メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

フェア

2005-09-30 14:16:05 | lyrics
たとえばどんなに偉い奴が
高々とわたしを見下ろしていたとしても
わたしはそいつと公平だと叫ぶ

いつでも事の逆を考えたり
その人だったら次になんと言っただろうかと想像する

自分をどこか別に置き忘れても
公平な立場に心を置き忘れたりはしない

一度くらい失敗したからって
可能性はあるんじゃないか

たとえどんなにすごい奴が
どこか遠くで見下ろしていたとしたって
わたしの心はそいつに「フェア」と叫ぶ





1987.10.25作

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一枚の絵

2005-09-29 14:26:24 | lyrics
一枚の絵がある
窓際にかかっている

半分から下は 緑色の山の絵で
半分から上は むらのない筆で描いた水色の空

空の右の切れ端に
イモムシ型の雲がかかっている
目に痛い絵だった

さっきは分からなかったが
鷲が優雅に直線をぴりっと引いていた

緑は砂のまざる風に煽られ
無数の手足を もぞもぞとうごかしていた

今度は右の雲は消え
左端にスープ状にかかっていた

そして

鷲は私の知らない町へといってしまった
スープはゆったりと流れて
次の空へといってしまった

別に飾っていたわけでもないこの絵は
本当に目に痛かった





1987.9.6作

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ほし

2005-09-28 21:49:09 | lyrics
ほし
ほしに名づけたり
ほしを測ったりするのはよそう

ほしはS612ではなくて
ほしはきれい


ぼく
ぼくはぼくを知らない

みんなはぼくを 全部知っているというけれども
みんなは知るという意味をほんとうは知らない


惑星や銀河系という名も
青い地球という名も
知らない

だから

その青いほしの
ちいさな島の
せまい庭のまえで
一生懸命に手を広げているぼくのことを
もちろん知らない


いっこの魂ですら崇高であるはずが
やっぱり見えないものは知らない


神さまは
きっと目がひどく悪いにちがいない
耳もひどく遠いにきまってる


「連れてって」


いっこの崇高な思念が叫んでいる

名前のないほしへ連れてって

連れてって

連れていってよ






1989年作

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乳の潮

2005-09-27 19:00:29 | lyrics
ボクはやわらかい日の当たる窓際で
彼女がゆっくり変態してゆくのを見ていた

窓の外では得体の知れない様々な
薄暗い影が
先へ先へとゾロゾロうつっている

かわいた笑い声をまとって
いつまでも
いつまでも


肉のエキスと栄養のエキスで人間を造ろう
水を加えて人間を造り直そう
みんな他人が自分より傷つきやすいとは思わない

あんたの犬を散歩させてきなよ
ボクが楽しみ方を教えてあげるよ


まっしろな乳の潮が満ちてくる

銀色に輝く月よ

一緒に詩人だけが住む星にいこうよ




1992.10.19作


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黒くて長い髪のコが

2005-09-26 13:55:22 | lyrics
黒くて長い髪のコが
細い路地をまっすぐに歩いている

過ぎていく1秒1秒のそれぞれが
なにかのメッセージを投げかけている

けれども
つかむそばからおっことしてしまう


子どもがあたりかまわず泣いているものだから
そのコはまっすぐな路地で
また迷ってしまった
2mほどのブロック塀に囲まれて

ここには友達はいないから
そのコはずっと黙っていなければならない

そしてもう一度
ベルが鳴ったら
歩き出さなければならない
黒くて細い道を


いつか
どこまでも続く
花畑で迷子になるために

空気に還り
土と化すために


流れていって
流れていって
無人島に流れ着く

リスが木の実をかじっていて
テンが目を光らせている

そのコは山や木に登り
鳥といっしょに眠りをむさぼる


夢の中では
机に向かって働いている

犬を散歩させたり
電車に乗ったり

怒ったり
怒られたり

花に水をあげたり
お金を使ったり

テレビを見て
泣いたり
笑ったりして





1991.7.21


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子宮

2005-09-25 11:27:44 | lyrics
私はまだ子宮から産まれていない

産道につまっている

産声もあげていない

まだ産まれたくはない

この汚く混沌として

取引が横行する

未完成の世界には





1998記


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晴れている日曜日は

2005-09-24 11:51:45 | lyrics
晴れている日曜日は
眠ろう
眠ろう

眠れ
12月とクリスマスツリーが恋におちるまで


どこかで歌っている声がする
赤いセーターの少女の歌と
クリスマスが満点の星空に恋をした歌

童話を忘れてしまった
子どもらも眠れ

綿のハンカチに乗って
空を飛ぶ夢をみよう

海ではクジラが潮をふき
サバンナでは豹が獲物をねらっている

真っ赤な口紅を塗った
女の子も眠れ

時間も
有機物もない
寒い空間の中を

無心にクルクルまわってゆけ





1990.11.11
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綺麗な貝ばかりを集めて

2005-09-23 12:02:17 | lyrics
綺麗な貝ばかりを集めて
薄水色のガラス箱に詰めたなら

さあ もう怖くない
永遠の暗闇は
ここまで来やしないさ




1990.5.12


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何をすべきか?

2005-09-22 12:06:46 | lyrics
何をすべきか?

それとも
しなければならない事が山ほどあって

どれを最初に
どれを最後にしなくてはならないか

コートをはおり
リップを直して
極力、自分をひた隠しながら

そこいらじゅうが
真っ赤に染まった大地と服を見て
どうしてそれが
自分でないといえるのか

すべてに番号をつけて
一列に揃えることができるなら

たくさんのまやかしに包まれて
どれが純粋かなどと
もう考えもしないのに

せめて遅れてしまう前にはじめよう
停止は何も変化しないことを示している

そしてうつりゆく変化が
砂に混ざった金の粉のごとく
わずかな進歩と希望を
指し示してくれるなら

そうそう気分は悪くない
今のうちに






1991.2.11
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狂人

2005-09-21 18:23:54 | lyrics
彼は狂人を演じ
時に本物の狂人になる

狂人はいつでも刺激的なものではなく
時に黙ったひとり者






1990.4.6

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