■『少年少女昭和SF美術館 表紙でみるジュヴナイルSFの世界』(平凡社)
大橋博之/編著
『少年少女昭和ミステリ美術館 表紙でみるジュニア・ミステリの世界』(平凡社)
※「ジュヴェナイル」カテゴリー参照
上記で本書の存在を知って、早速借りてみたv
やっぱりミステリーとSFってくくりが似てる。
関わった挿絵画家、翻訳者、版元、たどった歴史も重なる部分が多いし。
ほとんど日本の作家を読まない私がハマったのは、なんといっても眉村卓さん。
本書の中にも時々取り上げられているのが嬉しい。
でも、期待していた、あの大好きな表紙デザインを手がけた木村光佑さんの表紙はなかったのが残念。
もうちょっと昭和後期まで紹介していたら、きっと入ってきたはず。
SFと言えば、映画バカな私としては、昔のSF映画のポスター画に萌える
本書のSF小説の表紙はそれに通じるものが大きいので、同じ感覚で観て楽しめた。
それにしても、昔から宇宙人やら、ロケットだけじゃなく、人工衛星、海底都市などなどヒトの想像力は果てしない。
SF小説が描く未来は、ヒトが自由に描く想像力で、ヒトが想像できるものは、必ず現実化すると私は信じている。
よく描かれるチューブの中を移動するクルマなんかより、自宅でなんでも出来ちゃうほうがいいなあ。
なんで、未来都市っていうと、あのチューブ型なんだろうね? 効率悪いと思うんだけど
テレポーテーションとか、ホログラムとか、テレパシーとかのほうがより未来的
【内容抜粋メモ】
[まえがき~大橋博之]
ジュヴナイルSFを収集し始めたのは2000年の春から。いわゆる大人買い。
古本屋巡りが続いて、1999年にオークションサイトが誕生し、古本屋にないものをかなり集めた。
ただ読むだけなら文庫もある。
それでもオリジナルにこだわるのは、やはり当時の本の表紙や本文の挿絵が魅力的だからにほかならない(そうなんだよね~
再刊されるたび時代に合わせて変えられてしまうが、自分が初めて図書館や書店で手にしたヴァージョンこそ一番愛着があるものなのだ(そうそう
本書は、昭和30~60年代にかけて刊行されたジュヴナイルSFシリーズを年代順に配列した。
********昭和20年代、「科学冒険小説」の時代~敗戦後の子どもに希望を与えたのはカラフルな表紙のジュヴナイルSFだった
「日本SFの父」海野十三は、戦時中は国威発揚のための軍事小説も手がけたが、平和主義者だったことがうかがえる。
昭和24年、結核のため51歳で逝去。
(いろんな姿の宇宙人やUFOが出てくるのがたまらない
戦前、少年読者らを熱狂させたのは南洋一郎、山中峯太郎。
山中は、日本の007ともいうべき超人的軍事スパイ本郷義昭の生みの親。
[特撮映像とSF黎明期の作家~野村宏平]
昭和20~30年代、SF少年を熱狂させたのが、映画やテレビの空想特撮作品。香山滋の『ゴジラ』など。
次いで東宝の怪獣映画に携わったのは、黒沼健。『空の大怪獣ラドン』など。
純文学畑では、中村真一郎、福永武彦、堀田善衛ら。
南沢十七は10冊近い長編を刊行し、人気を博した。『液体人間』など。
[怪奇雨男に魂を奪われたあのころ~瀬名秀明]
レイ・ブラッドベリの描くイリノイ州の田舎町が、日本の私たちにさえ懐かしいのと同様、
図書館の記憶は時空を超えて永遠に生きる。
黒い装幀の『世界の名作怪奇館』。片山健による『かがみ地獄』(江戸川乱歩)の挿絵は強烈で決して忘れられない。
山藤章二挿画の『恐怖の地下牢』(ポー)。
創元推理文庫のエラリー・クイーンもすべて読んだ。
『昭和SF美術館』なのにミステリーの話ばかりしてる?
いや、あの頃、ふしぎな世界に飛び込む時、ジャンルの名前は不要だった。
眉村卓『ねじれた町』(!)を読んで、柳柊二の鬼の生首の挿画に感電し、いま私はSFを書いている。
『ねじれた町』 眉村卓/著(角川文庫)
私にとっての眉村卓さんの装幀は断然これだけど、本書になかったのが残念。
[SFは作って遊ぶものだった~大橋博之]
プラモデルはオモチャのナンバー1だ。
プラモデルのパッケージ(ボックスアート)を手がけた挿絵画家は多い。
しかし、それが誰なのかを見出すのは困難。クレジットなどないのが当然。
********昭和30年に始まるジュヴナイルSFの誕生から発展
●少年少女科学小説選集(全21巻)石泉社 昭和30~31年
中根良夫『火星号不時着』、トム・スイフトを主役としたシリーズなど。
どの作品にも、人類愛の精神、宇宙愛の精神、高い理想が盛り込まれている。
●少年少女世界科学冒険全集(全35巻)講談社 昭和31~33年
イカ大王さまとの遭遇時と同じ状況じゃん!w
ハイライン著『宇宙戦争』など。
表紙と裏表紙は1枚絵で、開いて見た時の迫力は圧巻。
剣竜:中生代ジュラ紀に栄えた恐竜の一種。背中に直立した骨板をもち,四肢は太く短い。草食性。ステゴサウルスがよく知られる。
◆挿絵画家列伝・・・小松崎茂
プラモデル函絵の巨匠でもある。
洋画が好きだったが、日本画のほうがお金になると言われて、挿絵を学んだ。
『白狐綺談』の挿絵でデビュー。国防科学雑誌『機械化』に未来の新兵器を描いたのがSF画の原点といわれる。
『地球SOS』が大ヒットし「絵物語」のブームとなる。
[石泉社と講談社~牧眞司]
