ブルーノートに合計20枚以上ものリーダーを吹き込み、同レーベルの顔と言っても良い存在のハンク・モブレーですが、初期の6つの作品は自分の名前を冠した同じようなタイトルばかりで紛らわしいことこの上ないです。まず、1955年のデビュー作が「ハンク・モブレー・カルテット」、翌年に「ハンク・モブレー・セクステット」、次いで1957年に「ハンク・モブレー&ヒズ・オール・スターズ」「ハンク・モブレー・クインテット」「ハンク」「ハンク・モブレー」と続きます。特に最後の2つなどもうちょっと何とかならんかったんかい!とツッコみたくなりますね。ジャズ愛好家はレコード番号を暗記したり(本作ならBN1560)しているようですが、個人的には共演メンバーで覚えるのが良いと思います。本作「ハンク」と続く「ハンク・モブレー」はどちらも3管編成のセクステットですが、前者がドナルド・バード(トランペット)とジョン・ジェンキンス(アルト)、後者の方がビル・ハードマン(トランペット)とカーティス・ポーター(アルト)です。メンバー的には本作の方がやや豪華ですかね。ちなみに本作のリズムセクションはボビー・ティモンズ(ピアノ)、ウィルバー・ウェア(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)です。
全5曲で前半2曲”Fit For A Hanker”"Hi Groove, Low Feedback"はモブレーのオリジナル。どちらもマイナーキーながらグルーヴ感を合わせ持つ典型的ハードバップです。ただ、両方ともどこかで聴いたような曲調でオリジナリティにはやや欠けるかも。個人的には後半3曲(レコードで言うとB面)の方が好きです。3曲目"Easy To Love"はコール・ポーター作の有名スタンダードですが、通常はバラードまたはミディアムテンポで演奏される曲を思い切ってアップテンポで演奏しています。これが素晴らしい出来で、メンバー全員の疾走感溢れるソロが最高です。4曲目”Time After Time”も有名スタンダードですが、こちらは原曲通りの美しいバラード演奏。5曲目は、「異教徒たちの踊り」の邦題で知られるバド・パウエルの”Dance Of The Infidels”で華やかに締めくくります。
演奏ですが、リーダーであるモブレーの歌心溢れるテナーはもちろんのこと、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったドナルド・バードのブリリアントなトランペット、そして幻のアルト奏者ジョン・ジェンキンス(以前本ブログでもご紹介しました)のプレイが聞けるのもハードバップ好きには嬉しい限りです。ピアノのボビー・ティモンズも後のソウルフルとした印象はなく、正統派のプレーを聞かせてくれます。