祖父は労働力確保のため当家に若干16歳で婿入りした。
苦労の連続がそうさせたかの、自分は二の次で家族に対する「思いやり」を優先する人格者で、
バアチャンは「仏様のような人だった」と舅を評価していた。
50歳を過ぎてから酒の味を覚え、自家製のドブロクを朝、昼、晩と毎食二合ずつ呑んで
80代半ばまで元気に農作業をこなす「陽気な酒飲み」だった。

朝食時に、ドブロクが満杯に入ったコップを誤ってテーブルに倒してしまったことがあった。
「おっ、モッタイナイ、モッタイナイ」と言って、ニコニコしながら舐めるように呑んで
いた「いかにも幸せそうな顔」が今も忘れられない祖父の思い出として残っている。