メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

ビロードのへやの秘密 Best choice ジルファ・キートリー・スナイダー/作 福武書店

2025-01-22 14:03:21 | 
1989年初版 小比賀優子/訳 中村悦子/挿画

ジルファ・キートリー・スナイダー
1948年アメリカ生まれ
大卒後、小学校の教師として働き、その後、児童文学を書いて数々の賞を受賞


近くの図書館で見つけた まだまだ漁れば良作があるなあ!
親の都合で各地を転々としている子どもの不安定な心情と
ビロードの部屋で消えた少女のミステリーが重なり
最後のハラハラな展開まで一気読み

やはり作者の実体験がともなった作品はリアル
少女が安定した生活を望み、苦しい現実から逃避したくなるのも当然と思うけれども
良書の中の大人は時にグサリと刺さる言葉を言う
現実にはそんなに親身になって、真実を告げてくれる人はなかなかいないよなあ


【内容抜粋メモ】

登場人物
父 ポール・ウィリアムス
母 ヘレン いつでも前向きで明るい
長男 ルディ 15歳 機械に詳しい
長女 セダ 14歳 オシャレが好き
次女 ロビン 12歳 ふらふら歩きが好き
次男 キャリー 8歳 読書が好き
末子 シャーリー 4歳 泣いてばかりいる

マッカーディ夫妻 農場主
グエン 一人娘 12歳

クライリー 農場の支配人
息子フレッド

ブリジット パルメラス屋敷近くの小屋に住む グエンの元乳母 足が不自由



父がフレノスで肺炎で倒れて仕事を失い、借金を負い
3年間もあちこちをクルマで転々としてきたウィリアム一家
パンクで「パルメラス屋敷」の門に突っ込んでしまう

父とルディがタイヤ交換に行っている間、ロビンはいつものふらふら癖が出て
今は使われていない屋敷の立派さにみとれる

父は途中で出会ったクライリーさんにアンズの季節に働いてほしいと言われて
村の粗末な家を借りて住むことになる

ロビンは屋敷に戻りうろついていると、小屋に住むブリジットと知り合う
ネコ、アライグマ、ニワトリ、ヤギのベッティらと住んでいて
村の人たちからは“魔女”呼ばわりされているが
ロビンは足の不自由なブリジットさんの代わりに毎朝、ベッティを連れ出す約束をする

セダが父にヘアカラーを買うお金をねだるのを見て、欲張りだと非難すると
父:この家で一番欲張りなのはロビンだよ と言われてショックを受ける
手に入れることのできないものを当てもなく求める気持ちのことを言われたのだと自分を責めるロビン



ブリジットの家に行った帰り、農場主の娘グエンと出会い、仲良くなる
ブリジットはグエンの乳母だった

ブリジットはパルメラス屋敷の歴史を話してくれる
マッカーディさんはいつか博物館にしようと計画している
ブリジットは迷いながらも小さな箱に入った大きなカギをロビンに渡す



村の娘テレーサは、パルメラス屋敷で昔、少女が殺されて
今でも幽霊が出るのだと話すがロビンは信じない

あちこち探して、カギは井戸を開けるものだと分かる
暗いトンネルを抜けると、パルメラス屋敷の秘密の部屋に通じている



道で転び、グエンは部屋に呼んで介抱してくれる
部屋にあったピアノを弾くと、すごく上手いと褒める
グエンはピアノ教師に習っているが練習が嫌いで進歩しない

本棚にはたくさんの本があり、読書するよう言われているが興味がない
ロビンがあらすじを話してあげると夢中になって聴くようになる
ロビンは家族の話をするが、グエンがバカにしたりしないので驚く



屋敷にはほとんど家具はないが、ビロードの部屋だけはいろんな美しく古いモノがあり
ロビンはそこで暮らしている想像をしてみる
本棚にはたくさんの本があり、毎日のように来て読むようになる



アンズの時期になると、村に住む12歳以上の者はみな労働許可をもらって手伝う
グエンもいい経験になると言って登録する

ロビンに屋敷で亡くなった少女ボニータについて話す
ボニータは幼い頃、両親を亡くし、祖父と暮らしていた

ボニータが消えた当日、馬が濡れて帰ってきたことから
洪水に流されて溺れ、死体は海に沈んだのだろうということになった

ビロードの部屋にある少女の写真がボニータだろうと推測する
ボニータの日記も見つけて、フランシスコ伯父、リリー叔母、息子ドニー(グエンの父)
親友のメアリーについて書かれている

ボニータもビロードの部屋で楽しく過ごしていたが
祖父が亡くなってから先の日記は白紙で気になるロビン

ボニータが消えた際、伯父と妻が殺したなんていう噂も立ったが
伯母と子守のマリアが不仲でマリアが後に噂を広めたと思われる

アンズの種取りが始まると、朝7時~夕方5時まで立ちっぱなしの労働でくたくたになる
農場の支配人クライリーの息子フレッドは監視役で、いつも誰かに嫌がらせをしているため
ロビンは大嫌いになるが

父:
昔、クライリー一家はオクラホマのひどい砂漠地帯で苦しい生活をしていた
飢えと失望は人間の精神に大きな影響を与えるものだ



子どもたちは試験を受けて、学校に通い始める
ロビンはグエンと同じ7年生として勉強する
グエンのお金持ちのグループと村の貧しい子のグループの間で揺れるロビン

ピアノの先生からも褒められて、いっしょにレッスンを受ける
レッスン料は高額だが、一度も代金のことは言わない

家族で買い物に行った日、父はまた体調を崩してしまう
本当は学校の先生になりたかったのに、祖父が急死して学校を卒業できず
向かない力仕事でムリをしている



1年に1回、ビロードの部屋を掃除するからとロビンを誘うグエン
ロビンは初めて見た演技をする
フレッドは箱の中の高価な宝石などに目をつける

あまり好きではないジョー叔父から手紙が来て
体を壊したから父に店を手伝ってほしいという頼みだった
父は一番辛いのはロビンだから、一晩考えるようにうながす

ロビンは父の体を思うと「行く」という選択肢しかなかった

父:
お前も自分に子どもができたら分かると思うが
自分の子どもだからといって、その子の人生を決める権利など親にはないんだよ


マッカーディ夫妻はロビンに学年の終わりまで一緒に暮らしてほしいと提案する
グエンからの頼みで、ロビンと仲良くなってからピアノも読書も熱心になったため

どうしていいか迷い、ブリジットに相談する

ブリジット:
なぜそうするのかという理由には、正しい場合と正しくない場合がある
残りたいのは、あの屋敷に関係があるのかい?
周りの人たちのことを忘れてしまうほど心を奪われてしまっては・・・

ブリジットは自分がボニータ・マッカーディだと明かす
祖父が亡くなると、屋敷と土地を全部遺されて
伯母とマリアの仲が悪化し、伯父と伯母もケンカしているのを聞き、混乱して家を飛び出した

