ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ローランド・カーク/カークズ・ワーク

2012-12-29 14:36:46 | ジャズ(ソウルジャズ)
ジャズ界には奇人・変人がたくさんいますが、その代表として真っ先に思い浮かぶのが盲目の奇才、ローランド・カークではないでしょうか。何本もの楽器を口に含んで演奏したり、フルートを鼻で吹いたり、時計のアラームや手回しサイレンを楽器代わりにしたり、とにかくエキセントリックなプレイスタイルで注目を集めていました。ただ、その分キワモノのイメージが強く、食わず嫌いになっているジャズファンも多いのではないでしょうか?かく言う私も実はそうでした。ただ、少なくとも彼の初期の作品、マーキュリー盤の「ドミノ」やプレスティッジ盤の本作(1961年7月録音)を聴いた限りでは、演奏そのものはいたって真っ当なジャズなんですよね。確かに使っている楽器は独特で、本作でもマンゼロというアルトサックスの変形楽器、ストリッチというソプラノサックスの変形楽器を使用していますが、そこから生み出されるフレーズ自体はメロディアスで誰が聴いても楽しめる内容です。



サポートメンバーはジャック・マクダフ(オルガン)、ジョー・ベンジャミン(ベース)、アート・テイラー(ドラム)。ピアノではなくオルガンが入ることにより、ソウルフルな空気が濃厚に感じられます。特に冒頭“Three For Dizzy”はマクダフの糸を引くような粘っこいオルガンが印象的なディープなブルース。カークがフルートを奏でる“Funk Underneath”、テナーとストリッチでワイルドにブロウする“Kirk's Work”もソウルジャズ路線です。かと言ってソウルジャズ一辺倒ではなく、軽快にドライブする“Makin' Whoopee”、歌心あふれる“Too Late Now”などスタンダード曲も充実。ラストの“The Skaters Waltz”は有名なワルトトイフェルのクラシック曲をジャズにアレンジしたもので、バラエティ豊かな楽曲構成で楽しいアルバムに仕上がっています。
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