■『精神分析が面白いほどわかる本 人間のアブナイ本能が見えてくる 絵解き入門書』(河出書房新社)
心の謎を探る会/編
昔から心理学が好きで、短大時代にも心理学のゼミを受講したり、一時期は関連本を読み漁ってたりしていた
最近また、カウンセリングつながりで改めて、ヒトの深層心理、無意識の言動について興味が湧いてきて、
図書館で目に付いたこんな本を借りてみた。
イラストも多くて、ともすれば難しい、敷居が高そうなこの分野も、身近な例を挙げて面白く書いてある。
あくまでフロイト、ユングを中心に話が進められているけれども、後半にはちょこっと最新の「機能不全家族」などの単語も出てきて、
最近読んだ『わたしの家族はどこかへん?機能不全家族で育つ・暮らす』などにもつながってきて興味深い。
偉大なフロイト、ユングが根底にありつつも、こころの研究も日進月歩であり、また、時代によって大きく変化し続けている現状もある。
いったん原点の基本にかえりつつ、現代と照らし合わせてみるのもおもしろいと思った。
【内容メモ】
恒例になってきたこの長さ/謝
本来ならこれまではノートに記録魔していたことを、ここに書いているのでどうしても長くなってしまう。
なにせ、ペンで書くより、データ入力のほうが速いし、まとめやすいんだよね。
興味ある方はどうぞお付き合いくださいませ/礼
■第1章 無意識って何だろう?
「無意識」の発見
無意識は、意識が無いことではなく「無意識という意識」。
発見したのは、「精神分析の父」と言われるフロイトで催眠術の研究中
ベルネームという催眠研究者の研究がきっかけ。
フロイトのアプローチ法は長椅子を使う「自由連想法」。
近年は「退行催眠」がメジャー。患者は催眠で心の原点に退行することによって原因不明の悩みや不安の原点に行き着く。
うつ病や分裂症患者は、その原因があまりに恥ずかしかったり、他愛ないことだと、本人が認めず埋めてしまう。
催眠療法は無意識に埋められた理由を本人が認識することで、原因不明という最大の不安を取り除くことにある。
無意識には不安の原因が隠されていることが多い。
「無意識の世界」にこそ神経症の原因があると言った。
「無意識」→「前意識」→「意識」
「意識」自分で意識している部分
「前意識」忘れているが意識すれば意識の世界に上がってくる部分
「無意識」自分では意識できない、自分の知らない部分
例:女性が口を隠しながら話す(指摘されて気づく行動)←小さい頃に父から前歯が大きいことを笑われた(無意識)
「無意識」は、意識の連続で脳がつかれきってしまわないための采配とも言われる。真の「無意識」は、決して意識できない。
“自分では気づかない”“自力では自由にできない”無意識が、ヒトの行動を規定することも多々ある。
嫌な感情は心の奥にしまう「抑圧」
例:中国の怪談集『聊斎志異』では、官僚の夫人が夫の浮気を知りつつ、知らぬふりをしている。
夫は浮気中に黒蛇が現れることに悩む。そのあとを尾けると妻の口の中へと入っていったという。
妻は自分の嫉妬を「低級でみっともない感情」として無意識の世界に追いやってしまった=「抑圧」
「抑圧」は、怒り、嫉妬、悲しみ、恐怖などの激しい感情を無意識に閉じ込めること。
社会人として体裁を整えたい、大人としてまともでありたいという願望から起こる。
どんな形であらわれるかは、抑える側と、押さえられる側の力関係で変わる。
抑圧された感情は姿を変えて表面にあらわれる。
無意識がヒトを失敗させる「錯誤行為」
言い間違い、聞き違い、失念、おき忘れ、寝過ごし、紛失など、日常の失敗を疲労や不注意のせいと思っているが、
本人の意志に反して、無意識がオモテにあらわれた結果であり、ヒトの失敗には“無意識の意志”が働いている=「錯誤行為」
(フロイト『日常生活の精神病理』より)
錯誤行為の1段階:なぜ失敗したか本人にも思い当たる(浮気女の結婚式で「お悔やみ申し上げます」とスピーチする
錯誤行為の2段階:なぜ失敗したか思い当たらない(胸の大きな宗方という女性の名前を「胸方」と書き間違える
錯誤行為の3段階:指摘されても本人は認めない(妻と別れたいと思ってる男がクラブの名刺をキッチンに置き忘れる など
「超自我」→「自我」→「原我」
「超自我」高次元の理想を自分に課す「エライ人」「やさしい人」
「自我」超自我と原我で板ばさみ状態
「原我」欲しいものは欲しいという原始的欲望(原我は抑えられるほどパワーアップ
援助交際などノンルール(ルール無視)の原始的欲望は、「原我(エス)」という心理層から発している。
超自我が強いヒトほど、そのストレスの反動でエスを揺り起こす。
例:SF映画『禁断の惑星』のイトというモンスターと厳格な科学者
自我とは?
