昭和51年初版 熊倉美康/訳 J.サンデルス/絵
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください
中学生の子どもとは思えない行動力と推理
兄を心配する妹と弟の関係性の微妙な違いの表現も細かい
周りを取り巻く大人たちの事情も様々
母親の深い悲しみ、新任教師の戸惑い
貧民街のお喋りな奥さんたちの快活さなど
文章には、それぞれの心の中のセリフもあり
子どもらしい言動の機微もリアルでもあり、遠回りでもある
単なる推理小説でなく、人間ドラマを描いている
舞台はオランダで、アムステルダムの都会と対象的な
古い歴史が売りの観光地に住む子どもたちの様子が描かれる
【内容抜粋メモ】
登場人物
ヒュース 運河の水門の番人の息子
イエルチェ・セフレイン 土産品店の娘
ヘル イエルチェの双子の弟 片腕が不自由
カチャ・マンキウィッチ ポーランドから越して来た 教会工事の職人の娘
ラムメルト イエルチェらの兄 18歳 スメルデの自動車車庫で働いている
ヤン・フロレク 新任教師
ウイデマ氏 建築家
ウエテルホルム老人 画家 骨董品好き
レッケルとゼイエピット
●教会の盗難事件
大教会の燭台が盗まれたことが子どもたちの話題になる
アムステルダムには盗品を買い取る連中がいるという噂
ヘルは運河に落ちて、泳げないため、新任教師フロレクが助ける
運河にゴミを平気で捨てる人も多く、汚い上、臭い
●新任教師フロレク
新しい担任がヘルを助けた青年と知り驚く
イエルチェとヘルの双子のきょうだいは同じクラス
以前、兄ラムメルトと遊んでいたヘルが事故で腕が不自由になった経緯を知る
兄が好きなイエルチェは、あれは偶然の事故だったのに
父母は兄を責め、弟を甘やかすからわがままになったと思う
警察署長も兼ねている市長が兄のことで両親と話し合ったこともある
ヒュースの父は堤防監視委員会の水門の番人で、それが自慢
●映画撮影
エダム市内で汚水に関する短編映画が撮影されることになり、小さな町が沸く
フォーレンダムは昔、漁村だったが、干拓されてからは漁業が寂れて、観光地になった
●ラムメルトの疑い
ヒュース、イエルチェ、ヘル、カチャは、いつもなにか話し合う時
スペール塔の物置小屋に集まる
スペール塔から鐘も盗まれた事件もあった
昨夜、大教会からまた献金箱が盗まれた
カチャの父マンキウィッチ氏は教会の復旧工事をしている職人で、話を聞きに行く
マンキウィッチ氏:
博物館に置くような価値のあるものを放っておいたため盗まれた
血のついたハンカチを見つけた
ラムメルトは右手に包帯を巻いていたため
イエルチェとヘルは疑いがかかるのを恐れる
墓地に行くと、2人の見知らぬ男が祈るフリをしている
カチャは墓石に刻まれた“ノレンス・フォレンス”という呪文のような言葉が気にかかる
フロレクに聞くと、ラテン語で“お前が欲しかろうが、欲しくなかろうが”という意味だと知る
スウェーデンの歌手が好きになった男が結婚して、船につけた名前だそう
ウエテルホルム老人もスウェーデン人だから関係があるかもしれないと推理
2人の男は、今度は堤防監視委員会の建物を見ている
あの中にも金銀のさかずきなど貴重な歴史的骨董品が無造作に置いてある
●復活祭の休み
クラスのみんなはエキストラとして映画に出演することになる
ヘルはもう一度汚い運河に落ちて、助け出される役が与えられた
ヒュースだけは、父が反対して出られないが
クレイン老人の犬にブラッシングする手伝いをしている所を撮られる
イエルチェ:兄さんは家を出たいと言って、かあさんは泣いてたわ
ヘルが拾ったくしゃくしゃのメモには兄の字で
“第三エヘランテイルスドワルス通り45号”とある
●デ・ゼーアレンド
カチャが住むデ・ゼーアレンドの家主の
ウエテルホルム老人は変わった人で骨董品を集めている
デ・ゼーアレンドの窓に墓地で見た男がいるのを見るヒュース
ヒュースはみんなが映画に出ている間、事件を1人で調べようと思う