日本の現代SF史は、『ハヤカワ・ファンタジイ』(『ハヤカワ・SF・シリーズ』『SFマガジン』)から説くのが習わしになっている。
'60年前後は「SFと西部劇に手を出すと必ず潰れる」というジンクスがあった。
ぼくがとくに重要と考えるのは、石泉社と講談社の児童向けSF叢書だ。
当時はその市場がなかった。お小遣いで本を買える子どもは少なく、貸本屋や図書館を利用するのが通常。
石泉社には元ネタがあった。米国の『ウインストン・サイエンス・フィクション』。
米国の児童SF史においてハイラインの登場は一大エポックで、SF黄金期の御三家だった。ほかは、アシモフ、クラーク。
一方、講談社は、さまざまな国のSFを集めた。
●名作冒険全集(全45巻)偕成社 昭和32~35年
大佛次郎ら。
●少年少女宇宙科学冒険全集(全24巻)岩崎書店 昭和35~38年
表紙は主に依光隆、武部本一郎が担当。
◆挿絵画家列伝・・・武部本一郎
独学で絵を学ぶ。紙芝居やマンガも手がけた。
●少年少女世界科学名作全集(全20巻)講談社 昭和36~37年
●世界推理・科学名作全集(全24巻)偕成社 昭和37~41年
●ベリヤーエフ少年空想科学小説選集(全6巻)岩崎書店 昭和38年
ソビエトのSF作家、アレクサンドル・ベリャーエフの個人全集。
●世界の科学名作(全15巻)講談社 昭和40年
ジュヴナイルSFシリーズには科学解説がつくのが定番。
◆挿絵画家列伝・・・依光隆
どこか日本人離れして見える。日本人が思い描く外国人の美少年。
●SF世界の名作(全26巻)岩崎書店 昭和41~42年
世界初のSF専門誌『アメージング・ストーリーズ』の創刊者、ヒューゴー・ガーンズバックが原作の『27世紀の発明王』など。
初めてシリーズ名に「SF」の文字がついた。
ブックデザインに鈴木康行、真鍋博、和田誠など、イラストレータという呼び名がふさわしいアーティストに函絵・挿絵を依頼。
◆挿絵画家列伝・・・真鍋博
昭和31年『ユリイカ』の表紙、本文のカットを担当。色合いがメタリックで、SF的だった。
●ジュニアSF(全10巻)盛光社 昭和42年
日本SF作家のみで構成された。後にNHKでドラマ化され有名となった。
◆挿絵画家列伝・・・鈴木義治
阿部光などの別名も使った(別名使ってる人多いね、画家も作家も)。淡い色使いが特徴。
[私とジュヴナイル~眉村卓]
私たちのようなSF作家には、ろくに仕事がなかった。
学研の「中二コース」に「なぞの転校生」を書いたのは1965年。
自由に、SFをあまり知らないであろう中学生相手に書けるとなると頑張らなければならない。
最初のタイトルは「白い旋風」で、編集部から即座にダメが出た。
「そんな文芸的なの、子どもは食いつきませんよ。具体的でわかり易いものに」
その後、私は、ほかがそうだったように、学習誌で何本も書いた。
SFジュヴナイルが若い人たちの評判を呼んだのは、やはりNHKの少年ドラマシリーズがきっかけだろう。
●SF名作シリーズ(全28巻)偕成社 昭和42~47年
金森達、伊藤展安、中村英夫らが腕を競う。
「もうすぐ宇宙時代を迎えようとする皆さんが、いまこの種の名作に接することは、
未来の世界へ目を開くとともに、深い感動を与えられるでしょう」(日下実男)
◆挿絵画家列伝・・・金森達
昭和44年、テレビドラマ『宇宙大作戦』が放送開始。
金森がカバーと挿絵を担当。
●世界のこどもエスエフ(全16巻)偕成社 昭和43~45年
●少年少女21世紀のSF(全10巻)金の星社 昭和43~44年
●創作子どもSF全集(全20巻)国土社 昭和44~46年
佐野美津男、小沢正の子ども向けとは思えない衝撃的な物語がトラウマになっているという読者も多く、平成18年に復刻された。
[星新一の『黒い光』とジュヴナイル~大橋博之]
名作『ボッコ』ちゃんを発表。ショートショートの神様。
(星新一さんの単行本で“ショートショート”て言葉を知った気がする
大人より先に、『中学生の友』『高校時代』などの学習雑誌からSFに興味を持ったのは子どもたちだった。
星のショートショートの特徴は、時事風俗や固有名詞を避け、作品が古びることを恐れたという。
星のことば:
科学の進歩は驚くべき早さです。『月の裏側基地第1号』は、まだ月の基地などは当分先のことと思っていましたが、
現在では今にも実現しそうな様子です。
時の流れは、私たちをあっという間に未来へと運んでしまいます。
私たちは、昨日の夢を今日の現実とし、今日の現実の上に明日への夢を育てつづけなければなりません。
それによって、人類は限りなく進んでいくのです。
[小松左京の『空中都市008』とジュヴナイルSF~大橋博之]
「はじめに」から:
町はキレイになり、すばらしいビルが建ち、自動車に轢かれることもなく、
工場の煙や、排気ガスで、窓が汚れるようなこともないでしょう。
21世紀だというのに、残念ながらまだそんな世界は実現化されてはいない。
小松は、自分の子どもにお話を聞かせていた経験から、読み聞かせることができる朗読型にした。
『空中都市008』のタイトルは、『ひょっこりひょうたん島』後番組のSF人形劇としてテレビ化される際につけられた。
小松のことば:
もし君たちが大人になっても、まだそんな世界ができていなかったら、君たちでつくってください。
その時、お腹ん中で“ちぇっ、昔の大人ってだらしなかったんだあ”と思ってもかまいません。