親友のメアリがいろいろ手配してくれて、バウアー一家の住み込み教師となり
スイスから来たエリック・グンターと結婚し、各地を転々とした

エリックが病気になり、初めて身の上を明かし
エリックの死後、伯父と伯母はもう亡くなっていて
マッカーディ夫妻が家政婦を募集していたから引き受けて、そのまま言わずにいた
ロビンが見つけた写真もブリジットだった

ブリジット:
場所にしがみつくより、自分を愛し、必要としてくれる人といっしょにいることのほうが大切なんだよ
人を大切にしないといけない 人間から離れてしまったら、その人の人生は終わりだよ



混乱したロビンはビロードの部屋に戻ると、これまでの魔法がとける
夜中にクルマが来て、3人のどろぼうが入る その1人はフレッド

高価なものを盗み、証拠隠滅のため、本に火をつけて屋敷ごと燃やそうとして
ロビンは止め、マッカーディ家に教えに行く

なぜ井戸のカギを持っていたのか聞かれ、結局、マッカーディ氏は弁護士を通じて
ブリジットがボニータであることを知っていたと分かる

フレッドは自首し、共犯者2人も逮捕される
ブリジットはマッカーディをまた名乗ることを喜ぶ

マッカーディ氏は屋敷を博物館にする際、ポールに管理人になってほしいと頼む
屋敷の近くに一軒家を建てて、ウィリアムス一家が引っ越すまでは
屋敷に住んで留守を守ることになる


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ジェリコの夏 ジョハナ・ハーウィッツ/文 BL出版

2025-01-21 17:24:18 | 
2001年初版 千葉茂樹/訳 メアリー・アゼアリアン/絵



近所の図書館で見つけて借りて、一気読み
タイトルと冒頭を読んで、自分が好きな物語だと勘で分かった

実在する人物や工場名も出てくるが、ストーリーは創作
著者が歴史などを詳しく調べて書いたとあって驚いた
温かみのある木版画も素晴らしい


ジョハナ・ハーウィッツ
1937年 NY生まれ 図書館司書をしながら創作活動をはじめた

メアリー・アゼアリアン
木版画に水彩で色を施す画風が人気の版画家


【内容抜粋メモ】

登場人物
ルーシ 姉 18歳
ドーシ 妹 12歳

ミード家
父母
エディー 18歳
ティモシー 16歳
エマ 長女 14歳
エリナ 次女 8歳 通称ネル

ベントレー家

ウィリー 雪の結晶を研究している




1910年
ドーシはフレッシュ・エア基金を利用して
1人でジェリコに行き2週間の夏休みを過ごすことになる

家族写真を撮った後、父は単身でアメリカに渡り、3年後に家族を呼んだ時
赤ちゃんのベルベルはしょう紅熱で亡くなっていた

肺結核で父が亡くなり、去年、母も亡くなり
姉ルーシはトライアングル・シャツウエスト工場で
1日に12時間も針仕事をしてなんとか暮らしている







駅にはミード一家が馬車で迎えに来てくれていた
お喋りが好きな次女ネルは、以前ベントレーさん宅にフレッシュ・エア基金で来た
メアリー・ウェルズについて話す

一面のトウモロコシ畑も、農家の大きな家にも驚くドーシ
ミード夫人は食べきれないほどのごちそうを出すが
ドーシの家はユダヤ教のため、ブタ肉は食べず
肉と牛乳もいっしょに食べないと話す







ニューヨークの図書館で『赤毛のアン』と『若草物語』を借りてトランクに入れ
白い本に日記をつけて、寂しくなると友だちが書いた寄せ書きを開くドーシ

焼きたてのパンを初めて食べて、美味しさに驚く
牛から乳をしぼり、ニワトリから卵をとり、ブタからハムををつくることを知る

夜、火の粉に驚き、エマとネルを起こすと、ホタルだと教えてもらう









ネル:あなたはどうして古い服ばかり持ってきたの?
2着しか服を持っていないドーシは悲しくなる

エマ:
私、いつかNYに行きたい
その時はあなたの家にも行ってみたい

狭いアパートの一室に姉と2人で生活しているドーシは気おくれがして
約束はできないと答えると冷たいと言われて傷つく



搾りたての牛乳でお腹を壊してしまったドーシ
ミード家はベントレー家に招かれて、ウィリーおじさんがピアノを弾いて、みんなで歌う

ウィリーおじさんは雪の結晶の写真を撮っていることで有名
ウィリーおじさん:同じ形をした雪の結晶はふたつとない







3人で池で泳ぎ、エマはドーシから借りた本を夢中で読む
急に雷が鳴って、びしょぬれで家に戻り、豆の瓶詰を手伝う
地下の食糧庫には毎年、2年分の食べ物をためている

エマが池に図書館の本を置いてきて、びしょ濡れにしてしまう
いつも母から不注意だと言われているため秘密にしてほしいと言われてドーシは怒る
新しい本を買って弁償しなければならないが、どこにそんなお金があるのか









姉から長い手紙が届く
マイアー・ライスマンからプロポーズされたと書いてある
マイアーは4年前に妻と子を亡くして悲しみのどん底にいたが
ドーシが熱を出したことがきっかけで知り合った

結婚したら、工場の仕事は辞めて欲しいと言われ
ドーシもいっしょにアパートで暮らし、大学進学もすすめてくれている
今回、フレッシュ・エア基金をすすめてくれたのもマイアー

ドーシは突然の話に混乱する

夜、眠れずに窓から外を見ていて、今度は本当に火事が出て、家族に知らせる
ターナー家の家畜小屋が燃え、近所総出でバケツリレーをする
小屋を燃やし尽くして火はおさまる

ドーシは姉の働く工場で火事が起きたら、逃げ道がないのでは?と不安になる
大農家は裕福に見えたが、天候や収穫高によって収入が不安定になることが分かる



雨の日、ドーシはベントレー家を訪ね、雪の結晶の写真を見せてもらう
ウィリーおじさんは雪の結晶と同じく、人間もそれぞれ違っていると教える
ドーシが帰る際に写真の1枚をプレゼントする

エマは野生のブラックベリーを摘めば、町の雑貨屋さんで1キロ10セントで売れると提案する
エマ、ネル、ドーシはブラックベリーを摘みに行く







エマが最初、ドーシに冷たかったのは、ベントレー家に来たメアリーと仲良くなり
都会暮らしについて夢のような話をしてくれたのと比べていたからと話す

ドーシ:
あの時、いい返事をできなかったのは、私の家がとても貧しいからなの
でも姉さんが結婚して引っ越したら、あなたを招待できるかもしれない

1キロ摘むのに何時間もかかり、やっと7キロ集めたのに、売ったらたった49セント
本は1ドル50セントかかる

ミード氏はなぜそんなにお金が必要なのか聞き、エマが正直に話すと
先日の火事を教えてくれたお礼がしたいとターナーさんが言っていて
本を買ってもらえることになる









もう帰る日
ミード夫人は、ドーシのために旧約聖書に載っている材料でケーキを焼いてくれる
ティモシーはドーシに牛の乳の搾り方を教える

ミード夫人:
私たちが恵まれた環境で暮らしていることに気づかせてくれたことは
エマやネルにはとてもいい勉強だったし、私はユダヤ人と知り合いになれてとても嬉しかった
お互い、習慣は違っても、深い所ではみな同じだと分かったし

