ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ミルト・ジャクソン/ビッグ・バグス

2012-05-19 23:37:12 | ジャズ(ビッグバンド)
本日は久々にジャズのアルバムを取り上げたいと思います。ブログ名に“ハードバピッシュ”と入ってるように、当初はジャズ特にハードバップの名盤もたくさん取り上げるつもりでしたが、最近はクラシックにどっぷりはまっていたのでジャズはすっかりご無沙汰でした。ところが先日沖縄旅行中にふと立ち寄ったレコードショップで関西では見かけないレアCDを何枚も発見!喜び勇んで買い込んでしまいました。



今回UPするのはそのうちの1枚、ミルト・ジャクソンの「ビッグ・バグス」です。ミルトは言わずと知れたモダンジャズ随一のヴァイブ奏者。残した名盤も「オパス・デ・ジャズ」「プレンティ・プレンティ・ソウル」「バグス・アンド・トレーン」と数知れず。MJQ名義での諸作品も有名ですね。ただ、リヴァーサイドから1962年に発売されたこの「ビッグ・バグス」は結構マイナーなんじゃないでしょうか?

ミルトにしては珍しいビッグバンド形式の作品で、アレンジャーは曲によってタッド・ダメロンとアーニー・ウィルキンスが務めています。参加メンバーも豪華で、トランペットにクラーク・テリー、ナット・アダレイ、サックスにジェローム・リチャードソン、ジミー・ヒース、ジェイムズ・ムーディ、トロンボーンにジミー・クリーヴランド、メルバ・リストンらの名前が見られます。あと、ビッグバンドなので目立ちませんが、リズムセクションはハンク・ジョーンズ(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、そしてフィリー・ジョー・ジョーンズとコニー・ケイが交代でドラムを叩いてます。ただ、これだけの面子を揃えながら彼らは伴奏に徹しており、ソロはほとんどミルトのヴァイブのみ。もったいないと言えばもったいないですが、ジャズ黄金期ならではの贅沢な無駄遣いとも言えます。

曲は“'Round Midnight”“You'd Be So Nice To Come Home To”“Star Eyes”とジャズの定番がずらりと揃っていますが、3~4分の短い演奏が主体で、そこが若干物足りないのは否めません。悪く言えば“豪華ビッグバンドで人気曲をダイジェストでやりました”的な安易さが感じられる内容。ただ、ミルトのマレット捌きは相変わらず安定してますし、ダメロン作のバラード“The Dream Is You”やミルトの自作曲“Echoes”など隠れた名曲も収録されているので一聴の価値があるのは事実です。ニューヨークの夜景が描かれたジャケットも秀逸ですね。
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ドヴォルザーク/スターバト・マーテル

2012-05-12 08:23:23 | クラシック(声楽)

本日はドヴォルザークの声楽曲「スターバト・マーテル」を紹介します。「スターバト・マーテル」とはラテン語で“悲しみの聖母”という意味で、磔にされたイエス・キリストを聖母マリアが嘆き悲しむ様子を歌にしたものです。歌詞はあらかじめ決まっていて、後は作曲家がメロディを付けるという形式です。古くから多くの作曲家がこの「スターバト・マーテル」に取り組んでいますが、バロック時代のペルゴレージ、ロマン派時代のロッシーニと並んで、このドヴォルザークの作品が有名です。ドヴォルザーク自身のキャリアではわりと初期の作品で、彼が30代後半に書かれた作品だそうです。

曲はさすがに宗教音楽だけあって敬虔な雰囲気に満ちあふれています。なので「新世界」やチェロ協奏曲あたりのドラマチックさを求めて聞くと肩透かしを食らうかもしれません。悲しみをテーマにした曲だけあって、特に前半部は暗く重々しい雰囲気で始まります。特に第2曲「キリストの御母の」のアルト独唱、第4曲「わが心をして」のバス独唱あたりは重々しいですね。ところが第5曲「わがためにかく傷つけられ」あたりからはドヴォルザークらしい親しみある旋律が出てくるようになります。この流れは第8曲「われにキリストの死を負わしめ」まで続きます。第9曲「聖なる童貞女よ」のアルト独唱から再び哀愁を帯びた旋律が中心となり、最終曲「肉身は死して朽つるとも」でクライマックスを迎えます。最後の壮大な合唱が聴きモノです。



