたと明かすブラウン神父
そして、自分が道々してきたフシギなことに導かれて
3人の探偵と刑事がそばに来ていると話す
3倍の料金を払っても文句が言えなかったのは
怪盗だと周りに知られたくないから
ブラウン神父:
さっき君は理性を攻撃していたが誤った考えさ
理性をこきおろす宗教なんてないんだ
(せっかく追い詰めても逃げられたんだね
ふしぎな足音
『12人の漁師』というクラブの晩餐会には、黒ではなく緑色の夜会服を着る
理由は、黒い服を着たホテルのウエイターと間違えられないため
そのきっかけとなった話
一生の間に解決した事件の中で一番変わった、上手く謎が解けたと思う事件として
ブラウン神父が挙げた
『12人の漁師』は年に1度バーノンホテルで食事をする
庭園を見下ろす席で、特別な魚料理が出ることで有名
『12人の漁師』はみんな真珠のついた
純銀のフォークとナイフを持参してくる
15人のウエイターは厳しい礼儀をしこまれている
この日、急病で1人倒れて、ブラウン神父が呼ばれた
結局、急死して、ブラウン神父は小部屋で遺言を記録していたが
ふしぎな足音が気になって注意を向ける
その足音の主が荷物預かり所に行ったので見に行くと
燕尾服の所々がでこぼこしている
ブラウン神父:あなたはポケットに銀をお持ちになっているのではありませんか?
紳士はフランボウだと明かして、どうしてバレたかを聞く
晩餐会では、ホテルのオーナーがフォークとナイフを盗まれたことを話して騒ぎとなる
ウエイターはいつも通り15人いたと話すと、1人急病でいないはずだと言われて驚く
荷物預かり所にブラウン神父がフォークとナイフを並べて見せる
ブラウン神父:
犯人は謝ったから逃がした(神父は警察代わりの権限があったのか?
悪いことをして、すぐ心を改めるのは立派
世の中の金持ちはみんなぐうたらで
何の役にも立たない生活をしているのに
ちっとも悔い改めようとしないほうがよほど悪い
私の針と糸は見えない特別製なので
世界のどこに行っても、すぐ戻る
「謎解き」
ふしぎな足音はウエイターと紳士のようだと気づいた
犯人はウエイターとお客の1人2役を演じていた
それ以来、緑色の夜会服を着るようになった
飛ぶ星
フランボウが歳をとり、悔い改めた頃にした最後の悪事の話
ルビー・アダムズは、アダムズ大佐の1人娘
隣りに住む新聞記者クルックと恋仲
ルビーの名付け親レオポルド卿は周りから悪口を言われる人物
迎えに出た中には、大佐の亡き妻の弟ジェイムズ・ブラウントと
ブラウン神父もいる
レオポルド卿はルビーのクリスマスプレゼントに
「飛ぶ星」と呼ばれる3つの大きなダイヤモンドの入った小箱をあげる
それを大事に燕尾服のポケットにしまう
(たびたび盗難事件に遭うような危険なダイヤモンドを大事なコにあげるかな?汗
クルックはレオポルド卿を政治家として
人々に十分なパンを与えていないと批判する
レオポルド卿は彼を「社会主義者」だと見下す
みんなで道化芝居をしようということになり
ブラウントは有名な喜劇俳優フロリアンを警官役に呼ぶ
ブラウン神父はロバの頭をかぶせられるw
フロリアンは本物の警官のようで、ブラウントがやっつける芝居は見事
そのままブラウントは庭から出ていく
レオポルド卿は飛ぶ星がなくなって慌てて、クルックを疑う
ブラウン神父:みなさん顔なじみだが、フロリアンは誰も知らない
調べると、クロロホルムをかがされて気を失っている本物の警官だった
アダムズ大佐の妻が亡くなったのは2か月前
ブラウントが来たのは亡くなって1週間後
ブラウントがフランボウだと気づいたブラウン神父は
大木の上に逃げた彼に聴こえるように説得する
ブラウン神父:
君はまだ若いし、頭もいい、ユーモアもある
いい気になっていても長続きするものではない
盗賊の最後はみんな惨めなものだ
クルックは疑われ、ルビーと結婚できなくなるのもお前のせいだ
木の上から盗んだ3つのダイヤモンドが落ちてきて
フランボウはどこかに姿を消す
ブラウン神父はアダムズ家で楽しくクリスマスを過ごす
スマートさんの金魚
スマート老人は、自分の骨董品コレクションの中でも
純金でできた金魚がとても自慢
誰にでも自慢して、ドアにかんぬきもかけようとしない主人を心配する
秘書のフランシス・ボイル、召使のハリス、事務のジェームソン、家政婦のロビンソンら
周りには6軒の家があり、みんなパーティーに来ている
スマートさんの金魚を買いにきた美術商ハーマーもいる
パーティー後、スマートさんはスミス氏とともにロンドンに行くから
留守の間、金魚のある奥の部屋を守るために
その手前の寝室でボイルとジェームソンが寝るように言いつける
ボイルは外で誰かが魚の歌を歌っているのを聴く
ジェームソンがバルコニーに出て、外に怪しい奴がいる!と叫び
玄関ドアにかんぬきをかけに行く
(もうこの時点で犯人が分かる
ボイルが見ると、バルコニーの下に魔術師のような男がいて
金の魚の歌を歌って消える
気づくと金の金魚がない
腕利きのビンナー警部が駆けつけるがお手上げ
パーティーに来た面々がみんな揃う
「謎解き」
かんぬきはかける時は音がしない
外す時に音がする、ということで犯人はジェームソン
いもしない怪しい男の話をしてから玄関に行きかんぬきを開けた
スマート氏の骨董品から青いカーテン、楽器を出して魔術師に扮した
(こういう荒唐無稽さが怪盗二十面相ぽいw
ブラウン神父:
一番のお手柄はロビンソンさん
普段のスマート氏の不用心さを心配してかんぬきをかけておいたため
音のトリックを見抜けた
霧のなかに消えたグラス氏
犯罪者の心理を研究しているオリオン・フッド博士はとても几帳面な性格
ブラウン神父が相談にやって来る
マギー・マクナブと下宿人のトッドハンターが結婚したがっているが許されない
(名探偵なのに、なぜ博士に頼った?