ドーシは図書館には新しい本を弁償するから、雨に濡れた本はエマにあげて
みんなでブラックベリーを摘んだ思い出にしてほしいと言う

みんなから寄せ書きを書いてもらう

ベントレー:あなたは他の誰とも違う特別な存在であることを忘れずに




著者あとがき

フレッシュ・エア基金は1877年に設立され、今も活動している
ウィルソン・アーウィン・ベントレーも実在の人物

ルーシが働いているトライアングル・シャツウエスト工場も実在
1911年、大火事になり、146人の女性工員が亡くなった
私は物語を1910年にすることにこだわり、ルーシを救いたかった

NYの優美な図書館は、バーモント州産の大理石を使って1911年に完成した

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愛のはじまるとき K・M・ペイトン/著 晶文社

2025-01-20 14:15:31 | 
1984年初版 石井清子/訳

ヤング・アダルト向けだからか、性の描写がわりと生々しく描かれている
当時は今より浮気が教会のルールで厳しく縛られているからこそ
余計に気持ちが高揚する火に油状態

そして急に予知能力を持つ少年が現れてSF要素も加わる

アイドルのように人気だった騎手が実在の人物と知って驚いた



【内容抜粋メモ】

登場人物
フィリップ・キーン 父
セシリー 母
ローラ 13歳
アルバート 執事
ハリー 叔父
ジャーベース 従兄 セシリーの兄の息子
フレッド・アーチャー 競馬の騎手
ドウソン 競馬馬の調教師
タイガー
ヒルダ・ベル ローラの家庭教師
バーティ・ラッシュ 調教師
ロッティ 妻
チャーリー 長男 15歳 アダ、ハービー、アグネス


競馬で有名なニューマーケット・ヒースに暮らす13歳の少女ローラは
人気騎手フレッド・アーチャーに心酔していて、大人になったら結婚すると信じている
元騎手で現調教師の叔父ハリーの家にしょっちゅう出入りしているのを両親はよく思わない

フレッドは調教師ドウソン氏の元に奉公に入り
12歳で初優勝、19歳でダービーを初制覇し
5年間チャンピオンの座を守っている

見知らぬ少年が厩舎で寝ていたのを父フィリップが見つけて
妻セシリーに食事をさせ、風呂に入れるよう指示する

ローラは強い興味を持ち、名前も言わないのでタイガーと呼ぶ
父はタイガーが寝言で何度もチャリーバートと言っていたと話す

ローラはハリーに話すと、ファルモウス卿の子馬の名前と分かる
タイガーはチャリーバートに賭けるようローラにうながす

セシリーは完璧な女主人を演じているが、本当に愛し合っているのは義弟ハリー
2人の関係を執事アルバートや女中、ハリーの世話をするマーサも知っている

フィリップがロンドンに出かける日、ハリーはセシリーをレースに誘う
タイガーの予想通り、チャリーバートに乗ったフレッドが勝つ

セシリーはハリーを夕食に招き、朝まで過ごす
ハリーは庭でタイガーに見られて、弱みを握られたと思う

タイガーはハリーの元で働きたいとローラを通して頼む
ハリーは秘密をバラさない条件だと思って、厩舎を任せるが
対等の立場になるため、タイガーの素性を調べる
タイガーは寝言を言うから1人で寝たいと願い出る



セシリーはローラに家庭教師をつけるために面接するが決められない
執事アルバートが知人の娘ヒルダ・ベルを推したため彼女に決める

ハリーはタイガーの身辺を調べ、彼が夢で予知できる能力があると知る
その能力のせいで父と兄に虐待され、監禁されていた

周りに秘密にする代わりに勝ち馬を教え、儲けたお金は銀行に積み立てると約束する
ローラにもタイガーの能力について周りに言わないよう約束させる

ベルもフレッドの大ファンで、ローラと噂話に興奮する
ローラがタイガーにしつこく聞いたため、フレッドが大けがをすると話す

フレッドは予知通り、馬に襲われて大けがを負い
治療中に体重が増えて、4日間で6.3キロもムリな減量をしてレースに臨む

ハリーはセシリー、ローラ、タイガーもレースに連れて行き
セシリーと2人になるためにタイガーにローラの世話を任せる

フレッドはまさかの逆転で優勝し、タイガーの予知が必ず当たると分かる
群衆の中にタイガーの父と兄がいて、2人でレストランに逃げ隠れる
タイガー:もし逃げられなくても、君を愛しているよ
タイガーは家族に捕まってしまう



いとこのジャーベースは、シミスターという学友を連れて来る
消極的でネガティブ、自信がなく、得意なことのないジャーベースと真逆のタイプ

フィリップをおだてて、昔、兄弟で登山をしていた話から
みんなでコルシカに山登りに行くことになる

セシリーの親はボヘミアンで、若い頃は奔放な生活を楽しんでいたが
親を憎み、ローラには同じ苦しみを味わわせたくないと思う心情を吐露すると
ハリーはローラとタイガーが厩舎でキスしていたのを見たし、恋愛は自然なことだと諭す

ハリー:
どうにもならないことに反撥してもはじまらない
われわれにできることをする それを楽しみ、感謝すればいい


フィリップはローラを社交デビューさせるために
ロンドンの祖父母の元に送る計画を立てているが
ローラは生まれ育った土地を離れる気はない

フレッドがネリー・ドウソンにプロポーズしたと噂が広まり、ショックを受けるローラとベル
フレッドは花嫁のために新しい家を建て、ファルモウス・ハウスと呼ばれるようになる

ハリーはタイガーのいるサーカス一家が近くで興行しているのを知り、ローラを誘う
綱渡りをする肝っ玉ディアボロの1人がタイガーだと見抜くローラ
ネットの命綱もなくワイヤーの上でとんぼ返りをする姿が美しくて感動する

ハリーは馬車で待ってると告げ、タイガーはショーの衣装のまま逃げて来る
ローラにタイガーがサーカスにいたことを秘密にするよう約束させる
タイガー:まだフレッドを愛しているんですか?



