潜水艦訓練センターの見学を終えた後、再びバスに乗り一旦施設外に出て
その後に案内されたのは、旧呉鎮守府の庁舎であった。現在の海上自衛隊呉
地方総監部である。これは呉市に残る歴史的な建造物で、毎週日曜日には一
般公開(事前の申請が必要)されているらしい。
明治40(1907)年に竣工した延べ面積1,990平方メートル、地下一階、地上
二階のレンガと御影石を使った造りの建物で、外壁はイギリス積みと言われる
レンガ積みである。
屋上にドーム屋根を載せ、規則正しく配置された窓が特徴的で、正面のエント
ランスにある御影石の角柱でくみ上げた車寄せが、如何にも重みがあり堂々と
して、軍の施設らしい威風を感じさせる。屋根に乗るドームは、空襲で喪失し、
復元されたものだと言う。
建物を回り込むと目の前は海に面している。
これは先ほど目にした車寄せが、馬車によるアプローチを想定しているのに
対し、こちらは海軍らしく艦艇から降り立ってのアクセスを想定したものだ
からだそうだ。従ってこの建物にはファサードと呼ばれる「正面」が、陸側
と海側に設けられているのも大きな特徴になっている。
海側には、両サイドに後から建て増したという建物が張り出している。
建屋の前には如何にも明治風の外灯も建っていて、正面が二つあるとは言え、
海軍らしく海に面したこの側に重きを置いている風にも感じられる。
建物の周囲には手入れの行き届いた緑地があり、木々の緑と煉瓦の赤、御影
石の白、そのコントラストが実に美しく、青い空を背に映えていた。(続)
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