最終的には自分で解決してるし
トッドハンターはお金を持っているが何の仕事か分からない
何時間も部屋にこもり、なにか研究しているらしい
2人の話し声がした
シルクハットをかぶった謎の男グラスを見た
フッド博士:
科学の立場からいえば、人の歴史は破壊と移り変わりの歴史
マクナブさんの家は迷信を信じやすい人たちではないですか?
マギーが走り込んで来て、トッドハンターが殺されそうだ!と言う
グラス氏の声がして、窓から覗いたら、彼が縄で縛られて倒れていた
みんなでトッドハンターの部屋に来て、博士がドアを押し破る
部屋の中は格闘後のようにめちゃめちゃ
ナイフが転がり、シルクハットも落ちているのを見て
グラス氏がトッドハンターから金をゆすろうとしてもみあったと推理する博士
博士:
犯罪学の中にはロープの結び方の研究もある
これは自分で結んだものだ
被害者はグラス氏だと思われる
これを聞いて、すべて分かったブラウン神父は笑って種明かしする
トッドハンターは手品師で、毎日稽古していた
短剣を飲みこむ曲芸でノドを切った(そっちのほうが大変じゃん!!
縄抜けの術を練習中だった
2人の声とは腹話術
グラス、と聞こえたのは、ワイングラス投げの練習の声
(なんともバカバカしいオチ
古城のなぞ
ピクニックに出かけた人々は、雷雨になり大木の下に隠れる
その向こうにはマーン城が建っている
「だれも知らない貴族」というあだ名
ずっとマスクをして暮らしているとか
恐ろしい呪いで、300年に1度頭が3つある男児が生まれるとか噂がある
将軍と夫人は以前付き合いがあったため、それらはウソだと否定する
弟のように仲が良かったモーリスと兄弟のように育てられた
モーリスは海で風邪をひいて死に、そのショックで世間と離れた
婚約者ヴァイオラさんとの縁談も断った
夫人は説得しようと訪ねたが、修道僧のような頭巾をかぶって
口もきかず無視された
(この展開って、ホームズにもそっくりなのがなかった?
将軍:私も“あのこと”だけは許すことが出来ない
その話を聞いたマロー青年はブラウン神父に相談すると
まずウートラム将軍を訪ねて“あのこと”について聞く
マーンがモーリスのモノをすべて処分したこと
葬式もあげなかったこと
事件後にすぐ外国に行っていたことなどが腑に落ちないため
将軍は2人の決闘の立会人として見たことを話す
モーリスは負けず嫌いな性格で
マーン候が結婚するのが羨ましくて決闘を申し込んだ
(妙なきっかけだな
ピストルだけはマーン候にかなわないため、一発で倒れた
なぜかモーリスの介添え人の俳優ロメインは動かず
将軍が医者を呼びに行った
医者は馬で駆けつけ、将軍が追いついた時はもう
モーリスは砂浜に埋められ、マーン候は外国に逃げた
夫人はピクニックの連中と一緒にマーン候を訪ねる
ブラウン神父:
寝ている犬は寝かせておいてやるのが一番いい
そうでないと、恐ろしい出来事が起きる
(このセリフも同じでは???
ロメインだけは急に外国へ行くと電報が来て姿を現さなかった
再び止めるブラウン神父に対して、記事を書きたいジョン卿は非難する
ジョン卿:
こいつら坊主は、壁に巣食うネズミなんだ
他人の家に潜りこんで穴をあけて住んでいる
そこにマーン候が現れて、ヴァイオラが近づくと悲鳴をあげる
ヴァイオラ:彼は25年前に亡くなったモーリスです
「謎解き」
ピストルの腕がマーン候より劣ると分かっていたモーリスは
ロメインに演技を教わり、死んだフリをして
慌てたマーン候が駆け寄ったところを射殺した
ブラウン神父:
さきほど、みなさんは
「マーン候は25年もの間、罪を詫びて城にこもってきたんだから
もう許してもいいだろう」とおっしゃった
モーリスも同じです
さあ、許してあげましょう
みんなは無言で帰る
■
作者と作品について 前川康男
ギルバート・ケイス・チェスタートン
1874年 ロンドンの郊外生まれ
画家になろうと美術学校に通ったが文学者となった
美術評論、政治評論、ドラマ、伝記など様々な仕事をした
ブラウン神父シリーズの短編が一番有名で50編書いた
原文はとても難しいので、今作では易しく書き直した
『青い十字架』は傑作と言われる
■
読書の手びき 滑川道夫
作家によって、犯人の正体をどこで、どう出没させるかというパターンがある
ブラウン神父は証拠や状況で鋭い直感力をはたらかせるタイプで
犯人でさえ、その命を大事に扱う
長編の『木曜の男』『39階段』などもある
アイリッシュの『恐怖の黒いカーテン』など他の作品と読み比べて
考えることで、その作品の良さが理解され
一層深い読みとりができるようになる