フレッドの結婚式の日、ファンが町にあふれる
タイガーとローラも見に行くが、タイガーがなにか恐ろしい予知を見て発作を起こす
ローラはフレッドの身に何が起きるのか聞きたいが、ハリーが止める



タイガーはローラを散歩に連れ出し、ローラはタイガーにとんぼ返りをして見せてもらう
木に登って話していると、ハリーとセシリーが来て
木の下で愛し合うのを見てショックを受ける

いつも冷静な母はずっと仮面をかぶっていたと知り、ベルに心の内を打ち明ける
ベルは驚き、母の弱みを知られてしまう



コルシカに行く前、ハリーは怪我を負って行けなくなる
登山基地で一泊し、ローラとジャーベースを残して、みな登山に向かう

あまりの暑さに耐えられず、ローラは服を脱いで川で泳いでいると、ジャーベースも一緒に泳ぐ
2人の距離は急に縮まり、嵐が来て、一行は帰らず
小屋を見つけて、シチューを食べる

ジャーベース:君はもう知ってもいい年ごろだよ

ジャーベースは学校でもいじめられ、親からは外務省に入るよう期待され
嫌いなことを懸命にやらなきゃいけない辛さを吐き出して、声をあげて泣く

彼は愛されたことがないと知り同情するローラ
ジャーベース:幸せは今だ こんなに幸福だったことは今まで一度もなかった

2人は何度も愛し合うが、登山の案内人パスカルに見つかりホテルに戻る
父が捻挫し、ベルは甲斐甲斐しく世話をしている

母が病気だと電報が来て、一行が家に帰ると、脳膜炎で亡くなっていた(!
ハリーはショックで参り、タイガーが仕事を仕切る



葬儀後、ローラは母の席についてアルバートらに指示を出すが
今後、父の面倒をみるつもりはなく、ベルはハウスキーパーとして残り
ゆくゆくは父と再婚するつもりだと分かる

アルバートはフレッドの家に近いラッシュ夫人がお手伝いを探していると伝え
ローラは早速家を出て、ラッシュの住み込みになる

ラッシュ家はみな率直で、よく笑い、フレッド夫婦とも近しいため
子どもを連れて時々遊びに行くようになる

フレッドは結婚しても減量のために家族と食事をせず
家にいる時は風呂ばかり入り、それ以外は海外のレースで忙しい

シーズンが終わると元の63キロに戻るが
春になると無茶な減量でげっそり痩せる
こうした無理な減量で大勢の騎手が亡くなっている

タイガー:僕が親から自由になったら結婚してほしい

ハリーはタイガーがフレッドの結婚式で発作が起きた晩
「セント・マイリンに乗るな」と寝言を言ったとローラに話す

ネリーは男児を生んだがすぐ亡くなる
その後、再び妊娠し、フレッドの姉コールマン夫人が世話に来る
ネリーは出産後、けいれんを起こしてそのまま亡くなる

タイガーが見たのはこの悲劇かと問い詰めると、否定する
タイガー:それが終わったら、僕を愛してほしいんだ

タイガーはフィリップにローラと結婚したいと話し
これまでの貯金がフィリップの財産を超えているし
反対する理由もないので許可する父
タイガーは新婚生活を送る新居を建てている



フレッドは減量のためにライト博士が特別に調合した酒だけを飲んでいる
「アーチャーの混合酒」として知られていた

ローラもレースを見に行くが、フレッドは穴馬に負ける
ハリー:ほんの少しの体重オーバーのせいだよ

ネリーの3回忌の日、フレッドは銃で自死する
店もホテルも閉められ、町中が喪に服した
タイガーが見た予知はこれだった

タイガーは20歳になり、子どもにだけ与えられる予知能力がなくなったことを
父に話し、ひどく殴られた後、自由の身になる

ハリー:
これからは、すべて先が楽しみなんだ
済んだことを考えるヒマはないよ 忘れるだろうさ

タイガーとローラはフレッドの墓をお参りする
ローラ:これがフレッドがお墓の中で初めて聞いた蹄の音なんだわ



訳者あとがき

フレッド・アーチャー
1857年イギリス生まれ 12歳で初優勝してから29歳で自死するまで
数えきれないほどのレースに出場し優勝した


キャスリーン・ペイトン
1929年イギリス生まれ
15歳で最初の本を出版
1950年 クラスメイトの画学生マイケル・ペイトンと結婚






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エヴァが目ざめるとき ピーター・ディッキンソン/作 徳間書店

2025-01-19 17:20:52 | 
1994年初版 唐沢則幸/訳 木内達朗/カバー画

SFというと、人口増加→荒廃って設定は食傷気味で
冒頭の数行でやめようかと思ったけれども、動植物の保護の観点で読み切った

チンパンジーの身体にヒトの記憶を移植するアイデアはゾッとした
いくらモフモフが好きでも、そっちじゃないよね

あくまで現世の寿命延長に固執するあまり
他の種を犠牲にしても構わないって考えもそのうちなくなるだろう

ヴァーチャル世界にどっぷり浸かってる未来はもう来ているし
巨大企業をバックにしたマスコミが大衆の意見に負ける様子も
SNSでひとり1人の意見が虚偽報道を越える今の時代と通じる


ピーター・ディッキンソン
1927年生まれ 初めて書いた大人向けのミステリーがゴールドダガー賞を受賞
『青い鷹』でガーディアン賞を受賞







【内容抜粋メモ】

■第一部 目ざめ
エヴァは交通事故に遭い、ひん死だったところを
科学者ジョーン・パラディシュ博士の「ニューロン記憶理論」初の人体実験の被験者となる

最初は目を開けるのもやっとだったが、8か月で胸のキーボードを使って会話して動けるまでになる
美しい少女だった姿がケリーというメスのチンパンジーとなり、ショックを受けるが徐々に慣れていく

人々は1日中家にこもって暮らし、ヴァーチャル映像を提供するシェーパー会社が世界を支配している
自然破壊で動植物が死に絶え、研究対象である動物が少し残っているだけの近未来

父はチンパンジー飼育研究所で霊長類学の主任教授をしているため
エヴァの様子にとても興味を持っているが、母は変わってしまった娘を見て戸惑う

エヴァは今はない森の夢を見る
ケリーはどこに行ったの?

人間だった頃の幻肢に戸惑うエヴァ
不安が高まるとクスリで眠らされる

“精神科医は推測するだけ”

研究所はいつも資金難で、エヴァの実験には高額がかかったため
シェーパーの会社SMIと契約し、最低1本はドキュメンタリー番組を撮ること
ワールド・フルーツがスポンサーにつき、ハニー・ベアドリンクのCMに出演する契約をする



エヴァはダーク・エランの番組に出る
エランはカワイイ少女時代の写真を持ち出し、イラっとしたエヴァはエランにキスをする
怖れと怒りの表情をカメラがとらえ、それを見た視聴者は喜ぶ


■第二部 生
エヴァは自宅に帰る
母といっしょに父の出た番組を見ていると
あっという間に身バレして大勢が詰めかけてパニックになる

父はSMIのジェーン・キャラウェイとともに来て
エヴァの保護と引き換えに、報道の権利をSMIに一任するよう契約を求める
最初からこうなると分かっていたようす

エヴァ:私は誰のものなの?
父と母はエヴァの対応や今後について言い争うようになる



エヴァは世界のマスコット的存在になり、学校へ戻る
ときどき、人々の圧迫感、孤独感、違和感に悩むエヴァ
SMIから派遣されたボディーガードのコルマックがつく

エヴァの成功例を見て、その後も志願者が60人以上になった
次に実験しているのはシーザーというオスのチンパンジーとステファンという少年
父は彼とエヴァを結婚させる未来まで想定している