●サンヤングシリーズ(全37巻)朝日ソノラマ 昭和44~47年
テレビとマンガ世代を読者とした新感覚のシリーズ。
◆挿絵画家列伝・・・中山正美
大人向けも、子ども向けも、描き方はあまり変わらない。
ラフなタッチが特徴だが、デッサンの確かさ、綿密な考証の上に成り立っている。
●ジュニア版・世界のSF(全20巻)集英社 昭和44~45年
◆挿絵画家列伝・・・柳柊二
「挿絵を描けば定収入になる」と勧められ、双葉社でデビュー。
エドガー・R・バロウズ『地底世界シリーズ』、ロバート・E・ハワード『コナン・シリーズ』などが代表作。
柳の絵はひと言で言えば“怖い”。
●少年少女SFアポロシリーズ(全8巻)岩崎書店 昭和44~45年
アポロ11号によって、人類が初めて月面に降り立ったのは昭和44年7月20日。
●毎日新聞シリーズ(全16巻)毎日新聞社 昭和44~45年
『怪物ジオラ』「相次ぐ原水爆実験に、地球は、陸も、海も、空も狂いはじめてきた」
「子どもと文学の出逢いは、いまや“SF小説から”だと思います」(教育評論家・阿部進)
[なつかしい人たち~金森達]
当時はイラストレーションという言葉すら珍しかった。
日本作家では、小松左京さん、筒井康隆さん、眉村卓さん、豊田有恒さん、光瀬龍さんらの挿絵を描いた。
SFが映画、小説、読み物、マンガの世界に満ち溢れる時代がやってきた。
私はそけいヘルニアを抱えた元気のない虚弱児だった。
軍国時代の国民学校には到底なじめない違和感だけの生活でした。
先人の画家の皆さんは、最高のお手本で、先生だった。
何かが描きたい。何でも描きたい。
そう思えば思うほど時間が足りません。
(病を得るのにも、いろんな理由があって、絵を描く時間を与えたとも言える
[アポロ11号と万国博とジュヴナイルSF~大橋博之]
1970年、日本で最初の万国博覧会が「人類の進歩と調和」をテーマに開催された。
中でも最大の注目の的は、アポロ11号が持ち帰った「月の石」。ひと目見ようと長蛇の列ができた。
高度経済成長を背景にジュヴナイルSFは加速した。
“果てしない先の未来は明るい”と、そう誰もが信じていた。
********ジュヴナイルSFの時代~NHK『少年ドラマシリーズ』
●SF少年文庫(全30巻)岩崎書店 昭和45~48年
◆挿絵画家列伝・・・岩淵慶造
いくらポスターをデザインしても、商業デザインでは名前が残らない。
昭和42年、『SFマガジン』でレイ・ブラッドベリ『火と霜』、眉村卓『EXPO87』を手がける。
●少年少女SF文学全集(全20巻)あかね書房 昭和46~48年
“ジュヴナイルSFの金字塔”といっても過言ではないシリーズ。
星新一「想像の世界を楽しむことは、人間だけが持つ能力である」
ハイブロー=教養や学識のある人。知識人。また、知的で趣味がよく高級であるさま。
◆挿絵画家列伝・・・楢喜八
イラストを使う出版社は増えたが、イラストレーターも増えたため、ひとつ抜けないと使ってもらえない。
楢は、ブラック・ユーモアが特徴だった。
[僕たちのSF入門~大橋博之]
昭和46年刊行、筒井康隆編『SF教室』(ポプラ社)、『未来の世界 SFの世界』(少年画報社)ほか。
●SFシリーズ(全10巻)ポプラ社 昭和46~47年
●SFベストセラーズ(全26巻)鶴書房 昭和47頃~54年
『時をかける少女』がNHKでテレビドラマ化された。
◆挿絵画家列伝・・・加藤直之
千代田デザイナー学院に入学。在学中にSFセントラル・アートに入会(いろんな学校もできたんだね
『ひらけ! ポンキッキ』のキャラクターを描いた/驚
テレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』のメカニックデザインを担当。
加藤の描くメカはカッコイイ。立体的に、細部までのこだわりがSFアートの第一人者と称される所以だろう。
[少年ドラマシリーズとジュヴナイルSF~大橋博之]
城達也のナレーションで始まる『タイム・トラベラー』は昭和47年から全6回放映された。
●SFバックス(全3巻)すばる書房盛光社 昭和49年
(うん、たしかに怖い・・・
●SF恐怖シリーズ(全6巻)秋田書店 昭和49~50年
●SFベストセラーズ(全8巻)鶴書房 昭和50~51年
「はじめに~福島正美」
科学・技術の時代に生きている僕たちは、その助けなしには生活していけない。
だからこそ、それをコントロールしなければ、逆に僕たちを縛りつけ、奴隷にしないともかぎらない。
●SFこども図書館(全26巻)岩崎書店 昭和51年
『戦うフューチャーメン』は、後にNHKでアニメ放送されたことから『キャプテン・フューチャー』に再改題された。
◆挿絵画家列伝・・・横尾忠則
通信教育で挿絵を学び、その画業により数々の賞を受賞し、日本を代表するイラストレーター、画家としての地位を不動のものとした。
●秋元文庫(秋元書房)・ソノラマ文庫(朝日ソノラマ)
●SFシリーズ(全4巻)インタナル出版部 昭和52年
[懐かしい未来へ~池澤春菜]
あらゆる時間を使って、呼吸、食事、睡眠と読書が同じくらいの重要度だったかもしれない。
本を読んでいる間の完璧な幸せ、充足感を、他の何に換えられましょうや。
ハヤカワ、サンリオ、創元の御三家!
