大沢在昌の初期の頃の作品。1992年とデビュー2年目。
1980年に死去したジョン・レノンと思われるJ.L.と言う
イニシャルの作曲家が創った楽曲がモチーフに使われている。
主人公は井田と言う若い総会屋。総会屋が主人公と言うのも
なんかすごく変わっている。ある日、井田の部屋に、
メッセンジャーがやって来て封筒を渡す。
宛名は鈴木一郎・・・・井田の本名であった。
身分証明書を提示し封筒を受け取った井田であったが、
宛先に書かれた住所のマンション名が微妙に違っている事に気づく。
近所にある同姓同名の鈴木一郎を訪ねる井田は、
もう一人の鈴木一郎が数日前に自殺している事を知らされる。
そしてメッセンジャーも死体で発見され、
井田は理由が解らないまま事件に巻き込まれている事を知る。
総会屋と言う職業の井田は警察に届ける事もできず、
信頼のおける百貨店勤務の原に相談を持ち掛ける。
井田の受け取った封筒には1本のカセットテープが入っており、
原はそれがJ.L.の肉声であると気づく。
殺されたメッセンジャーは作曲家で、
自殺した鈴木一郎が作詞家であった。
2人ともカセットテープが原因で殺された事は明白で、
井田も正体不明の一団に命を狙われて行く。
ある日、井田はメッセンジャーの行きつけのBARで、
女性と出会い彼女が本当の受け取り人であった鈴木一郎に
英語詩の訳詞を依頼していた事を聞く。
何のための楽曲なのか??
なぜ、そのカセットテープが狙われているのか?
この女性は誰なのか?
意外な事に(笑)原が見た目とは違って、
いろいろな才能を持ち合わせている事が次々に解っていき、
驚くような人脈も持っている事も判っていく。
原の好奇心と勇気と才能と人脈のおかげで、
井田は危険にさらされながらも真相に迫って行く。
この原のキャラクターが凄い。
名探偵も顔負けの活躍でストーリーが進んで行く。
見た目とのギャップって・・・面白い。