エヴァ:2人の子どもはチンパンジーでしょ

父:
カンタンな道具を作ると、若いものへ伝達されていく
火をおこすとか、ヒモを結ぶとか
人類からチンパンジーに遺伝子に贈り物をするんだ

エヴァは自分の中のチンパンジーを自由に解き放つため、ときどき飼育所に通いはじめる
かれらは普通メスを中心とした家族の群れで生活している

研究所には、大人のメスのベス、ディンクス、ラーナ
子どものアベル、ワンのグループがいて
ボスは年長のジェロニモとズタボロで争っている

エヴァは服従の挨拶や毛づくろいをしてうちとけ
中でも頭のいいスニフというオスと仲良くなる

発情期は35日に1回、お尻のあたりがふくれ、オスはそれを見て興奮する



CMの現場を仕切るミミ・ヴェンチュリは短気で恐れられている
その息子グロッグ・ケネディはエヴァと仲良くなる

グロッグ:
ジャングルに戻るのがいい 人類はもう終わりだ
研究所も20年もすればなくなるよ
君なら先頭に立てる

グロッグはシェーパーでジャングルの生配信を見せる
カヤモロという森に視察に行き、ひどい感染病にかかる

グロッグ:
チンパンジーはカヤモロに送れない 免疫がない
自分たちでジャングルを作るしかない

ステファンとシーザーは互いに嫌い合ってうまくいかない
エヴァは子どもの頃からチンパンジーと慣れ親しんでいたから特別なケースだった

もう1人の少女は実験後9日間で死んでしまった
ジョーンは記者会見で叩かれる

ジョーン:彼らの死によって、人間の知識は増してきた
エヴァ:あなたもただのサルだってこと、覚えといて
エヴァはオーバーオールを引き裂いて大声で吠え、部屋を出る



キャラウェイが来て、SMIとワールド・フルーツに泥を塗るような行為は禁止すると警告する

キャラウェイ:
あらかじめ決めた質問以外の出演は断ったほうがいい
昨夜の映像は公表を禁じ、公表すれば権利侵害として告訴する

だが、学校の友人はエヴァがカッコよかったと喜ぶ
グロッグと会うことも禁止されるが、片方の羽がもがれた蝶をシンボルにして
動物の権利保護の大きな運動が巻き起こる
チンパンジーなどどうでもいいと思っている有名歌手も歌を提供する

グロッグはワールド・フルーツの名誉挽回にマダガスカルの島にあるジャングルに
チンパンジーを住まわせる資金を出させるように動かす



研究所の人工的なスペースしか知らなかったチンパンジーたちが
眠らされて島に移される

各地に遠隔操作のカメラが設置され、野生動物の番組に使われる
近くから飛んだ種でイチジクやマンゴーもなっている

野生のチンパンジーは起きている時間の2/3は食べ物を探し、1/3は食べている
吠えザルの鳴き声を流して、父やスタッフはエヴァを呼び出す

エヴァは電流フェンスで囲まれたコンテナの向こうに森を見つける
サイクロンが近づき、アラームをいったん切ると聞いて
その間に仲間を連れて脱出し、森に向かう

父母とスタッフは捜索隊で必死にエヴァを探す
グロッグ:世界は君の味方だ

エヴァはラーナを連れて行こうとする滑空艇に向かって大岩を落とす
その映像も漏れなく報道され、SMIはエヴァの申し出を受け入れ
人間による干渉は最低限にして、ジャングルを保護する契約をする



■第三部 死
20年が経ち、エヴァは冬に倒れて死を予感する
エヴァには子ども、孫もいる

グロッグは精神を病んで退き、研究所の所長になったデニーが来る
たくさんの子どもたちが自死し、誰も生産しなくなり、税金も集まらず
研究所は閉鎖となると伝える

デニー:チンパンジーは人類の未来の姿だと言われている

エヴァはキーボードを返して、カゴに乗せられて行く
火をおこしたり、ヒモを結んだり、いろいろ教えたことは何世代もかけて受け継がれるだろう
チンパンジーたちはエヴァに別れを告げて森の中に消えていく


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オーギー・レンのクリスマス・ストーリー ポール・オースター/著 スイッチ・パブリッシング

2025-01-18 22:04:32 | 
2021年初版 柴田元幸/訳 タダジュン/絵

タダジュン
1971年生まれ 版画家、イラストレーター
作品集「Dear, THUMB BOOK PRESS」
『とるにたらないおとこの話』

個展かどこかで知ったタダジュンさんの版画が独特な魅力を放っている
正方形に近いかたち、粋なストーリーとピッタリ合っててカッコいい1冊
エドワード・ゴーリーを訳している柴田元幸さんの訳

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topics~ぞろ目のエンジェルナンバー ほか

歳末感謝市 古道具と作家たち@ギャラリー上り屋敷&ブックギャラリーポポタム



ポール・オースター


著者は去年亡くなったとウィキを見て知った
ニューヨーク3部作も読んでみたい

ウィキ参照
オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」を読んだ映画監督ウェイン・ワンがオースターに連絡を取り、作品の映画化の話が進んだ。
オースターはワンと親交を深め、1995年の映画「スモーク」の脚本を書き下ろし、
ハーヴェイ・カイテルやフォレスト・ウィテカーなどのキャストの選定も行った。




【内容抜粋メモ】
私はこの話をオーギー・レンから聞いた
本当の名前を出さないよう頼まれている

オーギーと知り合って11年近くになる
ブルックリン繁華街にある葉巻店の主人で
たまたま読んだ書評で私の写真を見て
俺の写真を見てほしいと言われた







ライフワークだと言って見せてくれたのは、ある交差点の定点写真
毎朝、7時きっかりに写した写真は、最初、どれも同じに見えたが
ゆっくり見るよう言われて、注意して見ると
人々の区別、季節の移り変わりなどが見えてくる

オーギーは時間を撮っているのだ

シェイクスピア
明日、また明日、また明日
時はじわじわと1日1日を進んでいく



ニューヨーク・タイムズからクリスマスの朝刊に載せる短編を頼まれた
これまでに書かれたお涙頂戴の甘ったるいウソっぽいものが思い浮かぶ

オーギーに相談すると、お昼をおごるなら
最高のクリスマス・ストーリーを教えると言われる

1972年の夏
小僧が店に来て、ペーパーバックを数冊万引きしていった
途中まで追いかけて、諦め、財布を落としていったのを拾う

名前はロバート・グッドウィン
住所も書いてあり、警察に言うこともできたが
野球のユニフォームを着た少年時代の写真などを見たら、怒る気も失せた









クリスマス
なにも予定がなく、哀れになってきて、ふと財布を返しに行こうと決めた

団地の呼び鈴を押すと、盲目の年寄りの女が「お前かい、ロバート?」と言って
嬉しそうに出迎えたから、ロバートのふりをした
孫じゃないと分かってたはずだが、2人でゲームをやることに決めたようなものだ