ただ、悲しいかな、SFは現実に追いつかれつつあります。
21世紀になっても、車は空を飛んでいないし、人々の食事はカプセルじゃないし、異星人は姿を現さなかった。
誰も知らない、誰も見たことがない、は、もうほとんど残されていない。
●少年少女21世紀のSF(全10巻)金の星社 昭和52~55年
異装版
●SF傑作短編集(全16巻)三省堂 昭和52年
●少年SF・ミステリー文庫(全20巻)国土社 昭和57~58年
●ポプラ社のSF冒険文庫(全10巻)ポプラ社 昭和59~60年
●SFロマン文庫(全30巻)岩崎書店 昭和61年
◆挿絵画家列伝・・・斎藤和明
ペン画=ペンでかいた絵画。
科学美術家を目指す。原画は発色のよい色が多く使われているが、印刷では再現できていないのが残念。
●宇宙島の少年(全5巻)誠文堂新光社 昭和59年
●ジュニアSF選(全5巻・別館1)草土文化 昭和62年
********ヴェルヌとSF童話の世界
●ベルヌ冒険名作選集(全12巻)岩崎書店 昭和34~35年
●少年少女ベルヌ科学名作全集(全12巻)学習研究社 昭和39年
[ヴェルヌの世界~大橋博之]
H.G.ウェルズとともにSFの父と呼ばれている。
帆船に乗ったという有名なエピソード、「誰かに想像できることは、別の誰かによって実現可能である」という名言は、
ヴェルヌの姪、マグリット・アロット・ド・ラ・フュイの創作ではないかと考えられている(そうなの!?
彼女は印象深いエピソードを書く名手と言われていた。
ヴェルヌは生涯で約60作を残した(全部読みたいなあ・・・
翻訳権の制限を受けないヴェルヌ作品は、自由に出版できたため、児童図書出版に大きなメリットだった。
そのためヴェルヌだけを集めたシリーズもいくつか刊行された。
(それも子どもたちの身近に極上のものを届けて、たくさん現実化させたキッカケを作ったんだから、やっぱり未来的だなあ!
●ベルヌ名作全集(全15巻)偕成社 昭和43~44年
「ベルヌを読んだ科学界権威者のことば」として、4人の科学者を紹介している。
人工衛星、ロケット理論に取り組んだK.E.ツィオルコフスキー、
航空機関係の仕事につこうと決心したシャルル・リシェ、フォン・ブラウン、糸川英夫氏(!
「20世紀科学の偉大な預言者ベルヌ」がキャッチフレーズ。
●少年少女ベルヌ科学名作(全12巻)学習研究社 昭和44年
「ベルヌは、未来を漠然と夢見たのではなく、ありありと予測した。
どの作品も、温かい人間愛、強い正義感に支えられている」(文学博士・波多野完治)
[ボーイズ&ガールズの必須アイテム~大橋博之]
「象が踏んでも壊れない、アーム筆入」が発売されたのは昭和40年。
今以上にキャラクターグッズが大ブームだった。
キャラクターの版権は基本、ワンアイテムに1社としか契約できない。
そのため、いわゆる「パチモノ」ができた。
●S・Fどうわ(全9巻)盛光社 昭和42年
●SFえどうわ(全20巻)岩崎書店 昭和43~45年
やなせさんも!
●創作SFえほん(全12巻)盛光社 昭和44年
SFを絵本にするという奇抜な発想で刊行されたシリーズ。
「団地のように規格化された生活の中にいて、似たようなテレビ番組を見ていると、夢そのものが規格化されてきます」(古田足日)
[SF童話の世界~大橋博之]
福島正美の名を冠した文藝賞「福島正美記念SF童話賞」がある。第1回は昭和58年。
大賞作は単行本として出版されることもあり、児童文学作家を目指す新人の登竜門の1つとなっている。
●こどもSF文庫(全5巻)フレーベル館 昭和46~47年
●あたらしいSF童話(全20巻)岩崎書店 昭和58~62年
お、ますむらさん!
********ジュヴナイルSFにおけるイラストの魅力~大橋博之
SF小説の表紙などに描かれたイラストのことを「SFアート」と呼ぶ。
文芸評論家・尾崎秀樹は『さしえの50年』で、「平仮名絵入」創刊(明治8年)、
この“絵入”が挿絵を意味していた、と書いている。
明治になって、「木版印刷」から「洋式活版」が導入され、多くの新聞、雑誌が刊行された。
大量に配布されることを前提とした出版美術といえる。
その頃は、江戸時代からの浮世絵絵師が手がけた/驚
挿絵の黄金期は、大正~昭和初期。
大正ロマンを代表する竹久夢二、中原淳一ら。
挿絵画家は花形商売で、高額所得者だった/驚
伊藤彦造、梁川剛一らは「密画」といわれる緻密でリアルな絵を描いて、盛り返した。
SFアートの源流を強引に定めるなら、やはり小松崎茂ではないだろうか。
渡されたB29の写真を見て、思わず「いい飛行機だなあ」と誉めて、将官から怒られたエピソードがある。
『SFマガジン』の初代編集長・福島正美は、表紙の絵に頭を悩ませた。
表紙は売れ行きを左右すると同時に、雑誌の持つ世界を決定付ける。
福島のイメージにあったのはフランスの現代画家ジャン・カルズー。
カルズーのもつ荒廃的な雰囲気を表現するため、新人画家・中島靖侃を起用。
昭和35年頃からは、アメリカ文化の影響を受けた系譜が加わる。
印刷技術の向上とともに広告を中心に広がり、グラフィックデザインの一部として不可欠要素となる。
武部本一郎の登場は大事件だった。
『創元SF文庫』『ハヤカワ文庫SF』は、本格的なSFアートの幕開けだった。
現在のSFアートの方向性を決定付けたのは、加藤直之をおいて他にはない。
ドラスティック=やり方が抜本的で、思い切ったものであるさま
アブストラクト=抽象的な
********ジュヴナイルSF年表
1954 映画『ゴジラ』公開
1966 TVシリーズ『ウルトラQ』放送開始
1972 TVシリーズ『タイム・トラベラー』放送開始
1974 ユリ・ゲラー来日、超能力ブーム
1978 映画『未知との遭遇』『スター・ウォーズ』日本公開
1981 映画『ねらわれた学園』公開
1983 映画『時をかける少女』公開
1985 科学万博・つくば’85開催(家族で行った!
