本ブログではタイトル通り黒人ジャズ、中でもハードバップを中心に紹介していますが、白人ジャズマンにも好きなアーティストがたくさんいます。中でもスタン・ゲッツ、ビル・エヴァンス、アート・ペッパーの3人はやはり別格ですね。彼らに共通して言えるのはアドリブの創造性の高さ、かつそれをあくまでメロディアスで聴きやすい演奏に消化しているところですね。3人ともまさに天才と言って良いと思います。今日取り上げるアート・ペッパーはデクスター・ゴードンら同時代の多くのジャズマンと同様に麻薬中毒で何度もキャリアを中断しましたが、1950年代後半は比較的順調に演奏活動を行っていた頃で(とは言えドラッグ絡みの小さなトラブルは絶えなかったようですが)、本作もその頃に発表された彼の代表作の一つです。後にブルーノートが版権を買い取ってCDで再発売しましたが、もともとはイントロというLAのマイナーレーベルに残されたレコードです。録音年月は1956年12月から1957年1月にかけてで、メンバーはラス・フリーマン(ピアノ)、ベン・タッカー(ベース)、チャック・フローレス(ドラム)です。
曲は全8曲でスタンダードが4曲、ペッパーのオリジナルが4曲という構成です。オリジナル曲では最初と最後に"Blues In"と"Blues Out"という即興のブルースが配置されています。ベースのみのデュオでペッパーのアルトが存分に堪能できますが、個人的にはやはりピアノとドラム入りの方が好きですね。疾走するリズムセクションをバックにペッパーがほとばしるようなソロを聴かせる”Cool Bunny”が最高です。スタンダードは”Bewitched, Bothered And Bewildered""When You're Smiling""Stompin' At The Savoy""What Is This Thing Called Love?"と全部有名な曲ばかり。選曲自体はベタですが、そこはさすがにペッパーで、独創性に満ちたソロで聴く者を魅了します。特に美しいバラードの"Bewitched"とスインギーな"When You're Smiling"が出色の出来です。ペッパーの陰に隠れていますが、ラス・フリーマンを中心とするトリオの堅実な演奏も聴きモノです。