2017年初版
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「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください
レイモンド・チャンドラー
1888年 シカゴ生まれ
記者などの職を経て、第一次世界大戦に従軍
石油会社の役員となるが、不況や私生活の問題で解雇
作家になることを決意する
1959年 70歳で没
1939年、マーロウシリーズの第一作『大いなる眠り』を発表
『さよなら、愛しい人』
『高い窓』
『水底の女』
『リトル・シスター』
『ロング・グッドバイ』
『プレイバック』
図書館で見つけて、タイトルにつながる美しい水色のハードカバーが気にいって
メモしてあったのを借りてみた
マーロウ探偵は初かなあ
読み始めて、ハードボイルドものだと気づいてちょっとガッカリ
人殺しもする探偵ってなんだかなぁ
終始気だるい空気、遠回りな会話
暴力や男臭さをやけに前面に押し出してるのも鼻にかかる
これまで読んだ本格推理小説は中世が舞台で
貴族と庶民の対比、遺産、宝石などが中心だったけれども
舞台がアメリカに移り、現代に設定が変わると
スーツ、高層ビル、ビジネスマンと一気に変わってしまうんだな
不必要なほど容姿や景色の描写が多いのもハードボイルドの特徴か?
ジェブナイルになると、要点だけにしぼってカットされる分読みやすい
訳者あとがきを読んで、本書が2つの短編をつないだもので
第二次世界大戦が始まり、作者のプライベートな問題も重なった事情が
作品の質にも関係していると分かった
となると、他の長編を読めば、もっと引き込まれるだろうか
【内容抜粋メモ】
登場人物
フィリップ・マーロウ 私立探偵
ウェバー ベイ・シティ警察の警部
デガルモ 警部補
ドレイス・キングズリー ジラレイン社社長
クリスタル 妻
レイヴァリー 妻の愛人
エイドリアン・フロムセット ジラレイン社社員
ビル・チェス キャビン管理人
ミュリエル 妻
ジム・パットン ピューマ・ポイントの保安官代理
アルモア 医師
フローレンス 妻
ジョージ・タリー 私立探偵
●ドレイス・キングズリー
戦時物資として政府に供出するために
ビルの歩道のゴムが剥ぎ取られている
ジラレイン社は高級化粧品の店?
エイドリアン・フロムセットが受け付けて
社長のキングズリーと会う
1か月ほど行方不明の妻クリスタルを探してくれと依頼を受ける
ピューマ・ポイントにあるキャビンから姿を消した
リトル・フォーン湖とダムのある山
ビル・チェスが妻ミュリエルと一緒に別のキャビンで管理人をしている
6月14日、愛人レイヴァリーと結婚するという電報がエル・パソから届いた
レイヴァリーに聞いたら、2か月ほど会っていないと言った
レイヴァリーは以前、会社の配達をしていたが有名な女たらし
●レイヴァリー
レイヴァリーはエル・パソには行っていないと言うが
ピューマ・ポイントのキャビンに行ったことはバレる
●アルモア医師
レイヴァリーの向かいに住む医師アルモアが電話して
警部補デガルモから事情聴取を受ける
アルモアの妻フローレンスは車の排気ガスを吸って自死した
●ビル・チェス
チェスは左脚が義足で大酒飲み
クリスタルと同じ日に妻ミュリエルが家を出た
以前も浮気をしたことがあったが
隣りのクリスタルに誘惑されて浮気がバレ
ミュリエルは書き置きを残していた
2人で湖に下りて行くと、
湖底から女性の死体を見つける
チェスは妻ミュリエルだと言う
●ジム・パットン保安官代理
パットンと部下は死体を検分
ミュリエルは泳ぎが上手かった
●バーディ・ケッペル 小さな地方紙の記者
バーディは勝手にマーロウの車に乗り込み話を聞く
6週間前、デソトという大柄で態度のデカイ警官がやって来て
ミルドレッド・ハヴィランドという女性を探していたが見つからなかった
化粧や髪の色を変えていたがミュリエルに似ていた
チェスのキャビンを粗探ししようとして、パットンに見つかる
彼はチェスをミュリエル殺しの犯人として逮捕した
ミュリエルの車はどこに隠したのか?
脚の悪いチェスは遠くまで行けないはず
マーロウの推理通り、ミュリエルの車や荷物はクーン湖で見つかった
砂糖の器からアンクレットが出てきた
●ミルドレッド・ハヴィランド
改めて粗探しすると、絹のスリップが見つかる
この時世、これを置いていく女性はいない
アンクレットからもぎ取られたハートのトップも見つける
「アルからミルドレッドに」と彫られている
ミュリエルがミルドレッドだという証拠になる
ミュリエル殺しは夫じゃないと推理するマーロウ
●クリスタルの車
クリスタルがエル・パソへ行く列車に乗る前
車を駐車したままにしていると推理して
プレスコットホテルのスタッフに金を渡して話を聞く
クリスタルはレイヴァリーと一緒に食事したと分かる
●ミセス・フォールブルック
レイヴァリーの家を再度訪ねると
家賃を3か月も滞納しているから取りに来たという女性に会う
ピストルを持っていて、階段で拾ったとマーロウに渡す
6発の弾が発射されたばかりの臭いがする
フォールブルックが家を逃げるように出た後
マーロウが家探しすると、クリスタルのスーツがクロゼットにあるのを見つける
浴室に銃弾2発で死んでいるレイヴァリーの死体
3発は外した
ベッドにはエイドリアンの刺繍がしてあるハンカチを見つける
(この当時ですら自分の名前をハンカチにつけていたんだな/驚
キングズリーに逐一報告
エイドリアンも一時期、レイヴァリーと付き合っていたが
今はキングズリーと婚約している
エイドリアンはフローレンスとも面識があった
●フローレンス・アルモア
アルモアはモルヒネを患者に投与していた
妻フローレンスは人目をはばからず夫の秘密を話すような性格だった
賭け事を営むコンディが麻薬を売っていた可能性がある
フローレンスが死体で発見された時、そばにいたのは看護婦
死後、検死もされずに事件は闇に葬られた
ミルドレッドはアルモアの愛人で、スキャンダルを怖れたアルモアが
デガルモを使ってもみ消したか?