大橋博之/編著
『少年少女昭和ミステリ美術館 表紙でみるジュニア・ミステリの世界』(平凡社)
※「ジュヴェナイル」カテゴリー参照
上記で本書の存在を知って、早速借りてみたv
やっぱりミステリーとSFってくくりが似てる。
関わった挿絵画家、翻訳者、版元、たどった歴史も重なる部分が多いし。
ほとんど日本の作家を読まない私がハマったのは、なんといっても眉村卓さん。
本書の中にも時々取り上げられているのが嬉しい。
でも、期待していた、あの大好きな表紙デザインを手がけた木村光佑さんの表紙はなかったのが残念。
もうちょっと昭和後期まで紹介していたら、きっと入ってきたはず。
SFと言えば、映画バカな私としては、昔のSF映画のポスター画に萌える
本書のSF小説の表紙はそれに通じるものが大きいので、同じ感覚で観て楽しめた。
それにしても、昔から宇宙人やら、ロケットだけじゃなく、人工衛星、海底都市などなどヒトの想像力は果てしない。
SF小説が描く未来は、ヒトが自由に描く想像力で、ヒトが想像できるものは、必ず現実化すると私は信じている。
よく描かれるチューブの中を移動するクルマなんかより、自宅でなんでも出来ちゃうほうがいいなあ。
なんで、未来都市っていうと、あのチューブ型なんだろうね? 効率悪いと思うんだけど
テレポーテーションとか、ホログラムとか、テレパシーとかのほうがより未来的
【内容抜粋メモ】
[まえがき~大橋博之]
ジュヴナイルSFを収集し始めたのは2000年の春から。いわゆる大人買い。
古本屋巡りが続いて、1999年にオークションサイトが誕生し、古本屋にないものをかなり集めた。
ただ読むだけなら文庫もある。
それでもオリジナルにこだわるのは、やはり当時の本の表紙や本文の挿絵が魅力的だからにほかならない(そうなんだよね~
再刊されるたび時代に合わせて変えられてしまうが、自分が初めて図書館や書店で手にしたヴァージョンこそ一番愛着があるものなのだ(そうそう
本書は、昭和30~60年代にかけて刊行されたジュヴナイルSFシリーズを年代順に配列した。
********昭和20年代、「科学冒険小説」の時代~敗戦後の子どもに希望を与えたのはカラフルな表紙のジュヴナイルSFだった
「日本SFの父」海野十三は、戦時中は国威発揚のための軍事小説も手がけたが、平和主義者だったことがうかがえる。
昭和24年、結核のため51歳で逝去。
(いろんな姿の宇宙人やUFOが出てくるのがたまらない
戦前、少年読者らを熱狂させたのは南洋一郎、山中峯太郎。
山中は、日本の007ともいうべき超人的軍事スパイ本郷義昭の生みの親。
[特撮映像とSF黎明期の作家~野村宏平]
昭和20~30年代、SF少年を熱狂させたのが、映画やテレビの空想特撮作品。香山滋の『ゴジラ』など。
次いで東宝の怪獣映画に携わったのは、黒沼健。『空の大怪獣ラドン』など。
純文学畑では、中村真一郎、福永武彦、堀田善衛ら。
南沢十七は10冊近い長編を刊行し、人気を博した。『液体人間』など。
[怪奇雨男に魂を奪われたあのころ~瀬名秀明]
レイ・ブラッドベリの描くイリノイ州の田舎町が、日本の私たちにさえ懐かしいのと同様、
図書館の記憶は時空を超えて永遠に生きる。
黒い装幀の『世界の名作怪奇館』。片山健による『かがみ地獄』(江戸川乱歩)の挿絵は強烈で決して忘れられない。
山藤章二挿画の『恐怖の地下牢』(ポー)。
創元推理文庫のエラリー・クイーンもすべて読んだ。
『昭和SF美術館』なのにミステリーの話ばかりしてる?
いや、あの頃、ふしぎな世界に飛び込む時、ジャンルの名前は不要だった。
眉村卓『ねじれた町』(!)を読んで、柳柊二の鬼の生首の挿画に感電し、いま私はSFを書いている。
『ねじれた町』 眉村卓/著(角川文庫)
私にとっての眉村卓さんの装幀は断然これだけど、本書になかったのが残念。
[SFは作って遊ぶものだった~大橋博之]
プラモデルはオモチャのナンバー1だ。
プラモデルのパッケージ(ボックスアート)を手がけた挿絵画家は多い。
しかし、それが誰なのかを見出すのは困難。クレジットなどないのが当然。
********昭和30年に始まるジュヴナイルSFの誕生から発展
●少年少女科学小説選集(全21巻)石泉社 昭和30~31年
中根良夫『火星号不時着』、トム・スイフトを主役としたシリーズなど。
どの作品にも、人類愛の精神、宇宙愛の精神、高い理想が盛り込まれている。
●少年少女世界科学冒険全集(全35巻)講談社 昭和31~33年
イカ大王さまとの遭遇時と同じ状況じゃん!w
ハイライン著『宇宙戦争』など。
表紙と裏表紙は1枚絵で、開いて見た時の迫力は圧巻。
剣竜:中生代ジュラ紀に栄えた恐竜の一種。背中に直立した骨板をもち,四肢は太く短い。草食性。ステゴサウルスがよく知られる。
◆挿絵画家列伝・・・小松崎茂
プラモデル函絵の巨匠でもある。
洋画が好きだったが、日本画のほうがお金になると言われて、挿絵を学んだ。
『白狐綺談』の挿絵でデビュー。国防科学雑誌『機械化』に未来の新兵器を描いたのがSF画の原点といわれる。
『地球SOS』が大ヒットし「絵物語」のブームとなる。
[石泉社と講談社~牧眞司]
日本の現代SF史は、『ハヤカワ・ファンタジイ』(『ハヤカワ・SF・シリーズ』『SFマガジン』)から説くのが習わしになっている。