青色の貨物自動車も怪しい
スポーツカーを持つ建築家のウイデマ氏にアムステルダムに連れていってと頼む
ウイデマ氏は使わない風車小屋を買いたかったが
持ち主のウエテルホルム老人のせいで失敗した
メモにあった“第三エヘランテイルスドワルス通り45号”は貧民窟で
お喋りが好きな奥さんたちの話から、2人の男レッケルとゼイエピットが
なにやら怪しい商売をしていると知る
レッケルには妻子がいるのに、一度、警察に捕まり
18か月も刑務所にいたことがある
撮影隊は、キャベツ工場から出る排液を撮る
以前、ここで魚釣り大会をした時、死んだ魚が数百匹浮かんだ事件を再現する
今では排液は北海に捨てられている
●堤防監視官事務所
堤防監視官事務所から骨董品が盗まれて、堤防監視官はヒュースを呼んで話を聞く
ヒュースは墓地に行き、天使とライオンの彫像が盗まれていることに気づいた
その先で盗品が入った麻袋を見つけて、市役所に届けた
茶屋にあった古い絵も盗まれた
ラムメルトの目にアザがあり、ヘルは喫茶店でケンカしたというニセの噂を流す
教会近くに住むウイデマ夫人に、事件について聞くと
幼い息子リクが青いトラックを見たと話す
●アムステルダム
ウイデマ氏に頼み、イエルチェら4人もアムステルダムへ行く
“第三エヘランテイルスドワルス通り45号”に青いトラックが来て
レッケルほか3人の男を見る
カチャはウエテルホルム老人のアトリエの片付けを手伝っていて
ヘンリ・トロスマーケル私立探偵の名刺を見つけた
住所は“第三エヘランテイルスドワルス通り45号”
●風車小屋
4人は自転車でウエテルホルム老人の風車小屋を調べに行く
ラムメルトのバイクがあり、ここで殴られたのではないか?
小屋の中からこれまで盗まれたものが次々見つかる
教会の復旧工事の半端仕事をしているラゼルマンが来て
物置小屋に隠れると、白鳥が騒いで見つかるが、小屋に入ったことは隠す
●キャンプ村
ヒュースはどの大人に話すか迷う
ウエテルホルム老人と4人の男がケンカする声が聞こえて
トラックが風車小屋に向かうのを見て
盗品をアムステルダムで売られる前に行動しなきゃと決意し
メガホンでトロスマーケルさんに電話だと叫び、キャンプ村は大騒ぎとなる
老人に風車小屋で盗品を見つけた話をする
ウエテルホルム老人:
セフレインの長男に罪はない
この町の人々は美術品に気をつかっていない
人を使ったが信用できない連中と分かった時は手におえなくなってしまっていた
老人が古物商だと思っていたのは、盗品の売買屋と教える
ヒュースはウイデマ氏に連絡すると
フロレク、ラムメルト、イエルチェ、カチャ、マンキウィッチ氏も来る
警察を呼んだことで犯人は全員捕まる
今回の件で市長は再び大きな街に移した警察をエダムに戻すと決める
ラムメルト:
あなたのような方は、もっと物事を知っていなければならないはずです
それなのに世間は、歳よりを模範とするよう、俺たちに押し付けているんです(同感
●半年後
映画『よごれた水』がエダム市内で上映され、みんなで観る
教会の鐘も戻ることで、政治家と「古いエダム友の会」が和解する
ヒュースらは今回の件での活躍を表彰される
イエルチェ:この賞状は何に使うの?(子どもの正直さにはかなわないね
フロレクは新しい勤め口の話があったが、エダムに留まることに決める
■あとがき
エダム市は、昔、オランダでもっとも繁栄した商業の町だった
フォーレンダムは漁業が寂れて、重要な観光地となった
市内には歴史的な建築物がたくさん残る
今作で注目を引くのは、世界各国で問題になっている『公害』が扱われていること
工場の流す排液、人々の捨てるゴミなど
公害で悩む今のオランダを取り上げている
オランダの国土の約1/4は海面より低く、風車を回して排水して干拓地を作った
その他、製粉、製油、製材にも用いられた
今は役割を電気によるポンプに譲り、風車はほとんど観光用
アン・ルッヘルス・ファンデル・ルフ
1910年 オランダのアムステルダム生まれ
