本日は通好みのドラマー、デイヴ・ベイリーによる隠れ名盤を取り上げます。ベイリーについては以前エピック盤「ワン・フット・イン・ザ・ガター」を取り上げましたが、本盤はその翌年の1961年7月にジャズラインというマイナーレーベルに吹き込まれた作品です。この作品、とにかくメンバーが凄いです。三管編成のセクステットでケニー・ドーハム(トランペット)、フランク・ヘインズ(テナー)、カーティス・フラー(トロンボーン)、トミー・フラナガン(ピアノ)、ベン・タッカー(ベース)、そしてベイリーというオールスターメンバーです。唯一フランク・ヘインズだけあまり知られていない存在ですね。私のライブラリーではレス・マッキャンの「イン・ニューヨーク」でサイドメンに名を連らねていますが、他にもベイリーとは何枚か共演しているようです。1965年に37歳で肺ガンで亡くなった薄幸のテナーマンですが、ここではクセのない正統派のテナーを聞かせてくれます。肝心のリーダーのベイリーですが、特に目立ったソロを取ることもなく、あくまで裏方に徹しています。ドラマーのリーダー作といえば、アート・ブレイキーやマックス・ローチのように、随所に俺がリーダーだとばかりに長尺のドラムソロを取る人もいますが、ベイリーはそういうタイプではないようです。
曲は全6曲。うち2曲目"Like Someone In love"と5曲目"Just Friends"はお馴染みのスタンダードで、ここでは管楽器を抜いたピアノトリオで名手フラナガンの素晴らしいピアノが堪能できます。これはこれで良いのですが、やはり聞きどころは3管入りの方でしょう。1曲目"Grand Street"はソニーロリンズの作品。あまりメジャーではないですか、1958年のメトロジャズ盤「ソニー・ロリンズ・アンド・ザ・ビッグ・ブラス」で演奏されていた曲です。やや歌謡曲風のマイナー調のメロディーが印象的で、ヘインズの朗々と歌い上げるテナーソロに続き、フラー、フラナガン、ドーハムが哀愁に溢れるソロを聞かせます。3曲目"An Oscar For Oscar”はドーハムのオリジナル。こちらは痛快なハードパップで、作曲者ドーハムがソロを取った後、ヘインズ、フラー、フラナガンが快調にソロを受け渡していきます。4曲目"Osmosis はドラマーのオシー・ジョンソンの曲で、以前オリジナルを本ブログでも取り上げました。ズート・シムズのリヴァーサイド盤「ズート!」での演奏も有名ですね。こちらもマイナー調でありながら疾走感も併せ持つ名曲です。こちらは10分を超す熱演で珍しく最後にベイリーがドラムソロを披露しています。ラストの”Soul Support”はノリス・ターニーというあまりよく知らないジャズマンの曲でファンキーなミディアムチューン。これはまあまあと言ったところです。ジャズラインは数枚のレコードを残してわずか1年で消滅した泡沫レコード会社ですが、そんなマイナーレーベルにもこのような名盤が隠れているところが、ジャズの奥深いところですね。