日本には幼児は一人の人間ではなく、七つを迎えるまでに通過儀式を経て一人の人間に仕立て上げるという考えがあった。
自我=自己であるという強い認識「これが私だ」。自己を一個のヒトとして確立するため、言動をコントロールするシステムのこと。
1.現実機能:ありのままの自分を把握する
2.適応機能:自分の行動を、能力・目標などと照らし合わせて選択する
(例:理不尽な上司に反発するか否か。これが壊れると暴力をふるったり、引きこもったり、極端へと走りがちになる
3.防衛機能:理想主義を適度に押さえ、心の安定を保つ。
4.統合機能:1つのまとまりある人格をつくる。矛盾した部分も含まれる。
「自我」は、現実社会の営みに大きく関わり、「超自我」と「原我」に挟まれて揺れ続けている。
良心とは
ヒトは「原我」➡「自我」➡「超自我」の順で育っていく。
親に叱られた子どもは、親に見捨てられてしまうのでは?という不安・恐怖を抱く→自分で行動を監視・規制する→良心の芽生え
子どもは親の言動の背後にある「超自我」を見つめて育つ。
例:お受験ママは、世間に対する見栄を子どもに見抜かれている。また、厳しいしつけが家庭内暴力となって跳ね返る。
集合的無意識
ネコが教えられないのに手で顔を洗うのと同様、ヒトも個体群の一部だと唱えたのがユング。
自我に対する「個我」という概念を生んだ。
例:女神や菩薩は母性を象徴する。トランス状態から生まれるマンダラなど
人間共通の無意識を「集合的無意識」と呼んだ。遺伝的に生まれながらに持っている。
個人→家族→部族→民族→人類という心理層があり、もっとも深い「深層心理」には人類の歴史が関わっている。
デカルトが「我思う、ゆえに我あり」と言った個人崇拝が17世紀ヨーロッパでは主流だった。
東洋では、自我は幻想で、自己を捨て去ったところに真の存在があるという哲学。
■第2章 人が悩む本当の理由は?
コンプレックス
一般的に使われる「劣等感」の意味とは違う。抑圧されて意識されないまま強い感情を担っている表象の複合体←「広辞苑」
ユングは「言語連想法」により、100ある単語の中で口ごもってしまう現象に気づく➡不快・反感を抱いている=ウソ発見器にも応用/驚
わたしもやってみたら、すぐ連想を思い浮かばなかったのは以下の言葉。
踊る、同情、軽蔑する、家族、牝牛、偽りの、選ぶ
ペルソナ
素顔を隠す「よそいきの顔の仮面」。自分の役割を明確にすることで、社会生活における対人関係を適度な距離に保つための処世術。
その一線の引き方には、他人を侵害しないことによって自分を守る目的も含まれる。自我を守る鎧。
問題は『鉄仮面』のように、仮面が取れなくなってしまうこと。
体裁や自己防衛のための仮面が、自分そのものになり、かえって自己喪失を招くケース。
自分の影におびえる「シャドウ」
例:「あいつはオレの足を引っ張ろうとしている」
これは、出世ばかり考えている自分の「影の人格」を他人に投影し、自身の影に怯えている状態。
コンプレックスに近い。
「コンプレックス」は他から受けた傷の隠蔽だが、「シャドウ」は自身の中にある悪や歪みの隠蔽から生まれる
「グレートマザー」「マザコン」
「マザコン」の2つのイメージ
1.いつまでも母親を慕うヒト
2.いつまでも母親を怖がるヒト
例:シンデレラを虐待する継母、白雪姫を呪う女王など
ユングは、優しく豊かな姿であるが、怖ろしい怪物の姿でもある「グレートマザー」を唱えた。
「元型(アーキタイプ)」は、「集合的無意識」から生まれるシンボルで、「グレートマザー」もその1つ。
マザコンは男性が陥ると思われているが、極度のマザコンは、むしろ女性に多い。
娘にとって母親は同性であるがゆえに「同化」が起こる。
“子どもを自分だけのものにする”という負の一面がある。
“母から逃れられない””母を恐怖する”という影を落とし、成長した子どもに歪んだ行動をとらせることもある。
「オールド・ワイズ・マン」
知・力・神秘を備えた大いなる隠者の姿をとる。
ユングの父は理想とは程遠く、絶えず父と反発し、論争を挑みながら成長した