葉巻店に勤めていて、今度結婚するんだとキレイごとを並べたら
老女:きっとうまくいくはずだって分かってたんだよ と喜ぶ

店でローストチキンやケーキを買って、ごちそうを食べ
トイレに行くと、カメラが箱に入ったまま積み上げてあるのを見つける

これまで写真を撮ったこともないし、盗んだこともないが
ごく自然に1つもらってきた









おばあさんは椅子に座ったまま眠っていて
そのまま部屋を出た

カメラを盗んだことがひっかかっていて、数か月後にまた行ったが
おばあさんはもういなくて、別の人が住んでいて、どこに行ったかも分からない

私:
たぶん亡くなったんだね
最後のクリスマスを過ごしていいことをしたじゃないか
カメラは盗品だったんだろう
あんたはカメラを有効に使ってる

オーギーの顔にいわくありげな笑みが広がるのを見て
全部でっち上げかとも思ったが
誰か1人でも信じる人間がいるかぎり、本当でない物語などありはしないのだ









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マチルダばあやといたずらきょうだい クリスティアナ・ブランド/作 あすなろ書房

2025-01-17 17:04:57 | 
2007年初版 こだまともこ/訳 エドワード・アーディゾーニ/絵

近所の図書館で見つけて借りた
読みやすいサイズとボリュームだけど
次から次へと、イタズラやり放題の子どもたちはスラップスティックコメディのようで
他人任せの両親は無責任だし、ばあやが子どもの伸び伸びした部分を無視して
魔法の力でこらしめたり
ルールにがんじがらめにしてOKってのは安易すぎるなと思った

最後は叔母からの遺産目当てだし


クリスティアナ・ブランド(1907~1988)
イギリスの有名なミステリー作家
『ハイヒールの死』『緑は危険』ほか
コックリル警部シリーズで知られる


【内容抜粋メモ】
昔は子だくさんで、ばあや、ねえや、家庭教師、子守むすめを雇っていた(中流階級の話だよね

ブラウン家にもたくさんの子どもがいて、始終イタズラばかりしているため
雇った世話役は1週間で逃げ出す始末

「このうちには、マチルダばあやに来てもらうよりしかたありませんね」









お手伝いさんの紹介所も全部断られて困っていると
マチルダばあやが現れる

器量が悪く、黒づくめ、ジャガイモのような鼻と大きな前歯が1本だけ出ている









マチルダばあや:
私が必要だという時は、お宅にいなければなりません
私が必要なくなったのに、いてほしいとお子さんがおっしゃる時が来たら
おいとましなければなりません
お宅のお子さんにはお稽古を7つしていただきます

1.寝なさいと言われたら、ちゃんとベッドに入ること
2.ごはんをガツガツ詰めこまないこと
3.勉強すること
4.起こされたら、すぐ起きること
5.ドアを開けっぱなしにしないこと
6.よそゆきの服をいやがらずに着ること
7.家から逃げ出さないこと


マチルダばあやが杖で床をトンと叩くとフシギな魔法が起きる
子どもたちが言うことを聞くたび、笑うとキレイに見える

仮病を使うと、本当にはしかにかかったり
料理人や執事たちと戦争みたいになったり







お金持ちのアデライデ・キュー大おばさんがお茶に来て
大勢の中から女の子を1人引き取って、しつけて、結婚させたい
さもなくば、全財産を残す約束はなしにすると脅す

ブラウン夫妻は愛する子どもを1人でも失いたくない
子どもたちはよそいきの服がイヤで家畜に着せたため
目の悪い大おばさんは、服を着せられた馬が気に入る







マチルダばあやは夫妻を助けるために魔法を使い
馬の代わりに子守のイヴァンジェリーンを馬車に乗せる
イヴァンジェリーンはその後、お金持ちの青年と結婚した

子どもたちは家から逃げ出すが、足が止まらなくなり、クタクタになって
マチルダばあやに助けを求めて、ベッドに戻される

7つのしつけが終わる頃、ブラックさんがやって来て
自分の子どもたちがイタズラ好きで困るとこぼす

子どもたち:マチルダばあやにたのまなきゃね

最初の約束通り、マチルダばあやはブラックさんの家に行くことにすると
子どもたちは行かないでと泣き出す

マチルダばあやの出っ歯が飛んで、おもちゃが無限に詰まったトランクになり
子どもたちは夢中になり、気づくと姿は消えていた







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グリーン・ノウの子どもたち グリーン・ノウ物語 1 ルーシー・M.ボストン/作 評論社

2025-01-16 16:36:10 | 
亀井俊介/訳 ピーター・ボストン/絵

つづきもので借りて読んだら、冒頭のシーンが印象的で読んだ記憶がある
ブログを調べたら、以前読んだ『まぼろしの子どもたち』だった
全然違うタイトルで出版したりしてるんだな/驚


少年少女新しい世界の文学 11 まぼろしの子どもたち ルーシー・ボストン/著 学研



















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夏の丘、石のことば ケヴィン・ヘンクス/作 徳間書店

2025-01-16 16:21:49 | 
1996年初版 多賀京子/訳 トーマス・C・ジャレスキー/カバー絵

ケヴィン・ヘンクス
1960年 アメリカ生まれ
本書は初めての児童文学





徳間書店のヤングアダルトものは本当に充実していてハズレがない



【内容抜粋メモ】

登場人物
ブレイズ
父グレン
母リーナ
祖母ノヴァ
クレア 父の恋人

フロイ 丘の向こうに住むヴィッキーの母
ゲーリー シェパード犬
ヴィッキー 母
ジョゼル 娘
リック 母のBF


ブレイズの母はブレイズが5歳の時にがんで亡くなった
母といっしょに行った最後の場所が観覧車で
それ以来、ブレイズは1人で観覧車に乗れなくなる

毎年、チャレンジするのだが、毎回、怖くて挫折する様子は
パニ障の暴露体験と通じるな

観覧車の事故で両足を酷く火傷して、他の皮膚を移植したため、今でも目立つ傷がある
ほかにも大きな犬などコワイものがたくさんあり、空想上の友だちを作って
助けてもらおうとしては失敗するたびに、ニセアカシアの木の根元にお墓をつくっている

父グレンは高校で美術を教えながら、夏休み中は家にこもって絵を描いている
家事は祖母ノヴァがしてくれている

ブレイズはノアの箱舟を大事にしている
プラスチックの動物たちがついになっていたが
母が死んでから片方を捨ててしまった

母が閉じ込められている悪夢を見るため、古いカギを集めている

ある日、庭に石で母の名前「リーナ」と文字が作ってあるのを見てゾッとする
父か祖母に相談しようかとも思ったが、自分で解決しようと決める

“もう、こわがってばかりいるのはやめたんだ”



