本日は久々にヴォーカルものでカーメン・マクレエの代表作「トーチ」をご紹介します。カーメンと言えばエラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーンに次ぐ黒人女性ヴォーカルの重鎮として50年代から80年代まで一線で活躍し続けましたが、とりわけ50年代にデッカ・レーベルに残した作品群が有名です。レイ・ブライアント・トリオをバックに従えた「アフター・グロウ」、タッド・ダメロン・オーケストラと共演した「ブルー・ムーン」は私も愛聴しております。本作はそれより前の55年に録音されたもので、今でも彼女の代表作に挙げられています。トーチソングとは失恋の歌のことで、ジャケットには嘆き悲しむ(?)カーメンのドアップが使われております。正直ちょっとコワいですが、インパクトは強烈ですね。
全12曲、うち8曲をラルフ・バーンズ・オーケストラ、4曲をジャック・ブライス・オーケストラが伴奏しています。インストゥルメンタルのソロはほとんどなく、もっぱらカーメンのヴォーカルだけに焦点を当てた作品です。個人的にはジャズヴォーカルでもコンボとの共演の方が好きで、オケ伴奏ものはあまり聴かないのですが、本作はカーメンの情感ほとばしる名唱だけで十分傾聴に値します。ほとんどが有名なスタンダード曲ですが、“If You'd Stay The Way I Dream About You”“I'm A Dreamer Aren't We All”など馴染みのない曲も含まれています。後者がなかなかの佳曲ですね。定番スタンダードでは“Last Night When We Were Young”“But Beautiful”“Midnight Sun”が素晴らしい出来です。