父を超えたいという願望は、権力・成功への激しい執着を意味する。
それを乗り越え、自分の中の「オールド・ワイズ・マン」を意識できた時こそ自己の完成がある。
女性の場合は、まず“理想の父親像”が浮かぶ。それにふさわしい伴侶を導き出す形で、実母を超えた「グレートマザー」の像が浮かぶ。
「あなたのパパはダメなヒト」と言って子どもを味方につけようとする母親は、
「ダメな男を選んだダメな女」という自分の悪いイメージを子ども植えつけていることに気づかない
なぜ失敗を繰り返すのか「トリックスター」
「トリックスター」=日本で言えば化け狸、河童、天狗などの妖怪のこと。イタズラの名人。
「トリックスター」は社会の秩序をぶち壊す迷惑な侵入者。逆に、退屈な沈滞状態に混乱を巻き起こして、社会を活性化させる存在
失敗があってこそガス抜きができ、活気があり、笑いもある。ヒトをショック療法で癒しているとも言える。
失敗の連続で平和と明るさを提供する『サザエさん』一家は「トリックスター」の集団といえるw
自分とは何か?「アイデンティティ」
精神分析上では、カードや証明書ではなく、あくまでも自分の内的な実感による証明。心理学者E.エリクソンによって確立。
幼児期(2~3歳)でアイデンティティの基礎を築き上げる。
「自分が誰か」→「どうゆう者か」を定義した時に確立。
その作業は青年期に課せられる。なぜなら、「どう生き延びていくか」を意味するから。
サッカーやバイクが好きでも、それでは食えない➡作り上げたと思い込んでいた「自己」を処分することを強いられる。
アイデンティティ確立の失敗で「同一性の危機」が起こる。➡非行の原因
未来に対する自身のイメージを失い、「何者でもない」よりは「害があるヒト」のほうがマシと考える。
夢の世界「エロスとタナトス」
フロイトによると、睡眠の無意識状態で、深層心理の怖ろしい記憶やイメージが表出するのに修正を加え、
安眠を妨害しない程度に危険度をやわらげる、というのが夢の前期の理論だった。
その後「心理には快感の一方で不快を求める傾向もある」と考え『快感原則の彼岸』を書いた。
「エロス」愛の神。あらゆるものを結合させ、混沌の中に秩序をもたらす。
「タナトス」死の神。あらゆる秩序を破壊し混沌に戻す。
エロスとタナトスは表裏一体の関係で心理に備わると定義し直した。
むしろ健全なヒトほど、死と破壊の願望を秘めていることがある。
フランスの作家アナトール・フランスは「自殺は一種の生への情熱である」と言った。
うつ患者も極度に悪化している時は自殺欲求は起こらない。
「内向的」って暗いこと?
もとはユングの性格類型。暗い・明るいというのとは違う心理学用語。→参考
1.内向思考型
2.内向感情型
3.内向感覚型
4.内向直感型
5.外交思考型
6.外交感情型
7.外交感覚型
8.外交直感型
暗い・明るいはオモテ(意識)に表れた行動様式で、本質(無意識)とは違う。
例:太宰治は表向きは外交的だが、じつは危険なほど感受性豊かで繊細な人間だった。
オモテの型は、内面の傾向に引きずられないための調整・抵抗の場合が多い。ヒトは外面だけで判断できない。
「甘え」の構造
土居健郎『「甘え」の構造』は欧米でも大ベストセラーとなった
欧米人の「自立」と日本人の「甘え」との相対論。
欧米では30歳過ぎても親元にいる“パラサイト・シングル”は一種の病人とみなされる。
動物学的には、モンゴロイド(黄色人種)の脳は、「甘え」によって育まれる構造。
「ネオテニー」(幼児化戦略、幼形成熟)=脳を柔軟に保つことで、より多くの情報を取り入れる進化戦略/驚
日本人は親と1つの部屋で川の字で寝るのも、親の教育・監視・庇護を必要とするモンゴロイドの道理にかなっていた。
現代は個室を与え、厳しいしつけを「放任」に変えている。「擬似自立」をうながす一方、何でも買い与える「甘え」を残す。
庇護して教育する「甘え」が、ただの「甘え」になってしまっている。今では“amae”という心理学用語にもなっている。
■第3章 欲求不満を開放!
