

午後2時半、特急で鹿児島を発ち都城に向かう。
錦江湾の向こうの桜島が刻々と位置を変え、姿を変えて遠ざかって行く。

都城には、1時間10分余りで到着する。
これから、ここを起点に吉都線や肥薩線を乗り潰す。

吉都線は、ここ都城と吉松を結ぶ61.6キロの山岳路線である。
その吉松を中心に、丁度“人”の字の第一画目に当たる部分が、肥薩線である。
この路線は熊本県の八代と鹿児島県の隼人を124.2キロで結び、沿線は山あり川有り
そしてローカル線ならではの取って置きのスポット有りと楽しみ多い人気の路線でもある。

この二つの路線が“人”の字の形をしているので、乗り潰すと成るとどうしても一回は
同じ路線を行って帰る事に成る。
そのため今日は明るいうちに吉都線に乗り、夕方以降吉松、人吉で乗り継いで八代
まで行き、明日改めて八代から人吉、吉松に引き返し、そこから隼人に向かう事にした。
従って沿線の楽しみは明日に持ち越しと言う事に成る。

吉松に到着した時には、辺りはすっかり暗く成っていた。
ここでは待ち時間を利用して駅近くの“汽笛まんじゅう”の店を訪ねて見る。

駅から5分ほどの所に有る店の灯は既に落ちていた。
駄目かなと思いつつ、店の中を覗き、周りでうろうろしていると、突然店の明かりが灯り、
「良いですよ」と中に招き入れてくれる。

ここは鉄道好きな老夫婦が営むお菓子屋さんで、SLの石炭を模した“汽笛まんじゅう”
が知られている。鉄道写真の一杯貼られた店内で、名物を食べながらご主人にSLの話を
聞かせてもらえるのが楽しい。(続)

