5日に「秋田県公立高等学校入学者選抜 一般選抜」、いわゆる公立高校の一般入試が行われた。
ここでの「公立高校」とは、各秋田県立高校と秋田市立秋田商業高校のこと。
かつては、近隣市町村が共同で運営していた「公立(組合立)合川高校」があったが、市町村合併で北秋田市立になって、現在は県立秋田北鷹高校に統合。(開校当初は私立秋田短大附属合川高校だったので、私立→組合立→市立→県立と変遷したことになる)
それから、能代市立能代高校【9日訂正】能代商業高校は、今年3月で県立能代北高校と統合して県立能代松陽高校となるので、市立高校としての入試は行わなかったはず。
【9日訂正】上記「能代高校」とあったのは「能代商業高校」の間違いでした。すみません。
なお、中高一貫の秋田市立御所野学院は、高校からの編入はないそうなので5日の試験はなかったはず。(国立秋田高専や美短(来年度から美大)附属高等学院は、高等学校ではないので、もちろん別)
秋田県の高校入試の学科試験は、昔は9教科とか3教科だった時期もあったと聞くけれど、今は5教科。【2016年6月28日追記】秋田県の高校入試が9教科から3教科に変更することが決まったのが、1966(昭和41)年6月28日だそう。具体的に何年度の入試から変更されたのかは分からない。
【2021年12月28日追記】2021年12月28日付 秋田魁新報「シリーズ・時代を語る」で元・秋田県教育次長の佐々田亨三氏の発言で、3教科になったのが「昭和42(1967)年春」と判明。3教科は「昭和55年春の入試まで」で1981年度から5教科が続いていることになる。したがって(ストレートの受験生は)1951~1965年度生まれの14学年が、3教科だった。ただし、下の追記のように、3教科+作文という時期もあったらしい。
教科減には生徒・教員の負担を減らし、授業内容の充実を図る狙いがあったようで、「国語は社会もきちんと学んでいけないと解けない、数学では理科の理解度も測ることができる」という理由付け(コジツケでは)がされていたそうだ。佐々田氏は3教科入試は、試験外科目の学力低下など「今考えても、教科減が本当に良かったのか、疑問が拭えません。」とし、「高校入試は当面、5教科が適当と捉えています。」としている。(以上追記)
全国的に多くの県で同様のようだが、5教科の試験と面接を1日で行う。
北陸地方では、同じ試験内容でも2日間にまたがってゆっくりと行う県もあるそうだ。
【2017年12月16日追記・秋田県の9教科入試当時のこと】
2017年12月15日付秋田魁新報「シリーズ時代を語る」本荘山の会会長・荘司昭夫氏(1941年生まれ)の連載4回目で、1957年の県立本荘高校の入試科目について言及されていた。
当時は「中学校で習う全9教科が入試で出題されていました。」ものの、「当時の入試は英語か技術・家庭のどちらかを選ぶことができたのです。」だそう。
実際には9教科でなく8教科を勉強して受験すれば良かったということのようだ。今の感覚では、9教科の中で、どうして英語/技家の2教科だけ部分的に選択制となっていたのか、理解し難いが、当時としては、英語をさほど重要視していないとかの理由で、そんなもんだったのだろうか。
本荘高校以外の高校でも、同じ選択だったのだろうか。
また、当時は男子が技術、女子が家庭と男女で科目が分かれていたと思うが(1976年度生まれまではそうだった)、試験も男女で別だったのだろうか。とすれば、試験問題としては10教科あったことになる。
【2018年3月12日追記・秋田県の面接について】
2018年3月12日付秋田魁新報「内外の歴史」欄によれば、1985年3月12日に実施された入試(つまり1985年度入試)から、「秋田、湯沢、大曲工を除く60校で筆記試験後「面接」を実施」とある。残り3校がどうして実施しなくて、いつから初めたのかは不明だが、1969年度生まれの人から大部分が面接を受けるようになったようだ。思ったより遅い。
【2021年5月12日追記・この記事のコメントより、1975年度の入試科目について】
3教科時代だったわけだが、今は国語の問題の1つである「作文」が国語と独立して試験されていたようだ。(以上追記)
私立学校が5校(うち秋田市内に4校、さらにうち2校が女子高)しかない秋田県においては、公立高校の一般入試はある意味とても重要な日。高校入試にちなむいろいろ。
●解答速報
秋田では、高校入試の日の夕方、テレビで「解答速報」すなわち「学科試験の解答と解説を伝える特番」が生放送される。今年は、民放3局が揃って16時台に放送した。
インターネットテレビガイドより。左からABS、AAB、AKT
こんなことをする地域って、他にあるのだろうか?
