東海道の難所「小夜の中山」の茶畑を行くアスファルト道は、緩や
かな上り下りをくりかえしながらも、圧倒的に上り勾配の方が多く、
確実に高所に向けて長く延びている。
多少息も上がり気味で、踏み出す一歩一歩は、スローモーションの
ように頗る鈍いが、周りの茶畑の濃い緑と青い空だけは相変わらず美
しく、それが唯一の慰めである。
道中にはコンビニも食事処も無く、休憩するような場所も何も無い。
休むなら歩を止めて、しばし路傍に腰を下ろすより仕方が無い。
ペットボトルの予備を、予め金谷の町中で調達していて正解であった。
今道ばたに屈みながら、既にその2本目に口を付けている。
「もうすこしだ。その坂を上がれば寺がある。」
覚束ない足取りで急坂を上ってくる姿に、見るに見かねたのか、途中
の茶畑で作業中の男性が手を休めながら、軽トラに手をかけたまま声
をかけてくれた。
ホット一息つきながら、指でさされた先を見れば、急な坂道はその
先で細くなり、緑の森の中に吸い込まれている。
こんもり濃い緑が盛り上がる様は、鎮守の森そのものだ。
「あの森が久延寺ですか?」
「いや、そのもう一つ坂を上がったその先だ」
疲れ果てながら重い足取りで教えられたあの森を抜け、さらにその
もう一つその先の青木坂の急坂を上り詰めると、やがて道は平坦な広
場となり、252mの峠を迎える。
そこには不揃いな丸石で組み上げた台座の上に小さな祠が祀られて
いて、その向かい側に目標としてきた寺が山門を構え建っていた。
金谷から続く坂道の上り下りは、標高がさほどあるわけでは無いが、
そのくり返しが延々と続くのにウンザリで、評判どおりの難所に、思
わぬ苦戦を強いられてしまった。(続)
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確実に高所に向けて長く延びている。
多少息も上がり気味で、踏み出す一歩一歩は、スローモーションの
ように頗る鈍いが、周りの茶畑の濃い緑と青い空だけは相変わらず美
しく、それが唯一の慰めである。
道中にはコンビニも食事処も無く、休憩するような場所も何も無い。
休むなら歩を止めて、しばし路傍に腰を下ろすより仕方が無い。
ペットボトルの予備を、予め金谷の町中で調達していて正解であった。
今道ばたに屈みながら、既にその2本目に口を付けている。
「もうすこしだ。その坂を上がれば寺がある。」
覚束ない足取りで急坂を上ってくる姿に、見るに見かねたのか、途中
の茶畑で作業中の男性が手を休めながら、軽トラに手をかけたまま声
をかけてくれた。
ホット一息つきながら、指でさされた先を見れば、急な坂道はその
先で細くなり、緑の森の中に吸い込まれている。
こんもり濃い緑が盛り上がる様は、鎮守の森そのものだ。
「あの森が久延寺ですか?」
「いや、そのもう一つ坂を上がったその先だ」
疲れ果てながら重い足取りで教えられたあの森を抜け、さらにその
もう一つその先の青木坂の急坂を上り詰めると、やがて道は平坦な広
場となり、252mの峠を迎える。
そこには不揃いな丸石で組み上げた台座の上に小さな祠が祀られて
いて、その向かい側に目標としてきた寺が山門を構え建っていた。
金谷から続く坂道の上り下りは、標高がさほどあるわけでは無いが、
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