本日はソニー・スティットが1959年に名門ヴァーヴに残した「サキソフォン・スプレマシー」を取り上げます。スティットはモダンジャズを代表する名アルト奏者ではあるものの、一方でどの時代のどの作品も演奏スタイルは同じなので個性に欠けるきらいがあります。特にこの時期の一連のヴァーヴ作品は、ピアノトリオをバックにスタンダード曲を軽く演奏するというスタイルばかりではっきり言ってどれを聴いても一緒です。
にもかかわらず、冒頭の“I Cover The Waterfront”が始まった瞬間に「ああやっぱりいいよなあ」と思わせるのがスティットの偉大さでしょうか。ルー・レヴィ(ピアノ)、リロイ・ヴィネガー(ベース)、メル・ルイス(ドラム)の西海岸リズムセクションのリラックスした演奏をバックに流れるお得意のテロテロフレーズ。いくらマンネリだとかワンパターンだとか言われても魅力的なことに変わりはありません。他ではゆったりしたブルース調の“Lazy Bones”、ミディアムテンポで上品な“Just Friends”もいいですね。“Two Bad Day Blues”“Blue Smile”の2曲はスティットのオリジナルですが、これもどこかで聴いたことあるような典型的ビバップです。スティットには珍しい美女ジャケも見た目に楽しい好盤です。