少年少女向けの作品を多く書いている
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください
中学生の子どもとは思えない行動力と推理
兄を心配する妹と弟の関係性の微妙な違いの表現も細かい
周りを取り巻く大人たちの事情も様々
母親の深い悲しみ、新任教師の戸惑い
貧民街のお喋りな奥さんたちの快活さなど
文章には、それぞれの心の中のセリフもあり
子どもらしい言動の機微もリアルでもあり、遠回りでもある
単なる推理小説でなく、人間ドラマを描いている
舞台はオランダで、アムステルダムの都会と対象的な
古い歴史が売りの観光地に住む子どもたちの様子が描かれる
【内容抜粋メモ】
登場人物
ヒュース 運河の水門の番人の息子
イエルチェ・セフレイン 土産品店の娘
ヘル イエルチェの双子の弟 片腕が不自由
カチャ・マンキウィッチ ポーランドから越して来た 教会工事の職人の娘
ラムメルト イエルチェらの兄 18歳 スメルデの自動車車庫で働いている
ヤン・フロレク 新任教師
ウイデマ氏 建築家
ウエテルホルム老人 画家 骨董品好き
レッケルとゼイエピット
●教会の盗難事件
大教会の燭台が盗まれたことが子どもたちの話題になる
アムステルダムには盗品を買い取る連中がいるという噂
ヘルは運河に落ちて、泳げないため、新任教師フロレクが助ける
運河にゴミを平気で捨てる人も多く、汚い上、臭い
●新任教師フロレク
新しい担任がヘルを助けた青年と知り驚く
イエルチェとヘルの双子のきょうだいは同じクラス
以前、兄ラムメルトと遊んでいたヘルが事故で腕が不自由になった経緯を知る
兄が好きなイエルチェは、あれは偶然の事故だったのに
父母は兄を責め、弟を甘やかすからわがままになったと思う
警察署長も兼ねている市長が兄のことで両親と話し合ったこともある
ヒュースの父は堤防監視委員会の水門の番人で、それが自慢
●映画撮影
エダム市内で汚水に関する短編映画が撮影されることになり、小さな町が沸く
フォーレンダムは昔、漁村だったが、干拓されてからは漁業が寂れて、観光地になった
●ラムメルトの疑い
ヒュース、イエルチェ、ヘル、カチャは、いつもなにか話し合う時
スペール塔の物置小屋に集まる
スペール塔から鐘も盗まれた事件もあった
昨夜、大教会からまた献金箱が盗まれた
カチャの父マンキウィッチ氏は教会の復旧工事をしている職人で、話を聞きに行く
マンキウィッチ氏:
博物館に置くような価値のあるものを放っておいたため盗まれた
血のついたハンカチを見つけた
ラムメルトは右手に包帯を巻いていたため
イエルチェとヘルは疑いがかかるのを恐れる
墓地に行くと、2人の見知らぬ男が祈るフリをしている
カチャは墓石に刻まれた“ノレンス・フォレンス”という呪文のような言葉が気にかかる
フロレクに聞くと、ラテン語で“お前が欲しかろうが、欲しくなかろうが”という意味だと知る
スウェーデンの歌手が好きになった男が結婚して、船につけた名前だそう
ウエテルホルム老人もスウェーデン人だから関係があるかもしれないと推理
2人の男は、今度は堤防監視委員会の建物を見ている
あの中にも金銀のさかずきなど貴重な歴史的骨董品が無造作に置いてある
●復活祭の休み
クラスのみんなはエキストラとして映画に出演することになる
ヘルはもう一度汚い運河に落ちて、助け出される役が与えられた
ヒュースだけは、父が反対して出られないが
クレイン老人の犬にブラッシングする手伝いをしている所を撮られる
イエルチェ:兄さんは家を出たいと言って、かあさんは泣いてたわ
ヘルが拾ったくしゃくしゃのメモには兄の字で
“第三エヘランテイルスドワルス通り45号”とある
●デ・ゼーアレンド
カチャが住むデ・ゼーアレンドの家主の
ウエテルホルム老人は変わった人で骨董品を集めている
デ・ゼーアレンドの窓に墓地で見た男がいるのを見るヒュース
ヒュースはみんなが映画に出ている間、事件を1人で調べようと思う
青色の貨物自動車も怪しい
