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未来をささえる福祉の現場2『子どもたちとともに』(岩崎書店)
高橋利一/監修
先の戦争の戦災孤児の保護を目的として始まった児童養護施設。
その「児童福祉」のなりたち、種類、活動内容が、現場の声、写真などからよく分かる1冊。
最近、施設に来るのは、虐待を受けた子どもが多いこと、そのコたちに合った丁寧なケアが必要なことにも考えさせられた。
ナビゲーターの黒いゴールデン「訪問活動犬」くんも可愛い
「訪問活動犬」
お年寄りや、子どものための施設等を訪問して、施設の人たちとひとときを過ごす犬のこと
注意:本書は、2007年初版、2009年第2刷のため、その後変更がある部分もあるかと思いますがご了承ください。
【内容抜粋メモ】
「児童福祉」
子どもたち一人ひとりが、家族や社会の一員として、心身ともに健康でしあわせな生活がおくれるよう、
保護者とともに、国や都道府県、市町村等が行う活動のこと。
「児童福祉施設」
児童福祉活動を行う場所のこと。保育所、児童館、児童養護施設など、全部で20種類ある。
[活動例:至誠学園「レジデンスいちょう」]
子どもたちは、ここから近くの学校に通う/子どもたちの1日
「児童虐待」
施設には、親から虐待を受けたり、ネグレクト(育児放棄)が理由で、自ら施設に入りたいといってきた子どももいる。
施設内は、ふつうの家と変わらない。“お姉さん”と呼ばれる児童指導員さんがお掃除をしているところ
アトリエ。地域の子どもたちも遊びに来て、一緒に絵を描いたり、工作したりする
「カウンセリング」
臨床心理士などに悩みを相談すること。施設の子どもたちと一緒に問題解決にあたっている。
「児童相談所」
児童養護施設では、原則として、児童相談所が保護したほうがよいと考えた子どもを入所させている。
子ども本人、家族、学校の先生、警察、電話や手紙、来所などで相談を受け付けている。
相談を受けたら調査をして、一時的に保護したり、入所を決める。
児童相談所は、各都道府県、大きな市に必ず1つ以上あり、無料で相談できる。
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施設を支える人たち
「保育士」
児童福祉施設の子どもたちの心身を健康に成長するよう手助けする。
夜も子どもを預かる「夜間保育」の必要性が増している。
「児童指導員」
児童福祉施設の子どもたちの成長を助け、自立を支援する。
児童指導員は、子どもたちにとって、親、兄、姉、先生のような存在。
現在、虐待、不登校などを抱えた子どもが増えているため、ココロをより理解する能力が求められている。
「臨床心理士」
カウンセリングをする。福祉施設のほか、学校、一般企業、病院などで働く。
北米など学校カウンセラーの制度が進んでいる国では、子どもたちの個性をのばし、
進路相談にのるなど、さまざまな仕事をしている。日本にもその必要性が増している。
「理学療法士」
医師の指示のもと、お年寄りや障害者に、運動やマッサージなどのリハビリを行う。スポーツ選手のトレーニングも行う。
身近な場所で行う「地域リハビリ」が広がっている。自宅訪問も増えることが予想される。
管理栄養士さんのお話
障害によっては、水分がたくさんあるとむせたり、逆に少ないと喉を通りにくく、飲み込みにくい。
それぞれに合わせて、食事を細かく刻んだり、ミキサーにかけて流動食にしたり工夫している。
児童指導員さんのお話
学校の保護者会、授業参観にも参加します。
勤務は早番、遅番、施設に泊り込む宿直の三交代制です。
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障害のある子どものための福祉施設
重症心身障害児施設、知的障害児施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設、情緒障害児短期治療施設など
目的に応じて、様々な方法で支援している。
「障害者自立支援法」が施行されたことで、今後、見直しが行われる可能性がある。
「重症心身障害児施設」
重度の知的障害、重度の肢体不自由が重複している子どもが、親と離れて暮らす施設のこと。
満18歳を超えてもそのまま利用できる。
[活動例:「にこにこハウス療育センター」@兵庫]
同じ建物の中に病院がある/診察室では施設以外の子どもも診察を受けられる
ベッドに横になったまま、シャワーを浴びたり、浴槽につかれる/横になったままで使えるトイレ
ボールやトランポリンを使ってリハビリをする/スヌーズレン
「スヌーズレン」
光
、音楽
、香り
などの刺激を通して楽しんだり、リラックスしてもらう活動のこと。
施設の1日/制服の色でなんの仕事をする職員かが分かる
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「療育」と「リハビリ」
「療育」
医療と教育を行い、子どもたちの成長を手助けすること。
どんな障害があっても、それぞれにふさわしい成長や発達を考えた療育を行っている。
「リハビリテーション」
体に障害を持つ人が、機能を回復させるために行う訓練や治療のこと。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが行う。
「ショートステイ」
自宅で生活する重症心身障害児を、数日~1週間程度預かること。
「通園サービス」
自宅で介護している家族が外出、病気、旅行の間に利用する。
1日のスケジュール/送迎バスには車いすが5台も乗れる
「にこにこハウス」で働く人は約130人。
医師、看護師、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、保育士、管理栄養士など、さまざまな資格を持つ人がいる。