自我防衛機制(八つ当たりなど)
「自分の心の防衛」こそが無意識の最大の役割。精神の崩壊を防ぐための転換・隠蔽。
ヒトの精神は無意識の防衛なしには、ガラスのようにモロいものなのだ
極度の恐怖には精神が完全崩壊しないよう回路遮断システムが働く=自我防衛機制
ヒトはみな「欲求不満」を抱いている。
例:社長は業績を上げられない不満、理想の女性と結婚した男性は、妻や母となった彼女に不満を抱くなど
ヒトの欲望には際限がなく、すべて思い通りにいくことはあり得ない。
ヒステリーは「頭がどうかしてしまった」状態ではなく、逆に「頭がどうかしてしまわない」ために八つ当たりをしている。
自我防衛機制には14種類ある。
1.抑圧
イヤなことにはフタをする➡欲求は潜在意識に残り続ける
2.逃避
とにかく逃げる。例:都合性腹痛炎など
3.退行
幼児にもどる。例:ぬいぐるみに話しかける➡責任・体裁・重圧で精神を擦り切れさせないため
4.置き換え
弱い者いじめ、動物虐待など、非力な対象に憎しみを向けて、欲求不満の一部を解消する
ヒトには「対象が特定された憎しみ」と、「欲求不満による社会全体への憎しみ」がある。
5.昇華
満たされない「破壊衝動」を、生産的なエネルギーに転換する
例:破壊衝動の強いヒトは、機動隊や消防士など危険で活動的な仕事を選ぶことが多い。
6.反動形成
本音に反して、建前を演じることに似ているが無意識に行われる点が大きく違う。
無意識の憎しみ・劣等感に気づかず、正反対の愛・傲慢を表現し続ける。
例:「私は豊満な自分の体が嫌い」→体を武器にしている自分がいる
7.補償
劣等感を補う強い欲求に衝き動かされること。
精神分析学者アドラーが発見。目にハンデを持つ患者ほど猛烈な読書欲を持つ「器官劣等性」を唱えた。
例:格闘技の一流選手には、元いじめられっ子が多い。背が低いナポレオン、虚弱体質だった三島由紀夫など
8.男性的抗議
バリキャリ女性社員は、男性より“男らしい”ふるまいをする。
男性社会に遅れて入ってきたハンデを克服しようと躍起になっている状態。
例:組織論をぶつ、部下に威張る、ガンガン残業する、根回しに奔走する、上司にとりいるなど
パロディのコツは、特徴を極端に強調すること
9.取り入れ
憧れの人のマネをする➡満ち足りない自分を埋めようとする自我防衛。強烈な嫉妬・劣等感が働いている。
10.同一化
原動力は「愛」。対象への「愛」と「自己愛」の境が消えてしまうほどの一体化。
例:飼い猫が死んで、「ぼくは猫になった」という子ども
逆に「自己愛」を対象に投影する「同一化」もある=「惚れ込み」
「惚れ込み」=相手が自分と同じ理想を持っていると信じて疑わない。やたら相手を励まし賛美し、自身の理想を実現させる身代わりにする。
11.投射
もともと自分が対象に持っている敵意を、鏡のように相手に「投射」する。
例:「どうして彼女は私を嫌うのかしら?」←自分が彼女に向ける敵意の裏返し
「被害者ヅラ」は女性に多い。「夫は自分をぞんざいに扱う」←自分が夫をぞんざいに扱っているのを棚に上げている
12.合理化
例:リストラされた男性が「これで会社の歯車から解放された」と言う。
“プラス思考”と間違われやすい。怖ろしい現実から目をそむけ、自身をあざむくための思考。
俗に言う「やせ我慢」「負け惜しみ」。心理的ダメージを防ぐ有益な心理メカニズム。
13.打ち消し
例:描きかけの絵を切り裂く芸術家
物事がうまくいかなくなると、あともう一歩の頑張りでなんとかなる段階でもすべてを無に戻し、“リセット”してやり直す。
背景には、欲求不満を解消しようとする防衛機制が働いている。
「ゼロからの再スタート」がヒトを妙に救われた気分にさせる。
14.隔離
「見て見ぬふり」「知って知らぬふり」ではなく、意識の上で「見なかった」「知らなかった」ことに転換されてしまう。
例:夫の浮気現場を見て、その場を離れる。
関係を壊したければ「見た」ことにし、壊したくなければ「見なかった」ことにする。これは女性の恋愛の極意?