フローレンスの両親は私立探偵ジョージ・タリーを雇い
なにか掴んだらしいが、飲酒運転で逮捕されてうやむやになった
エイドリアン:私はレイヴァリーを撃ってない
マーロウはデガルモに事件をもみ消した疑惑を話すと
平手で2度殴られる
●グレイソン夫妻
フローレンスの両親は娘を殺したのはアルモアだと疑っている
事件当日の飲み物に麻薬を混ぜた
死体の第一発見者レイヴァリーはそれで強請ろうとしていた?
アルモアの愛人の看護婦はミルドレッド
●ミセス・タリー
いろんなことが重なり疲れきった妻からは話が聞けない
その帰り、パトカーに追いかけられ、逃げようとして失敗
スピード違反、飲酒運転、公務執行妨害などをなすりつけられて留置所に入れられる
●ウェバー警部
あらましを話すと、デガルモに問いただし
この件は水に流そうと提案し、一緒に事件を解決する方向を約束する
ウェバー警部:
警察の仕事には山ほど問題がある
タリーはけちな強請り屋で、フローレンスの死体のダンス靴を見て
履かれた形跡がないことに気づき
アルモアとミルドレッドが仕組んだと判断し強請ろうとしていた
ウェバー警部がデガルモをアルと呼んだことから
ファーストネームがアルバートで
ミルドレッドと結婚していた時期があると分かる
●クリスタル
クリスタルから電話があり、封筒に入れた500ドルを渡すために
指定されたピーコック・ラウンジに届ける役をやってくれとキングズリーに依頼される
お互い初対面なため、目印にキングズリーの派手なスカーフを首にまく
クリスタルに金をやる前に話したいと迫ると
滞在先のグラナダに10分後に来いと言われる
クリスタル:
私はレイヴァリーとエル・パソに行ったが
1人になって自分を立て直す必要があった
髪をブラウンに染めているが、彼女がフォールブルックを名乗って
レイヴァリーを撃ったと明かすと殺人を自白して別のピストルで脅す
隙をついて彼女のピストルを落とすが、浴室から大男が出てきて
後頭部を殴り、気を失う
気がつくと、ベッドの上には胸を爪でひっかかれ、首を絞められた
クリスタルの死体がある
警官が入る前に浴室の窓から隣りの部屋に移り
そこの住人タルボットを名乗って、警官を騙して逃げようとするが
デガルモに見つかる
●ブウラックジャック
(調べたら“殴打用の武器” 警棒かと思ったが違うのか?
彼は停職処分の身?ながら、マーロウをパトカーに乗せて走る
クリスタルを殺したのはキングズリーだろうと話して
パットンに聞いて、キャビンまで会いに行く
ミルドレッドは看護婦の技術を使い
フローレンスにモルヒネを皮下注射して
アルモアの犯行に見せかけた
アルモアは自死に見せかける細工をし、デガルモは事件をもみ消した
ミルドレッドは名前をかえてチェスと結婚したが
キャビンでの暮らしに飽きていた
逃げ出すにも金が要る
パットンはデガルモから写真を見せられた時
ミュリエルだと気づいたが伏せていたことを悔やむ
●真相
湖から引き上げた死体はクリスタル
妻と同じ服装だし、損傷が激しかったため、チェスは妻と思い込んだ
ミュリエルはクリスタルの金を奪おうとクーン湖の浴槽で殺した(動機が甘いな
クリスタルになりすましていたが、レイヴァリーに見つかったため
誘惑してエル・パソまで行った
殺人者の習慣でレイヴァリーを撃った現場に戻ったところをマーロウに見られた
マーロウを脅していたミュリエルを絞殺したのはデガルモだと明かす
キャビンからいったん逃げて、車を乗っ取ったが
ダムから車ごと谷に落ちて自死するデガルモ
(終わりもあっさりしてるな
■
訳者あとがき「これが最後の一冊」
チャンドラーは7作の長編を遺して亡くなった
本書を書いたのは1943年 55歳の時
本格的に書きはじめたのは40代なかば
2つの短編がもとになっている
『レイディ・イン・ザ・レイク』と『ベイシティ・ブルース』
軽快なペースが失われ、水死体の1本のプロットで長丁場を押し切っている
マーロウは経験豊かなプロとして、仕事を淡々とこなしている
日米開戦の戦時下で発表された影響が見られる
日本からの絹の輸入が停止されたため、アメリカの婦人はストッキングや衣服で苦労した
その結果、ナイロンが普及した
ダムに兵がいるのは、日本のスパイが貯水池に毒を入れる破壊工作を企てているという噂が
市民に広がったため
村上さんは10年かけてチャンドラーの長編すべてを訳した
「ハードボイルド」という言葉がもう有効性を失いつつあるという気がしている
カズオ・イシグロさんほかチャンドラーファンは驚くほどたくさんいる