'60年前後は「SFと西部劇に手を出すと必ず潰れる」というジンクスがあった。
ぼくがとくに重要と考えるのは、石泉社と講談社の児童向けSF叢書だ。
当時はその市場がなかった。お小遣いで本を買える子どもは少なく、貸本屋や図書館を利用するのが通常。
石泉社には元ネタがあった。米国の『ウインストン・サイエンス・フィクション』。
米国の児童SF史においてハイラインの登場は一大エポックで、SF黄金期の御三家だった。ほかは、アシモフ、クラーク。
一方、講談社は、さまざまな国のSFを集めた。
●名作冒険全集(全45巻)偕成社 昭和32~35年
大佛次郎ら。
●少年少女宇宙科学冒険全集(全24巻)岩崎書店 昭和35~38年
表紙は主に依光隆、武部本一郎が担当。
◆挿絵画家列伝・・・武部本一郎
独学で絵を学ぶ。紙芝居やマンガも手がけた。
●少年少女世界科学名作全集(全20巻)講談社 昭和36~37年
●世界推理・科学名作全集(全24巻)偕成社 昭和37~41年
●ベリヤーエフ少年空想科学小説選集(全6巻)岩崎書店 昭和38年
ソビエトのSF作家、アレクサンドル・ベリャーエフの個人全集。
●世界の科学名作(全15巻)講談社 昭和40年
ジュヴナイルSFシリーズには科学解説がつくのが定番。
◆挿絵画家列伝・・・依光隆
どこか日本人離れして見える。日本人が思い描く外国人の美少年。
●SF世界の名作(全26巻)岩崎書店 昭和41~42年
世界初のSF専門誌『アメージング・ストーリーズ』の創刊者、ヒューゴー・ガーンズバックが原作の『27世紀の発明王』など。
初めてシリーズ名に「SF」の文字がついた。
ブックデザインに鈴木康行、真鍋博、和田誠など、イラストレータという呼び名がふさわしいアーティストに函絵・挿絵を依頼。
◆挿絵画家列伝・・・真鍋博
昭和31年『ユリイカ』の表紙、本文のカットを担当。色合いがメタリックで、SF的だった。
●ジュニアSF(全10巻)盛光社 昭和42年
日本SF作家のみで構成された。後にNHKでドラマ化され有名となった。
◆挿絵画家列伝・・・鈴木義治
阿部光などの別名も使った(別名使ってる人多いね、画家も作家も)。淡い色使いが特徴。
[私とジュヴナイル~眉村卓]
私たちのようなSF作家には、ろくに仕事がなかった。
学研の「中二コース」に「なぞの転校生」を書いたのは1965年。
自由に、SFをあまり知らないであろう中学生相手に書けるとなると頑張らなければならない。
最初のタイトルは「白い旋風」で、編集部から即座にダメが出た。
「そんな文芸的なの、子どもは食いつきませんよ。具体的でわかり易いものに」
その後、私は、ほかがそうだったように、学習誌で何本も書いた。
SFジュヴナイルが若い人たちの評判を呼んだのは、やはりNHKの少年ドラマシリーズがきっかけだろう。
●SF名作シリーズ(全28巻)偕成社 昭和42~47年
金森達、伊藤展安、中村英夫らが腕を競う。
「もうすぐ宇宙時代を迎えようとする皆さんが、いまこの種の名作に接することは、
未来の世界へ目を開くとともに、深い感動を与えられるでしょう」(日下実男)
◆挿絵画家列伝・・・金森達
昭和44年、テレビドラマ『宇宙大作戦』が放送開始。
金森がカバーと挿絵を担当。
●世界のこどもエスエフ(全16巻)偕成社 昭和43~45年
●少年少女21世紀のSF(全10巻)金の星社 昭和43~44年
●創作子どもSF全集(全20巻)国土社 昭和44~46年
佐野美津男、小沢正の子ども向けとは思えない衝撃的な物語がトラウマになっているという読者も多く、平成18年に復刻された。
[星新一の『黒い光』とジュヴナイル~大橋博之]
名作『ボッコ』ちゃんを発表。ショートショートの神様。
(星新一さんの単行本で“ショートショート”て言葉を知った気がする
大人より先に、『中学生の友』『高校時代』などの学習雑誌からSFに興味を持ったのは子どもたちだった。
星のショートショートの特徴は、時事風俗や固有名詞を避け、作品が古びることを恐れたという。
星のことば:
科学の進歩は驚くべき早さです。『月の裏側基地第1号』は、まだ月の基地などは当分先のことと思っていましたが、
現在では今にも実現しそうな様子です。
時の流れは、私たちをあっという間に未来へと運んでしまいます。
私たちは、昨日の夢を今日の現実とし、今日の現実の上に明日への夢を育てつづけなければなりません。
それによって、人類は限りなく進んでいくのです。
[小松左京の『空中都市008』とジュヴナイルSF~大橋博之]
「はじめに」から:
町はキレイになり、すばらしいビルが建ち、自動車に轢かれることもなく、
工場の煙や、排気ガスで、窓が汚れるようなこともないでしょう。
21世紀だというのに、残念ながらまだそんな世界は実現化されてはいない。
小松は、自分の子どもにお話を聞かせていた経験から、読み聞かせることができる朗読型にした。
『空中都市008』のタイトルは、『ひょっこりひょうたん島』後番組のSF人形劇としてテレビ化される際につけられた。
小松のことば:
もし君たちが大人になっても、まだそんな世界ができていなかったら、君たちでつくってください。
その時、お腹ん中で“ちぇっ、昔の大人ってだらしなかったんだあ”と思ってもかまいません。