心の謎を探る会/編
昔から心理学が好きで、短大時代にも心理学のゼミを受講したり、一時期は関連本を読み漁ってたりしていた
最近また、カウンセリングつながりで改めて、ヒトの深層心理、無意識の言動について興味が湧いてきて、
図書館で目に付いたこんな本を借りてみた。
イラストも多くて、ともすれば難しい、敷居が高そうなこの分野も、身近な例を挙げて面白く書いてある。
あくまでフロイト、ユングを中心に話が進められているけれども、後半にはちょこっと最新の「機能不全家族」などの単語も出てきて、
最近読んだ『わたしの家族はどこかへん?機能不全家族で育つ・暮らす』などにもつながってきて興味深い。
偉大なフロイト、ユングが根底にありつつも、こころの研究も日進月歩であり、また、時代によって大きく変化し続けている現状もある。
いったん原点の基本にかえりつつ、現代と照らし合わせてみるのもおもしろいと思った。
【内容メモ】
恒例になってきたこの長さ/謝
本来ならこれまではノートに記録魔していたことを、ここに書いているのでどうしても長くなってしまう。
なにせ、ペンで書くより、データ入力のほうが速いし、まとめやすいんだよね。
興味ある方はどうぞお付き合いくださいませ/礼
■第1章 無意識って何だろう?
「無意識」の発見
無意識は、意識が無いことではなく「無意識という意識」。
発見したのは、「精神分析の父」と言われるフロイトで催眠術の研究中
ベルネームという催眠研究者の研究がきっかけ。
フロイトのアプローチ法は長椅子を使う「自由連想法」。
近年は「退行催眠」がメジャー。患者は催眠で心の原点に退行することによって原因不明の悩みや不安の原点に行き着く。
うつ病や分裂症患者は、その原因があまりに恥ずかしかったり、他愛ないことだと、本人が認めず埋めてしまう。
催眠療法は無意識に埋められた理由を本人が認識することで、原因不明という最大の不安を取り除くことにある。
無意識には不安の原因が隠されていることが多い。
「無意識の世界」にこそ神経症の原因があると言った。
「無意識」→「前意識」→「意識」
「意識」自分で意識している部分
「前意識」忘れているが意識すれば意識の世界に上がってくる部分
「無意識」自分では意識できない、自分の知らない部分
例:女性が口を隠しながら話す(指摘されて気づく行動)←小さい頃に父から前歯が大きいことを笑われた(無意識)
「無意識」は、意識の連続で脳がつかれきってしまわないための采配とも言われる。真の「無意識」は、決して意識できない。
“自分では気づかない”“自力では自由にできない”無意識が、ヒトの行動を規定することも多々ある。
嫌な感情は心の奥にしまう「抑圧」
例:中国の怪談集『聊斎志異』では、官僚の夫人が夫の浮気を知りつつ、知らぬふりをしている。
夫は浮気中に黒蛇が現れることに悩む。そのあとを尾けると妻の口の中へと入っていったという。
妻は自分の嫉妬を「低級でみっともない感情」として無意識の世界に追いやってしまった=「抑圧」
「抑圧」は、怒り、嫉妬、悲しみ、恐怖などの激しい感情を無意識に閉じ込めること。
社会人として体裁を整えたい、大人としてまともでありたいという願望から起こる。
どんな形であらわれるかは、抑える側と、押さえられる側の力関係で変わる。
抑圧された感情は姿を変えて表面にあらわれる。
無意識がヒトを失敗させる「錯誤行為」
言い間違い、聞き違い、失念、おき忘れ、寝過ごし、紛失など、日常の失敗を疲労や不注意のせいと思っているが、
本人の意志に反して、無意識がオモテにあらわれた結果であり、ヒトの失敗には“無意識の意志”が働いている=「錯誤行為」
(フロイト『日常生活の精神病理』より)
錯誤行為の1段階:なぜ失敗したか本人にも思い当たる(浮気女の結婚式で「お悔やみ申し上げます」とスピーチする
錯誤行為の2段階:なぜ失敗したか思い当たらない(胸の大きな宗方という女性の名前を「胸方」と書き間違える
錯誤行為の3段階:指摘されても本人は認めない(妻と別れたいと思ってる男がクラブの名刺をキッチンに置き忘れる など
「超自我」→「自我」→「原我」
「超自我」高次元の理想を自分に課す「エライ人」「やさしい人」
「自我」超自我と原我で板ばさみ状態
「原我」欲しいものは欲しいという原始的欲望(原我は抑えられるほどパワーアップ
援助交際などノンルール(ルール無視)の原始的欲望は、「原我(エス)」という心理層から発している。
超自我が強いヒトほど、そのストレスの反動でエスを揺り起こす。
例:SF映画『禁断の惑星』のイトというモンスターと厳格な科学者
自我とは?