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いろいろな児童福祉施設
「知的障害児施設」
知的障害のある子どもたちが、自立して生活するために必要な知識・能力を身に付ける訓練を行う。
知能:言葉や物事を理解し、判断する能力
「知的障害児通園施設」
知的障害のある子どもたちが生活するために必要な知識・能力を身に付ける訓練をするため、自宅から通う。
「盲ろうあ児施設」
目や耳の不自由な子どもたちが、自立して生活するために必要な知識・能力の指導や手助けを行う。
「情緒障害児短期治療施設」
軽い情緒障害のある子どもを治す。
情緒障害:気持ちが不安定で、適切な行動がとれないこと。
「保育所」
両親が共働き、病気などで、昼間、面倒をみる人がいない小学校入学前の子どもを預かって保育する。
「幼稚園」は「学校教育法」に基づいてつくられた施設。体の成長、教育、集団生活に慣れさせる目的。
「児童自立支援施設」
不良行為をした子、するおそれのある子に、自立を支援する指導を行う。勉強、職業指導もする。
「母子生活支援施設」
十分に子育てできない母子家庭をいっしょに保護し、自立に向けて支援する。
「助産施設」
産科にいけない妊婦を助ける。
「乳児院」
家庭で保育を受けられない乳児(1歳未満~2歳未満)を育てる。
「児童厚生施設」
遊びを通して、子どもの心身を健康に成長させる。屋内型の児童館、屋外型の児童遊園がある。
「児童家庭支援センター」
児童福祉に関するさまざまな問題について相談を受けたり、アドバイスをする。
これらの施設はすべて
「児童福祉法」に基づいてつくられている。
「肢体不自由児施設」
[活動例:「ゆうかり学園」@福岡]
外観/みんなで楽しく遊ぶことは豊かなココロを育む
[活動例:「こどもの城」@東京]
合唱団の先生のお話
小学校1年生~大学生までが楽しく学んでいます。ダウン症の子もいます。
障害のある子と、ない子が同じ歌を一緒に歌うことで、障害のある子の素晴らしさを感じることができる、いいきっかけになっている。
児童館を通じて、子どもたちが自分の得意なことや、輝けることを見つけて、伸ばしていけるよう、歌っていきたい。
歌を手話で歌う練習中。合唱団のメンバーは、小さい時から一緒に歌っているから、障害を持つ人に対する偏見・先入観がないという
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外国の福祉のようす
イギリス、アメリカ、カナダは児童福祉が進んでいる。
子どもたち一人ひとりを支えられるように、少人数を保護する「グループホーム」や、「里親制度」を積極的に取り入れている。
国とっても、大型施設の運営より費用がかからないことも利点。
「里親制度」
保護者のいない子どもを、親がわりに育てる家庭のこと。
里親の多くは、公的機関によって子どもが成長するのにふさわしいと認められた家庭。
アメリカには民間の「里親斡旋業者」があり、中には子どもをお金と交換する「人身売買」になる場合もある。
里親になると国から養育費がもらえるため、お金目当てに里親になる家庭もあり、問題点を指摘する声もある。
「スピークアウト」
カナダでは、施設で育った人たちが、自分の生い立ちを積極的に話す運動がある。
話すことで、施設への理解を深め、社会の偏見・先入観をなくすことが目的。
施設の子どもたちは、先輩が今をイキイキと楽しむ姿を見て、
「施設で暮らすことは、ハンディキャップではない」と希望をもらっている。
日本では、施設で育ったことを人に話したがらない人が多い。正しい知識をもつ必要がある。
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開発途上国では
一般の人が自分の収入をつぎこんだり、募金を集めて施設を運営していることがほとんど。
開発途上国の貧困問題が解決されないかぎり、子どもたちが安心して暮らせる社会にはならない。
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これからの児童福祉施設
児童福祉施設のなりたち
1945年、第二次世界大戦後、親が死んだり、家が焼けて住む場所をなくした子どもがたくさんいた。
そんな子どもたちを、親の代わりに保護するために子どものための福祉施設ができた。
その後、経済的に豊かになると、障害をもつ子どもたちの施設がつくられた。
「児童福祉法」が1947年にできた
子どもたちの
「健康な生活をおくり、幸福になる権利」が保障されている。
平和な社会に戻ると、一般の子どもたちにも福祉の目が向けられた。
保育所、学童保育所、母子家庭の支援など。
都市に人が集中し、核家族化が進み、子育てに対する家庭の負担が増えた。
女性の社会進出で、子育ての時間が減り、保育所の必要性が高まっている。
少子化対策も重要な課題。
児童虐待など、難しい問題もたくさんある。
「少子化」
少子化の要因はさまざまだが、日本の社会が変わり、男女の働き方、結婚などに対する価値観が変化したことなどが挙げられる。
年金、医療、介護などの社会保障費を、少ない人数で支えなければならないため、国民一人ひとりの負担が増加することが懸念される。
子どもたちの夢を応援するために
これからはハンディキャップのある子も、ない子も、同じように、自分の可能性を広げ、
健康でイキイキと社会で生活していけるよう支援することを目標にしている。
「グループホーム」「里親制度」をすすめている。
「グループホーム」
戦後の児童養護施設は、定員の多い大規模な施設で集団生活をおくることがほとんどだった。
最近は、子どもたちをより家庭的な雰囲気で保護できる、定員6名程度の小規模な施設が増えている。
一人ひとりにきめ細かい対応が必要とされ、目がいきとどくグループホームが求められている。
都内の児童相談所
「東京都児童相談センター」:03-3208-1121