スポーツカーを持つ建築家のウイデマ氏にアムステルダムに連れていってと頼む
ウイデマ氏は使わない風車小屋を買いたかったが
持ち主のウエテルホルム老人のせいで失敗した
メモにあった“第三エヘランテイルスドワルス通り45号”は貧民窟で
お喋りが好きな奥さんたちの話から、2人の男レッケルとゼイエピットが
なにやら怪しい商売をしていると知る
レッケルには妻子がいるのに、一度、警察に捕まり
18か月も刑務所にいたことがある
撮影隊は、キャベツ工場から出る排液を撮る
以前、ここで魚釣り大会をした時、死んだ魚が数百匹浮かんだ事件を再現する
今では排液は北海に捨てられている
●堤防監視官事務所
堤防監視官事務所から骨董品が盗まれて、堤防監視官はヒュースを呼んで話を聞く
ヒュースは墓地に行き、天使とライオンの彫像が盗まれていることに気づいた
その先で盗品が入った麻袋を見つけて、市役所に届けた
茶屋にあった古い絵も盗まれた
ラムメルトの目にアザがあり、ヘルは喫茶店でケンカしたというニセの噂を流す
教会近くに住むウイデマ夫人に、事件について聞くと
幼い息子リクが青いトラックを見たと話す
●アムステルダム
ウイデマ氏に頼み、イエルチェら4人もアムステルダムへ行く
“第三エヘランテイルスドワルス通り45号”に青いトラックが来て
レッケルほか3人の男を見る
カチャはウエテルホルム老人のアトリエの片付けを手伝っていて
ヘンリ・トロスマーケル私立探偵の名刺を見つけた
住所は“第三エヘランテイルスドワルス通り45号”
●風車小屋
4人は自転車でウエテルホルム老人の風車小屋を調べに行く
ラムメルトのバイクがあり、ここで殴られたのではないか?
小屋の中からこれまで盗まれたものが次々見つかる
教会の復旧工事の半端仕事をしているラゼルマンが来て
物置小屋に隠れると、白鳥が騒いで見つかるが、小屋に入ったことは隠す
●キャンプ村
ヒュースはどの大人に話すか迷う
ウエテルホルム老人と4人の男がケンカする声が聞こえて
トラックが風車小屋に向かうのを見て
盗品をアムステルダムで売られる前に行動しなきゃと決意し
メガホンでトロスマーケルさんに電話だと叫び、キャンプ村は大騒ぎとなる
老人に風車小屋で盗品を見つけた話をする
ウエテルホルム老人:
セフレインの長男に罪はない
この町の人々は美術品に気をつかっていない
人を使ったが信用できない連中と分かった時は手におえなくなってしまっていた
老人が古物商だと思っていたのは、盗品の売買屋と教える
ヒュースはウイデマ氏に連絡すると
フロレク、ラムメルト、イエルチェ、カチャ、マンキウィッチ氏も来る
警察を呼んだことで犯人は全員捕まる
今回の件で市長は再び大きな街に移した警察をエダムに戻すと決める
ラムメルト:
あなたのような方は、もっと物事を知っていなければならないはずです
それなのに世間は、歳よりを模範とするよう、俺たちに押し付けているんです(同感
●半年後
映画『よごれた水』がエダム市内で上映され、みんなで観る
教会の鐘も戻ることで、政治家と「古いエダム友の会」が和解する
ヒュースらは今回の件での活躍を表彰される
イエルチェ:この賞状は何に使うの?(子どもの正直さにはかなわないね
フロレクは新しい勤め口の話があったが、エダムに留まることに決める
■あとがき
エダム市は、昔、オランダでもっとも繁栄した商業の町だった
フォーレンダムは漁業が寂れて、重要な観光地となった
市内には歴史的な建築物がたくさん残る
今作で注目を引くのは、世界各国で問題になっている『公害』が扱われていること
工場の流す排液、人々の捨てるゴミなど
公害で悩む今のオランダを取り上げている
オランダの国土の約1/4は海面より低く、風車を回して排水して干拓地を作った
その他、製粉、製油、製材にも用いられた
今は役割を電気によるポンプに譲り、風車はほとんど観光用
アン・ルッヘルス・ファンデル・ルフ
1910年 オランダのアムステルダム生まれ
少年少女向けの作品を多く書いている