日本には幼児は一人の人間ではなく、七つを迎えるまでに通過儀式を経て一人の人間に仕立て上げるという考えがあった。
自我=自己であるという強い認識「これが私だ」。自己を一個のヒトとして確立するため、言動をコントロールするシステムのこと。
1.現実機能:ありのままの自分を把握する
2.適応機能:自分の行動を、能力・目標などと照らし合わせて選択する
(例:理不尽な上司に反発するか否か。これが壊れると暴力をふるったり、引きこもったり、極端へと走りがちになる
3.防衛機能:理想主義を適度に押さえ、心の安定を保つ。
4.統合機能:1つのまとまりある人格をつくる。矛盾した部分も含まれる。
「自我」は、現実社会の営みに大きく関わり、「超自我」と「原我」に挟まれて揺れ続けている。
良心とは
ヒトは「原我」➡「自我」➡「超自我」の順で育っていく。
親に叱られた子どもは、親に見捨てられてしまうのでは?という不安・恐怖を抱く→自分で行動を監視・規制する→良心の芽生え
子どもは親の言動の背後にある「超自我」を見つめて育つ。
例:お受験ママは、世間に対する見栄を子どもに見抜かれている。また、厳しいしつけが家庭内暴力となって跳ね返る。
集合的無意識
ネコが教えられないのに手で顔を洗うのと同様、ヒトも個体群の一部だと唱えたのがユング。
自我に対する「個我」という概念を生んだ。
例:女神や菩薩は母性を象徴する。トランス状態から生まれるマンダラなど
人間共通の無意識を「集合的無意識」と呼んだ。遺伝的に生まれながらに持っている。
個人→家族→部族→民族→人類という心理層があり、もっとも深い「深層心理」には人類の歴史が関わっている。
デカルトが「我思う、ゆえに我あり」と言った個人崇拝が17世紀ヨーロッパでは主流だった。
東洋では、自我は幻想で、自己を捨て去ったところに真の存在があるという哲学。
■第2章 人が悩む本当の理由は?
コンプレックス
一般的に使われる「劣等感」の意味とは違う。抑圧されて意識されないまま強い感情を担っている表象の複合体←「広辞苑」
ユングは「言語連想法」により、100ある単語の中で口ごもってしまう現象に気づく➡不快・反感を抱いている=ウソ発見器にも応用/驚
わたしもやってみたら、すぐ連想を思い浮かばなかったのは以下の言葉。
踊る、同情、軽蔑する、家族、牝牛、偽りの、選ぶ
ペルソナ
素顔を隠す「よそいきの顔の仮面」。自分の役割を明確にすることで、社会生活における対人関係を適度な距離に保つための処世術。
その一線の引き方には、他人を侵害しないことによって自分を守る目的も含まれる。自我を守る鎧。
問題は『鉄仮面』のように、仮面が取れなくなってしまうこと。
体裁や自己防衛のための仮面が、自分そのものになり、かえって自己喪失を招くケース。
自分の影におびえる「シャドウ」
例:「あいつはオレの足を引っ張ろうとしている」
これは、出世ばかり考えている自分の「影の人格」を他人に投影し、自身の影に怯えている状態。
コンプレックスに近い。
「コンプレックス」は他から受けた傷の隠蔽だが、「シャドウ」は自身の中にある悪や歪みの隠蔽から生まれる
「グレートマザー」「マザコン」
「マザコン」の2つのイメージ
1.いつまでも母親を慕うヒト
2.いつまでも母親を怖がるヒト
例:シンデレラを虐待する継母、白雪姫を呪う女王など
ユングは、優しく豊かな姿であるが、怖ろしい怪物の姿でもある「グレートマザー」を唱えた。
「元型(アーキタイプ)」は、「集合的無意識」から生まれるシンボルで、「グレートマザー」もその1つ。
マザコンは男性が陥ると思われているが、極度のマザコンは、むしろ女性に多い。
娘にとって母親は同性であるがゆえに「同化」が起こる。
“子どもを自分だけのものにする”という負の一面がある。
“母から逃れられない””母を恐怖する”という影を落とし、成長した子どもに歪んだ行動をとらせることもある。
「オールド・ワイズ・マン」
知・力・神秘を備えた大いなる隠者の姿をとる。
ユングの父は理想とは程遠く、絶えず父と反発し、論争を挑みながら成長した