ジョゼルは祖母フロイの家に預けられている
父はテキサスに住んでいるが会ったことはない

美人の母ヴィッキーは時々恋人をつくり、ジョゼルの世話をやめてしまう
今回もリックと2人で出かけてしまった

ジョゼルはフロイから丘の向こうに住むブレイズが母を亡くしたことや
お祭りの事故で火傷を負った話を聞いて、自分よりもっと酷いことになればいいと思い
とっさの思い付きで、丘に「リーナ」と石を並べた

ヴィッキーは「不幸は道連れ」とよく言っていた
ジョゼルは自分の太ももにボールペンで「リーナ」と刺青のように書く



グレンは同じ高校の美術教師クレアと親しくなる
クレアは金属工芸が得意で、金銀でアクセサリーや箱をつくる

ブレイズも仲良くなってほしくて、3人で湖に出かける
ブレイズはなんとなくクレアに火事で火傷したことを話す

その後、丘に「体に火がついた」と石で文字がつくってあるのを見て
犯人はクレアではないかと疑い、父に話せずに悩む



ヴィッキー:
リックが子連れの旅はイヤだって
あたし、あんたといると疲れちゃうの
これはあんたのためでもあるのよ

(完全に育児放棄だな

フロイはジョゼルを慰めるためにショッピングセンターに連れて行き
高価なカーディガンを買ってくれる

いつもは古着を買うか、商品を見るだけだから
祖母にお金をたくさん使わせてしまったという気持ちがつきまとう
ジョゼルは自分が可哀想でたまらなかった

また丘に行き、別の言葉をつくって、影でブレイズが悲しむのを見てやろうと思っていると
丘にブレイズがいて目が合ってしまう

ジョゼルは母は科学者で太平洋の調査をしている間、祖母といっしょにいるとウソをつく
転んで足から出た血をブレイズの足にもつけて
ジョゼル:これで、あたしたち、親友になったのよ 永遠にね



その日から2人は毎日会って遊ぶようになる
ジョゼルは父が亡くなったというウソもつく
ジョゼル:片親の子どもクラブへ、ようこそ

ジョゼルはブレイズを家に呼ぶ
シェパードのゲーリーがコワイというブレイズに犬の触り方を教えてあげて
ブレイズには私が必要なんだと思うと嬉しくなる

ブレイズの家でもご飯に呼ばれ、グレンが父、クレアが母、ノヴァが祖母、ブレイズが弟で
自分もここの家族なんだという想像が楽しくなる

これまでついたウソを後悔するが、本当のことを言ったらブレイズが離れてしまうのがコワイ
二度とウソはつかないと誓うも、ノアの箱舟を見せてもらって
プラスチックのキツネを見つけてポケットに隠す

クレアが作ったものを工芸展で売るのを手伝いに行くのに連れて行ってもらい
幸運のペニーを拾う

ジョゼル:何をお願いするか教えてくれないと、お願いは叶わないのよ
ブレイズ:君が見つけたんだから、君のものだよ



翌日は雨で、ジョゼルは水着を着てブレイズを雨の中に誘い踊っていると
太ももに書いた「リーナ」の文字を見られて、石で文字をつくったことがバレてしまう

ジョゼル:あれは冗談のつもりだったの お願い、嫌いにならないで
ブレイズ:友だちだと思ってた とにかく帰れ!

ブレイズは初めて人を突き飛ばし、高価なカーディガンのボタンをひきちぎる
ジョゼルと遊んでいる間は空想の友だちのことを忘れていたと気づく

ジョゼルの泥だらけのカーディガンを見て、フロイは激怒する
学校でもいつも迷惑をかける子と思われていて
祖母にも同じ思いをさせていると気づく

夜中の1時、眠れずに家に電話をかけると母が出る
リックと旅に出たというのはウソで、ずっと家にいたと分かる

フロイはジョゼルを家まで連れて帰る
フロイ:ママはあんたのこと、愛してるんだよ
ジョゼルは太ももに「ごめんね」と書く



ブレイズは父からもらったカンバスに家族を連想させるモノを描いていく
ぼくたち、みんな、いろんなふうにつながってるんだ

クレアを晩ご飯に呼び、ノアの箱舟のキツネがなくなったと話すと
クレアは対のキツネを作ってくれて、それも絵に加える

フロイの家に行き、ジョゼルにあげたカギのコレクションを返してもらおうと思ったが
ジョゼルは家に帰ったと聞く

フロイ:
きっと戻ってくるさ あんたのことを母親にベラベラ喋ったらしい
たったひとりの親友だって

ブレイズはジョゼルを許し、カーディガンのボタンに似た月を描く
この夏はジョゼルを中心に過ぎていった

8月最後の土曜日、丘には「ごめんね」と石が並べてある
ブレイズ:お父さん、起きて 丘を見てほしいんだ

“そうだ そこから 始めよう”


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海外ミステリーBOX ウルフ谷の兄弟 デーナ・ブルッキンズ/作 評論社

2025-01-15 16:15:12 | 
2010年初版 宮下嶺夫/訳

このシリーズはどれも引き込まれるストーリーで一気読みした
少年の頭の中でリフレインされる謎の言葉とかはスティーブン・キングのような不気味さ
犯人は一番らしくない人物ということですぐ分かった

【内容抜粋メモ】

登場人物
バート・ケードル 12歳
アーニー 弟 9歳
ジーン 亡き母のいとこ
チャーリー 伯父 妻ルー
ブラズ ブルー・レイヴンの主人
マッジ ブルー・レイヴンのウェイトレス
オールド・レナ 1人で暮らす黒人女性
クレイニング 食料品店の店主



バートとアーニー兄弟の父は他の女性といっしょに家を出て
母は病気で亡くなり、母のいとこジーンの家に厄介になっていたが
妊娠を機にチャーリー伯父に預けられた

バートはリーバ伯母がアーニーだけなら引き取ると言うのを聞いて
兄弟離れ離れになるのだけは避けたいと願い
亡き母から「アーニーの面倒をみてやってね」と言われた約束を守ると誓う

はるばるバスで着いたが、ジーンからの電報が届かず伯父は迎えに来ていなかった
酒場ブルー・レイヴン(ワタリガラス)にいるだろうと言われて行ってみるがそこにもいない

ウルフ谷にある一軒家だと教えられ、途中のクレイジー・ウーマン池と
オールド・レナには近づかないことと忠告される
池で溺れた男がいて、子どもを亡くした女も沈んでいると噂されている
丘の上には精神病院が建っている