今年の状況をざっと見てみると、青森県、富山県、福井県では放送されなかった模様。
岩手県や静岡県では、いずれもTBS系列局(ラジオもやってる老舗局)だけが放送。大都市圏の愛知県でも、テレビ東京系列局が放送しているので、まあ、地域・テレビ局によってやったりやらなかったりということかもしれない。
秋田のように、複数の局で解答速報をするところは、北海道が5局のうち3局、山口県が秋田同様3局中・全3局で放送した。
全国的には、解答速報の番組は、予備校や進学塾がスポンサーとなり、解説もそこの講師が出演して行なっているものが多いようだ(山口は3局とも予備校講師が解説)。
秋田でも、予備校講師が出演する局も今はある。だけど、ほかの局では、公立中学校の先生が出演して解説する。
僕が中学生だった平成初期は、AAB開局前でABSとAKTの2局しかなかったが、2局とも解答速報を放送し、どちらも予備校ではなく、学校の先生が出ていた。
中学校の先生を生でテレビに出すとなれば、スタジオは秋田市にあり、平日だから制約がある。
出演するのは秋田市立中学校の先生だけだと思う。年代は30歳代前後の人が多いか。当日は3年部の先生は各高校の引率に出ていてテレビ出演どころじゃないだろうから、おのずと1・2年部所属の先生だったのだろう。
考えてみれば、中学校の先生が出演して高校入試の解説をするというのは、どこかヘンな感じもする。
中学校の先生の出演は、全国的にはどんなもんなんだろうか。スポンサーの予備校にすれば、解説も自前で行えば、説得力も宣伝効果も高まるだろうから、そちらへシフトしているのかもしれない。
【2021年5月12日追記・学校の先生が出演することについて、関連するかもしれない話】
魁「中学自習室」の記事へのコメントで、こんな話を教えてもらった。1974年には、紙面と連動してABSで「ラジオ講座」が放送されていて、秋田市内の中学校教員が出演していたとのこと。
解答速報とどちらが先かは分からないが、中学校の先生が放送で解説するという形は同じ。どちらかがきっかけとなってもう一方ができたのかもしれないなどと憶測。(以上追記)
ところで、解答速報の放送時間帯が気になった。全国的には、16時台か17時台に放送している。
秋田県では3局とも16時台の放送なわけだが、これって早すぎると思う。学科試験が15時15分に終了し、以後、順次面接なので、16時に帰宅できる受験生はごく限られている。(僕が受験した時は、16時ちょうどに高校を出た記憶があるが、放送時間は少し遅かったような気もする)
以前はどこかの局で深夜に再放送していたが、今はないようだし。まあ、自分で録画して見なさいということでしょうか。
ちなみに、山口県では、3局ともいつもはネットしている夕方の全国ニュースを一部休止(開始を遅らせて)、IBC岩手放送でも、時代劇の再放送を休んで、それぞれ17時台に解答速報を放送している。
今は、県教育庁自身や一部予備校が、すぐにネット上に解答を公開するようにもなった。テレビで、しかも民放各局がこぞって解答速報すること自体の意味合いも薄れてきているように思えてしまうが、解答速報はこれからも放送され続けるだろうか。【末尾リンクの続編の通り、この後、中学校教員の出演がなくなったり、放送しない局ができたりして、2021年春にはどこも放送しなくなってしまった。】
●新聞解説
テレビと同じようなことは、翌日の新聞でも。
大学入試センター試験でも同じだが、問題と解答が掲載される。秋田魁新報は本紙に、全国紙は別刷り。
さらに秋田魁新報では、翌日の紙面を一面割り振って、5教科の出題意図や解説が掲載される。文章による解説は、テレビ同様に中学校の先生によるもの。
●問題
上記の通り、試験問題と解答は、ネットや新聞で公開される。
県教育庁高校教育課のホームページから、国語の試験問題をダウンロードしてみた。表紙はちゃんと表示されるが、スクロールすると、
真っ白?