父を超えたいという願望は、権力・成功への激しい執着を意味する。
それを乗り越え、自分の中の「オールド・ワイズ・マン」を意識できた時こそ自己の完成がある。
女性の場合は、まず“理想の父親像”が浮かぶ。それにふさわしい伴侶を導き出す形で、実母を超えた「グレートマザー」の像が浮かぶ。
「あなたのパパはダメなヒト」と言って子どもを味方につけようとする母親は、
「ダメな男を選んだダメな女」という自分の悪いイメージを子ども植えつけていることに気づかない
なぜ失敗を繰り返すのか「トリックスター」
「トリックスター」=日本で言えば化け狸、河童、天狗などの妖怪のこと。イタズラの名人。
「トリックスター」は社会の秩序をぶち壊す迷惑な侵入者。逆に、退屈な沈滞状態に混乱を巻き起こして、社会を活性化させる存在
失敗があってこそガス抜きができ、活気があり、笑いもある。ヒトをショック療法で癒しているとも言える。
失敗の連続で平和と明るさを提供する『サザエさん』一家は「トリックスター」の集団といえるw
自分とは何か?「アイデンティティ」
精神分析上では、カードや証明書ではなく、あくまでも自分の内的な実感による証明。心理学者E.エリクソンによって確立。
幼児期(2~3歳)でアイデンティティの基礎を築き上げる。
「自分が誰か」→「どうゆう者か」を定義した時に確立。
その作業は青年期に課せられる。なぜなら、「どう生き延びていくか」を意味するから。
サッカーやバイクが好きでも、それでは食えない➡作り上げたと思い込んでいた「自己」を処分することを強いられる。
アイデンティティ確立の失敗で「同一性の危機」が起こる。➡非行の原因
未来に対する自身のイメージを失い、「何者でもない」よりは「害があるヒト」のほうがマシと考える。
夢の世界「エロスとタナトス」
フロイトによると、睡眠の無意識状態で、深層心理の怖ろしい記憶やイメージが表出するのに修正を加え、
安眠を妨害しない程度に危険度をやわらげる、というのが夢の前期の理論だった。
その後「心理には快感の一方で不快を求める傾向もある」と考え『快感原則の彼岸』を書いた。
「エロス」愛の神。あらゆるものを結合させ、混沌の中に秩序をもたらす。
「タナトス」死の神。あらゆる秩序を破壊し混沌に戻す。
エロスとタナトスは表裏一体の関係で心理に備わると定義し直した。
むしろ健全なヒトほど、死と破壊の願望を秘めていることがある。
フランスの作家アナトール・フランスは「自殺は一種の生への情熱である」と言った。
うつ患者も極度に悪化している時は自殺欲求は起こらない。
「内向的」って暗いこと?
もとはユングの性格類型。暗い・明るいというのとは違う心理学用語。→参考
1.内向思考型
2.内向感情型
3.内向感覚型
4.内向直感型
5.外交思考型
6.外交感情型
7.外交感覚型
8.外交直感型
暗い・明るいはオモテ(意識)に表れた行動様式で、本質(無意識)とは違う。
例:太宰治は表向きは外交的だが、じつは危険なほど感受性豊かで繊細な人間だった。
オモテの型は、内面の傾向に引きずられないための調整・抵抗の場合が多い。ヒトは外面だけで判断できない。
「甘え」の構造
土居健郎『「甘え」の構造』は欧米でも大ベストセラーとなった
欧米人の「自立」と日本人の「甘え」との相対論。
欧米では30歳過ぎても親元にいる“パラサイト・シングル”は一種の病人とみなされる。
動物学的には、モンゴロイド(黄色人種)の脳は、「甘え」によって育まれる構造。
「ネオテニー」(幼児化戦略、幼形成熟)=脳を柔軟に保つことで、より多くの情報を取り入れる進化戦略/驚
日本人は親と1つの部屋で川の字で寝るのも、親の教育・監視・庇護を必要とするモンゴロイドの道理にかなっていた。
現代は個室を与え、厳しいしつけを「放任」に変えている。「擬似自立」をうながす一方、何でも買い与える「甘え」を残す。
庇護して教育する「甘え」が、ただの「甘え」になってしまっている。今では“amae”という心理学用語にもなっている。
■第3章 欲求不満を開放!