伯父は2人を見て引き取るのは断るつもりだったと話す
妻ルーを亡くしてからアルコール依存症で家の中は荒れ放題

2階のルーの部屋だけはキレイなままで、2人がそこで寝ていると激怒する
夜になるとなにかの視線を感じ、女の泣く声みたいな音がする

なにも食べるものがなく、買い出しを頼まれて歩いていると
ブルー・レイヴンのウェイトレスのマッジと誰かが口論しているのを聞く
カーキ色のシャツがチラっと見える

食料品店のクレイニングさんはアーニーが気に入る

兄弟は家の中を片付け、料理が得意なバートが食事を作る
兄弟は学校に通うようになるが、いつ伯父から追い出されるか分からないため友だちを作ろうとしない

クレイジー・ウーマン池でウサギが穴に落ちる
オールド・レナが仕掛けた罠で、ウサギをその場で殺して首を落とすのを見る
レナの小屋に伯父のシャツを見つける

2人はマッジが鈍器で殴られて死んでいるのを見つける
クレイニングさんに言って、保安官を呼び、兄弟は事情聴取を受ける

ブルー・レイヴンでポーカーをしていたブラズ、マック、質屋のジョージ、チャーリー伯父はアリバイがある
妻を亡くしてからずっと友だちだったマッジを失って
伯父はショックで余計に酒に逃げるようになる



ハロウィーンの夜
伯父は兄弟を町に連れて行く約束を忘れて飲みに出かけてしまい
アーニーは狼男の扮装をして「トリック・オア・トリート」と自宅に来る
後日、その仮面はゴミ置き場から消えてしまった

マッジ殺しの犯人として浮浪者のピートが逮捕される
現場近くで寝ていて、マッジの死体からお金を盗んだ

チャーリー伯父はポーターへ行くから、兄弟はジーンのもとへ帰るように言う
バートは兄弟が引き裂かれてしまうかもしれないからと懇願するが酔っていて話にならない

仕方なくバスに乗る準備をするが、アーニーは
伯父は素面になったら帰ってくるだろうからバスに乗りたくないと愚図る
伯父からもらった70ドルでなんとかしようとするバート

マッジの事件から「ピラニアが噛んだ」という言葉が頭から離れない



冬になり、2人が薄着なのを先生に心配され
仕方なく冬着とブーツを買うとあと10ドルしか残らない
クレイニングさんの配達を手伝って、週に5ドルもらえることになり、食費を節約する

アーニーの担任フィールドラップ先生が自宅に来る
アーニーの成績がどんどん落ちているのを心配している
バートは子ども2人だけで暮らしているのを必死に隠す(そんな映画があったな・・・

ブラズの妻のもとに配達に行くと、マッジを殺したのはピートじゃないと話す
マッジは町の複数の男たちと付き合っていたし、殴られた跡があるのは憎んでいた人に違いない

アーニーはクリスマスには伯父が帰ると信じて、ツリーやプレゼントを用意して浮かれている
バートはクリスマスだけは楽しく過ごして、翌日、フィールドラップ先生に打ち明けようと思う

電気料金の最後通告が来て、伯父の剣を質に入れて、なんとか支払う
クレイニングさんにマッジとカーキ色のシャツの男が口論していたと話す
クレイニング:ピートが自白したから心配はいらない



クリスマス・イヴ
アーニーが茂みにある赤い実の話をした時
頭の中で繰り返されていた言葉は母が教えてくれた「ピラカンサ」という木の名前とつながる

マッジが殺された時、クレイニングは保安官に死体がピラカンサのそばにあると言った
知るわけないのになぜ?

クレイニングさんもカーキ色のシャツを着ていて、バートは急に疑いはじめ
クレイニングも異変に気付く

その夜、クレイニングが酔っ払って家に来る

クレイニング:
伯父が長いこと家に帰ってないことをアーニーから聞いた
マッジとは以前、夫婦だったが家を出た
やっと見つけて、私も引っ越してきた
いっしょにシカゴに戻ってくれと何度も頼んだが聞かなかった
あの晩、男たちとじゃれついているのを見て嫉妬で理性を失っていた
あんなことになって後悔してるんだ

バートはアーニーだけは逃がそうとして、体当たりする
闇の中に巨大な怪物が現れて、クレイニングを殴り倒す

アーニーが「王さま」と呼ぶ空想の友だちは
伯父のシャツを着て、ハロウィーンの時の狼男の仮面をつけ
自分は地球から何億光年も離れたミルサの王で、亡命中だと話す
兄弟のことをずっと見ていた視線は彼だった

王さま:
警察を呼ぶまで私がこの男を見張っていてやろう
私のことは言わないでくれ でないとまた丘の上の建物に戻されてしまう

オールド・レナが王さまを小屋にかくまっていたと分かる
王さまの代わりにレナが見張る

兄弟はフィールドラップ先生に事情を話し、保安官はクレイニングを逮捕する
保安官:ピートは他の州でもやりもしない犯罪の自白をしていたためシロになりそうだ

アーニーは王さまとオールド・レナを晩餐に招待し
2人が帰った後も伯父が帰るのを待つ

アーニーと王さまの予感は当たり、伯父が帰ってくる
ポーターでアルコール依存症の施設にいて、今後も通うことにした
チャーリー伯父:2人をずっと預かるかどうかは考えさせてほしい

バートはアーニーの勇気を見て、これから何が起きても大丈夫だと思い
自分もいろんな影におびえていたが、実際襲われた時、戦うことができたのだから大丈夫だと思う
(これってパニ障のOK体験に似てるな
 不安がなくなったから大丈夫じゃなくて、不安が来ても大丈夫と思えるようになること



訳者あとがき
「ピラニアが噛んだ」の原文は「Wild Pirate Canner」(無法な海賊缶詰業者)

デーナ・ブルッキンズ
1931年 ミズーリ州生まれ

本書の初版は評論社『児童図書館SOSシリーズ』











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もりのおくのおちゃかいへ みやこし あきこ/著 偕成社

2025-01-14 17:52:54 | 
2010年初版

なにかのきっかけで読みたい本リストにメモっていたのを借りてみた
表紙の絵に見覚えがあって、ブログ内検索しても出てこなかったけど
ポストカードで見たのかなあ?

外国人作家かと思ったら、日本人女性
縦に節の入った紙質を上手く利用して
森の木々の樹皮を鉛筆だけで表現してるのがスゴい

モノクロに光が当たって、少女の金髪、赤い帽子とスカート、手袋がビビッドで目を惹く

他の作品も気になるな


宮越暁子
1982年埼玉生まれ 武蔵野美術大学卒 東京在住


【内容抜粋メモ】
お父さんはおばあちゃんの家に雪かきに出かける
ケーキを忘れていったので、キッコちゃんは届けに行こうとして
途中で転んでしまう

父が見知らぬ家に入ったのでフシギに思っていると
父だと思っていたのはクマさんだった!

羊の子にお茶会に誘われて中に入ると、たくさんの動物がいて、ビックリしてる
「こんにちわ」とあいさつすると一斉に歓待してくれる












おばあちゃんに持って行くケーキが崩れてしまったのを見せると
みんな、自分のケーキを箱に入れてくれる









みんなで音楽を奏でながらおばあちゃんの家まで送ってくれる







おばあちゃんとお父さんが迎えてくれて、振り向くと誰もいない
おばあちゃんはケーキを喜んでくれる











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