CDはマルティン・トゥルノフスキー指揮群馬交響楽団のものを買いました。クーベリックのCDも有名ですが、あちらはハイドンのミサ曲も入った2枚組なのに対し、こちらは「スターバト・マーテル」のみで1枚のCDに収まっているのが魅力です。群馬交響楽団は文字通り群馬県の地方オケですが、日本を代表する指揮者である高関健を長く常任指揮者に迎え、非常にレベルの高いオケとして知られています。この「スターバト・マーテル」では指揮者のトゥルノフスキーはじめ4人の独唱も全てチェコ人を迎え、ドヴォルザークの世界を見事に再現しています。

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ゴルトマルク/ヴァイオリン協奏曲第1番

2012-05-10 23:17:29 | クラシック(協奏曲)
本日はカール・ゴルトマルクのヴァイオリン協奏曲を取り上げたいと思います。ゴルトマルクと言われてもピンと来ない方も多いと思いますが、19世紀末にウィーンで活躍したユダヤ系ハンガリー人の作曲家です。オペラや交響曲、室内楽作品も残しているそうですが、今でも演奏されるのは辛うじてこのヴァイオリン協奏曲ぐらいですね。ただ、この作品に関しては確かに良い出来で、ヴァイオリンの隠れ名曲に数えても良いのではないでしょうか?

第1楽章、オーケストラの導入部のあとにメランコリックなヴァイオリンソロが主題を奏でます。中間部に挿入されるオーケストラによる夢見るような旋律が印象的。第2楽章は美しいアンダンテ。すすり泣くようなヴァイオリンがやや過剰なほどロマンティックなメロディを紡ぎます。第3楽章、冒頭のメロディははどこかで聞いたことあるなと思ったら、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲第3楽章にそっくりです。ただ、その後はやや哀愁を帯びた曲調でフィナーレに向かいます。全体的に独創性や革新性には乏しいですが、良い意味でドイツロマン派の伝統をしっかり受け継いだ名曲だと思います。



CDはサラ・チャンのヴァイオリン、ジェイムズ・コンロン指揮ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団のものを買いました。サラ・チャンは韓国系アメリカ人のヴァイオリニストで10歳でメジャーレーベルで録音を行った神童として知られています。ゴルトマルクの作品はレアなので、もともと選択の幅が限られていますが、本CDには同じくゴルトマルクの「縛られたプロメテウス」も収録されていますので、ゴルトマルク入門には最適ではないでしょうか?
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エルガー/エニグマ変奏曲

2012-05-09 19:07:59 | クラシック(管弦楽作品)
本日はエドワード・エルガーの「エニグマ変奏曲」を紹介します。エルガーと言えば、何と言っても行進曲「威風堂々」、それに「愛の挨拶」が非常にポピュラーですが、他にも3つの交響曲と2つの協奏曲、そして多くの管弦楽作品を残しています。ただ、個人的な感想を言うと、今までに聴いた交響曲第1番、ヴァイオリン協奏曲、チェロ協奏曲などはあまり親しみを持てませんでした。私にとってのエルガーの代表曲は断然この「エニグマ変奏曲」です。

作品は全部で14の変奏曲からなっており、それぞれにエルガーの友人のイニシャルやニックネームが付いています。各曲の主題には個々の人物のキャラクターが反映されているらしいですが、あまり細かいことは考えずに全体で1つの曲として楽しむことをお薦めします。ハイライトは第10曲の「ニムロッド」でしょうか?前半部分の軽妙洒脱な雰囲気から一転して、荘厳さに満ちあふれた名曲です。あと、勇壮な最後のフィナーレもいいですね。