自我防衛機制(八つ当たりなど)
「自分の心の防衛」こそが無意識の最大の役割。精神の崩壊を防ぐための転換・隠蔽。
ヒトの精神は無意識の防衛なしには、ガラスのようにモロいものなのだ
極度の恐怖には精神が完全崩壊しないよう回路遮断システムが働く=自我防衛機制
ヒトはみな「欲求不満」を抱いている。
例:社長は業績を上げられない不満、理想の女性と結婚した男性は、妻や母となった彼女に不満を抱くなど
ヒトの欲望には際限がなく、すべて思い通りにいくことはあり得ない。
ヒステリーは「頭がどうかしてしまった」状態ではなく、逆に「頭がどうかしてしまわない」ために八つ当たりをしている。
自我防衛機制には14種類ある。
1.抑圧
イヤなことにはフタをする➡欲求は潜在意識に残り続ける
2.逃避
とにかく逃げる。例:都合性腹痛炎など
3.退行
幼児にもどる。例:ぬいぐるみに話しかける➡責任・体裁・重圧で精神を擦り切れさせないため
4.置き換え
弱い者いじめ、動物虐待など、非力な対象に憎しみを向けて、欲求不満の一部を解消する
ヒトには「対象が特定された憎しみ」と、「欲求不満による社会全体への憎しみ」がある。
5.昇華
満たされない「破壊衝動」を、生産的なエネルギーに転換する
例:破壊衝動の強いヒトは、機動隊や消防士など危険で活動的な仕事を選ぶことが多い。
6.反動形成
本音に反して、建前を演じることに似ているが無意識に行われる点が大きく違う。
無意識の憎しみ・劣等感に気づかず、正反対の愛・傲慢を表現し続ける。
例:「私は豊満な自分の体が嫌い」→体を武器にしている自分がいる
7.補償
劣等感を補う強い欲求に衝き動かされること。
精神分析学者アドラーが発見。目にハンデを持つ患者ほど猛烈な読書欲を持つ「器官劣等性」を唱えた。
例:格闘技の一流選手には、元いじめられっ子が多い。背が低いナポレオン、虚弱体質だった三島由紀夫など
8.男性的抗議
バリキャリ女性社員は、男性より“男らしい”ふるまいをする。
男性社会に遅れて入ってきたハンデを克服しようと躍起になっている状態。
例:組織論をぶつ、部下に威張る、ガンガン残業する、根回しに奔走する、上司にとりいるなど
パロディのコツは、特徴を極端に強調すること
9.取り入れ
憧れの人のマネをする➡満ち足りない自分を埋めようとする自我防衛。強烈な嫉妬・劣等感が働いている。
10.同一化
原動力は「愛」。対象への「愛」と「自己愛」の境が消えてしまうほどの一体化。
例:飼い猫が死んで、「ぼくは猫になった」という子ども
逆に「自己愛」を対象に投影する「同一化」もある=「惚れ込み」
「惚れ込み」=相手が自分と同じ理想を持っていると信じて疑わない。やたら相手を励まし賛美し、自身の理想を実現させる身代わりにする。
11.投射
もともと自分が対象に持っている敵意を、鏡のように相手に「投射」する。
例:「どうして彼女は私を嫌うのかしら?」←自分が彼女に向ける敵意の裏返し
「被害者ヅラ」は女性に多い。「夫は自分をぞんざいに扱う」←自分が夫をぞんざいに扱っているのを棚に上げている
12.合理化
例:リストラされた男性が「これで会社の歯車から解放された」と言う。
“プラス思考”と間違われやすい。怖ろしい現実から目をそむけ、自身をあざむくための思考。
俗に言う「やせ我慢」「負け惜しみ」。心理的ダメージを防ぐ有益な心理メカニズム。
13.打ち消し
例:描きかけの絵を切り裂く芸術家
物事がうまくいかなくなると、あともう一歩の頑張りでなんとかなる段階でもすべてを無に戻し、“リセット”してやり直す。
背景には、欲求不満を解消しようとする防衛機制が働いている。
「ゼロからの再スタート」がヒトを妙に救われた気分にさせる。
14.隔離
「見て見ぬふり」「知って知らぬふり」ではなく、意識の上で「見なかった」「知らなかった」ことに転換されてしまう。
例:夫の浮気現場を見て、その場を離れる。
関係を壊したければ「見た」ことにし、壊したくなければ「見なかった」ことにする。これは女性の恋愛の極意?