●サンヤングシリーズ(全37巻)朝日ソノラマ 昭和44~47年
テレビとマンガ世代を読者とした新感覚のシリーズ。
◆挿絵画家列伝・・・中山正美
大人向けも、子ども向けも、描き方はあまり変わらない。
ラフなタッチが特徴だが、デッサンの確かさ、綿密な考証の上に成り立っている。
●ジュニア版・世界のSF(全20巻)集英社 昭和44~45年
◆挿絵画家列伝・・・柳柊二
「挿絵を描けば定収入になる」と勧められ、双葉社でデビュー。
エドガー・R・バロウズ『地底世界シリーズ』、ロバート・E・ハワード『コナン・シリーズ』などが代表作。
柳の絵はひと言で言えば“怖い”。
●少年少女SFアポロシリーズ(全8巻)岩崎書店 昭和44~45年
アポロ11号によって、人類が初めて月面に降り立ったのは昭和44年7月20日。
●毎日新聞シリーズ(全16巻)毎日新聞社 昭和44~45年
『怪物ジオラ』「相次ぐ原水爆実験に、地球は、陸も、海も、空も狂いはじめてきた」
「子どもと文学の出逢いは、いまや“SF小説から”だと思います」(教育評論家・阿部進)
[なつかしい人たち~金森達]
当時はイラストレーションという言葉すら珍しかった。
日本作家では、小松左京さん、筒井康隆さん、眉村卓さん、豊田有恒さん、光瀬龍さんらの挿絵を描いた。
SFが映画、小説、読み物、マンガの世界に満ち溢れる時代がやってきた。
私はそけいヘルニアを抱えた元気のない虚弱児だった。
軍国時代の国民学校には到底なじめない違和感だけの生活でした。
先人の画家の皆さんは、最高のお手本で、先生だった。
何かが描きたい。何でも描きたい。
そう思えば思うほど時間が足りません。
(病を得るのにも、いろんな理由があって、絵を描く時間を与えたとも言える
[アポロ11号と万国博とジュヴナイルSF~大橋博之]
1970年、日本で最初の万国博覧会が「人類の進歩と調和」をテーマに開催された。
中でも最大の注目の的は、アポロ11号が持ち帰った「月の石」。ひと目見ようと長蛇の列ができた。
高度経済成長を背景にジュヴナイルSFは加速した。
“果てしない先の未来は明るい”と、そう誰もが信じていた。
********ジュヴナイルSFの時代~NHK『少年ドラマシリーズ』
●SF少年文庫(全30巻)岩崎書店 昭和45~48年
◆挿絵画家列伝・・・岩淵慶造
いくらポスターをデザインしても、商業デザインでは名前が残らない。
昭和42年、『SFマガジン』でレイ・ブラッドベリ『火と霜』、眉村卓『EXPO87』を手がける。
●少年少女SF文学全集(全20巻)あかね書房 昭和46~48年
“ジュヴナイルSFの金字塔”といっても過言ではないシリーズ。
星新一「想像の世界を楽しむことは、人間だけが持つ能力である」
ハイブロー=教養や学識のある人。知識人。また、知的で趣味がよく高級であるさま。
◆挿絵画家列伝・・・楢喜八
イラストを使う出版社は増えたが、イラストレーターも増えたため、ひとつ抜けないと使ってもらえない。
楢は、ブラック・ユーモアが特徴だった。
[僕たちのSF入門~大橋博之]
昭和46年刊行、筒井康隆編『SF教室』(ポプラ社)、『未来の世界 SFの世界』(少年画報社)ほか。
●SFシリーズ(全10巻)ポプラ社 昭和46~47年
●SFベストセラーズ(全26巻)鶴書房 昭和47頃~54年
『時をかける少女』がNHKでテレビドラマ化された。
◆挿絵画家列伝・・・加藤直之
千代田デザイナー学院に入学。在学中にSFセントラル・アートに入会(いろんな学校もできたんだね
『ひらけ! ポンキッキ』のキャラクターを描いた/驚
テレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』のメカニックデザインを担当。
加藤の描くメカはカッコイイ。立体的に、細部までのこだわりがSFアートの第一人者と称される所以だろう。
[少年ドラマシリーズとジュヴナイルSF~大橋博之]
城達也のナレーションで始まる『タイム・トラベラー』は昭和47年から全6回放映された。
●SFバックス(全3巻)すばる書房盛光社 昭和49年
(うん、たしかに怖い・・・
●SF恐怖シリーズ(全6巻)秋田書店 昭和49~50年
●SFベストセラーズ(全8巻)鶴書房 昭和50~51年
「はじめに~福島正美」
科学・技術の時代に生きている僕たちは、その助けなしには生活していけない。
だからこそ、それをコントロールしなければ、逆に僕たちを縛りつけ、奴隷にしないともかぎらない。
●SFこども図書館(全26巻)岩崎書店 昭和51年
『戦うフューチャーメン』は、後にNHKでアニメ放送されたことから『キャプテン・フューチャー』に再改題された。
◆挿絵画家列伝・・・横尾忠則
通信教育で挿絵を学び、その画業により数々の賞を受賞し、日本を代表するイラストレーター、画家としての地位を不動のものとした。
●秋元文庫(秋元書房)・ソノラマ文庫(朝日ソノラマ)
●SFシリーズ(全4巻)インタナル出版部 昭和52年
[懐かしい未来へ~池澤春菜]
あらゆる時間を使って、呼吸、食事、睡眠と読書が同じくらいの重要度だったかもしれない。
本を読んでいる間の完璧な幸せ、充足感を、他の何に換えられましょうや。
ハヤカワ、サンリオ、創元の御三家!