CDはレナード・バーンスタイン指揮BBC交響楽団のものを買いました。このCDには他にエルガーの代表作「威風堂々」と「モガル土侯たちの行進曲」が入っています。「威風堂々」は今さら説明不要ですね。いかにも軍隊の行進曲風の序奏部から、中間部に現れる雄大な旋律を聴いて胸が熱くならない人がいるのでしょうか?イギリスでは「希望と栄光の国」という歌に編曲され、今や第2の国歌的な存在になっているらしいです。わかりますね。日本人の私でも思わず「女王陛下万歳!」と叫んでしまいそうですもの。きっと聴いた人、特に男子の胸を熱くする何かがあるのでしょう。

「モガル土侯~」は「インドの王冠」という作品からの1曲。モガルって何じゃ?と思いますが、歴史の教科書でならったムガール帝国のことらしいです。曲自体は特にどうということはありません。

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ボロディン/交響曲第2番、中央アジアの草原にて 他

2012-05-07 22:20:07 | クラシック(交響曲)

本日はロシアの作曲家、アレクサンドル・ボロディンを取り上げたいと思います。彼は音楽史的にはムソルグスキーやリムスキー=コルサコフらとともに「ロシア五人組」の一員として活躍し、ロシア音楽の発展に貢献した人物と位置付けられています。とは言え、一般的には「だったん人の踊り」を作曲した人、と言った方が通りが良いでしょう。この曲は本当に有名なので、みんなどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?

さて、そんなボロディンの作品ですが、たいていロシア音楽特集で「だったん人の踊り」や交響詩「中央アジアの草原にて」が単品で収録されているケースが多く、ボロディンだけを集めたCDはほとんどありません。そんな中、今日紹介するネーメ・ヤルヴィ指揮イェーテボリ交響楽団のCDは上記2曲に加え、「交響曲第2番」「夜想曲」とボロディンの代表作をもれなく収録した非常に貴重なCDと言えるでしょう。



まず、「交響曲第2番」。決して録音数の多いとは言えない作品ですが、これは知られざる交響曲の名品と言っていいのではないでしょうか?第1楽章、ベートーヴェンの「運命」を思わせるような重々しい弦のアンサンブルから始まりますが、中間部で一転して牧歌的な旋律が曲にアクセントをつけます。続く軽快なスケルツォの第2楽章を経て、本曲のハイライトとも言うべき第3楽章へ。ボロディンの真骨頂とも言うべき歌心あふれる旋律がゆったりと全編を流れます。第4楽章は勇壮なフィナーレで幕を閉じます。

続く「夜想曲」はもともと弦楽四重奏曲第2番の第3楽章として書かれたものですが、あまりにもメロディが美しいため後にオーケストラ用に編曲され、今ではそちらの方が有名になってしまいました。実にロマンチックで歌心にあふれた名旋律です。

「中央アジアの草原にて」は7分あまりの交響詩で、タイトル通り中央アジアのステップ地帯を隊商が進む様を描いています。旋律はアジアと言うより、ロシア的な雰囲気が強いですが、実に雄大かつ美しいメロディです。

最後はオペラ「イーゴリ公」からの抜粋です。有名な「だったん人の踊り」はこの中の1曲で、主人公のロシアの英雄イーゴリ公がだったん人(直訳するとポロベツ人)に捕らわれた際に、遊牧民族の踊りと歌が披露されるシーンの曲です。オペラ自体は正直マイナーですが、挿入曲であるこの曲はその余りに魅力的な旋律ゆえにもはや独立した作品として演奏されるようになりました。どことなく郷愁を誘う印象的な女性コーラスの後、ドラムが打ち鳴らされる激しい中間部と続きます。もう1つ「序曲」も収録されていますが、こちらは英雄物のオペラにふさわしい勇壮な曲です。

以上、どれを取っても魅力的な曲ばかりで、ボロディンの作曲家としての偉大さを感じずにはおれません。ボロディン=だったん人の踊りという認識しかない人は、是非他の曲も聴いてほしいです。

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