ただ、悲しいかな、SFは現実に追いつかれつつあります。
21世紀になっても、車は空を飛んでいないし、人々の食事はカプセルじゃないし、異星人は姿を現さなかった。
誰も知らない、誰も見たことがない、は、もうほとんど残されていない。
●少年少女21世紀のSF(全10巻)金の星社 昭和52~55年
異装版
●SF傑作短編集(全16巻)三省堂 昭和52年
●少年SF・ミステリー文庫(全20巻)国土社 昭和57~58年
●ポプラ社のSF冒険文庫(全10巻)ポプラ社 昭和59~60年
●SFロマン文庫(全30巻)岩崎書店 昭和61年
◆挿絵画家列伝・・・斎藤和明
ペン画=ペンでかいた絵画。
科学美術家を目指す。原画は発色のよい色が多く使われているが、印刷では再現できていないのが残念。
●宇宙島の少年(全5巻)誠文堂新光社 昭和59年
●ジュニアSF選(全5巻・別館1)草土文化 昭和62年
********ヴェルヌとSF童話の世界
●ベルヌ冒険名作選集(全12巻)岩崎書店 昭和34~35年
●少年少女ベルヌ科学名作全集(全12巻)学習研究社 昭和39年
[ヴェルヌの世界~大橋博之]
H.G.ウェルズとともにSFの父と呼ばれている。
帆船に乗ったという有名なエピソード、「誰かに想像できることは、別の誰かによって実現可能である」という名言は、
ヴェルヌの姪、マグリット・アロット・ド・ラ・フュイの創作ではないかと考えられている(そうなの!?
彼女は印象深いエピソードを書く名手と言われていた。
ヴェルヌは生涯で約60作を残した(全部読みたいなあ・・・
翻訳権の制限を受けないヴェルヌ作品は、自由に出版できたため、児童図書出版に大きなメリットだった。
そのためヴェルヌだけを集めたシリーズもいくつか刊行された。
(それも子どもたちの身近に極上のものを届けて、たくさん現実化させたキッカケを作ったんだから、やっぱり未来的だなあ!
●ベルヌ名作全集(全15巻)偕成社 昭和43~44年
「ベルヌを読んだ科学界権威者のことば」として、4人の科学者を紹介している。
人工衛星、ロケット理論に取り組んだK.E.ツィオルコフスキー、
航空機関係の仕事につこうと決心したシャルル・リシェ、フォン・ブラウン、糸川英夫氏(!
「20世紀科学の偉大な預言者ベルヌ」がキャッチフレーズ。
●少年少女ベルヌ科学名作(全12巻)学習研究社 昭和44年
「ベルヌは、未来を漠然と夢見たのではなく、ありありと予測した。
どの作品も、温かい人間愛、強い正義感に支えられている」(文学博士・波多野完治)
[ボーイズ&ガールズの必須アイテム~大橋博之]
「象が踏んでも壊れない、アーム筆入」が発売されたのは昭和40年。
今以上にキャラクターグッズが大ブームだった。
キャラクターの版権は基本、ワンアイテムに1社としか契約できない。
そのため、いわゆる「パチモノ」ができた。
●S・Fどうわ(全9巻)盛光社 昭和42年
●SFえどうわ(全20巻)岩崎書店 昭和43~45年
やなせさんも!
●創作SFえほん(全12巻)盛光社 昭和44年
SFを絵本にするという奇抜な発想で刊行されたシリーズ。
「団地のように規格化された生活の中にいて、似たようなテレビ番組を見ていると、夢そのものが規格化されてきます」(古田足日)
[SF童話の世界~大橋博之]
福島正美の名を冠した文藝賞「福島正美記念SF童話賞」がある。第1回は昭和58年。
大賞作は単行本として出版されることもあり、児童文学作家を目指す新人の登竜門の1つとなっている。
●こどもSF文庫(全5巻)フレーベル館 昭和46~47年
●あたらしいSF童話(全20巻)岩崎書店 昭和58~62年
お、ますむらさん!
********ジュヴナイルSFにおけるイラストの魅力~大橋博之
SF小説の表紙などに描かれたイラストのことを「SFアート」と呼ぶ。
文芸評論家・尾崎秀樹は『さしえの50年』で、「平仮名絵入」創刊(明治8年)、
この“絵入”が挿絵を意味していた、と書いている。
明治になって、「木版印刷」から「洋式活版」が導入され、多くの新聞、雑誌が刊行された。
大量に配布されることを前提とした出版美術といえる。
その頃は、江戸時代からの浮世絵絵師が手がけた/驚
挿絵の黄金期は、大正~昭和初期。
大正ロマンを代表する竹久夢二、中原淳一ら。
挿絵画家は花形商売で、高額所得者だった/驚
伊藤彦造、梁川剛一らは「密画」といわれる緻密でリアルな絵を描いて、盛り返した。
SFアートの源流を強引に定めるなら、やはり小松崎茂ではないだろうか。
渡されたB29の写真を見て、思わず「いい飛行機だなあ」と誉めて、将官から怒られたエピソードがある。
『SFマガジン』の初代編集長・福島正美は、表紙の絵に頭を悩ませた。
表紙は売れ行きを左右すると同時に、雑誌の持つ世界を決定付ける。
福島のイメージにあったのはフランスの現代画家ジャン・カルズー。
カルズーのもつ荒廃的な雰囲気を表現するため、新人画家・中島靖侃を起用。
昭和35年頃からは、アメリカ文化の影響を受けた系譜が加わる。
印刷技術の向上とともに広告を中心に広がり、グラフィックデザインの一部として不可欠要素となる。
武部本一郎の登場は大事件だった。
『創元SF文庫』『ハヤカワ文庫SF』は、本格的なSFアートの幕開けだった。
現在のSFアートの方向性を決定付けたのは、加藤直之をおいて他にはない。
ドラスティック=やり方が抜本的で、思い切ったものであるさま
アブストラクト=抽象的な
********ジュヴナイルSF年表
1954 映画『ゴジラ』公開
1966 TVシリーズ『ウルトラQ』放送開始
1972 TVシリーズ『タイム・トラベラー』放送開始
1974 ユリ・ゲラー来日、超能力ブーム
1978 映画『未知との遭遇』『スター・ウォーズ』日本公開
1981 映画『ねらわれた学園』公開
1983 映画『時をかける少女』公開
1985 科学万博・つくば’85開催(家族で行った!