「次の文章を読んで、1~6の問いに答えなさい。」とあるだけで、あとは真っ白。PDFファイルが壊れたのかと思って、再度ホームページを見ると、「大問二・三・五に関しては、著作権の関係で掲載できません。」だそうだ。
該当する問題では、文章だけでなく、著作権とは関係ないはずの問題文も見られない。解答は見られる。
というと、大問5つの国語の問題の半分以上が見られないことになる。
見られるのは、「聞くこと」に関する検査の「一」と、「枕草子」からの「四」だけ。
ところが、新聞には、大問二・三・五が文章部分も含めて公表されている。テレビの解答速報でも映ったはず。
大学入試センター試験の国語の文章題をネットで見てみたが、こちらは文章部分もすべて公開されている。また、他県では文章の部分だけ「省略」とし、問題文は見られるようにしている所があった。
ちなみに、大問二は「平田オリザ『わかりあえないことから』」、三は「山本一力『菜種晴れ』」が出典元の、普通の問題文。
大問五は、作文の問題。なんで作文に著作権が絡むのかと、不思議だが、こんな問題。
「次の言葉を読んで、あなたが思ったことや考えたことを、後の〈条件〉にしたがって書きなさい。」とあり、後に日野原重明氏(聖路加国際病院名誉院長)による一文が出ている。(条件とは、題名不要で200~250字)
なるほど。
たった1行の一文を使っただけでも、著作権が出てくるのは当然のことだが、問題をまるまる消してしまう秋田県教育庁の対応は、いかがなもんだろうか。
●書き取り問題
国語の問題を見ようと思ったのは、わけがある。漢字の書き取りの問題を知りたかったから。
今回は、読みも含めて、次の問題が出た。
高校入試でこの漢字。どう思われるでしょうか?
個人的には「家督」「生地」が意表を突いた、やや難しい出題に感じた。他は簡単なようにも感じるが、まあ妥当かもしれない。
僕が高校入試の漢字にこだわるのは、こんな思い出があるから。
僕が受験した年は「ウツクしい」というのが出題された。「美しい」。
運良く合格し、入学しておそらく最初の国語の授業で、現れた先生がこんなことをお話しになった。
「「美しい」なんて簡単な漢字を高校入試に出すなんて、ずいぶん見くびられたと思わないか? 秋田県の教育なんてこんなもんなんだ!」(←若干誇張して記憶しているかもしれません)
聞いた生徒の多くが、たしかにそうだと納得したはず。
そう話された先生は、その後、順調に出世されて、入試問題を作成・監修する側にもいらしたことがあるようだ。(その先生が実際に問題を作ったか、書き取りの内容に口出しできたかどうかは不明)
時が経って、今は「遠く」。「美」は小学校3年生、「遠」は2年生で習う漢字だそう。うーん…
ただ、改めて調べたり考えたりすれば、「美しい」を高校入試に出題すること自体、間違いではなかったのかもしれない。
県内全部の高校で共通の問題なのだから、いろんな受験者がいる。極端に難しい漢字を出題すれば、県全体での正解率が低下し、試験問題として成り立たなくなってしまう。全国的に公立高校入試に出題される漢字の書き取りは、小学校で習う漢字(教育漢字)が中心のようでもある。
【2018年4月13日追記】2018年4月2日付秋田魁新報・中学自習室の第1回で漢字の出題基準が説明されていた。「秋田県公立高等学校入学者選抜学力検査問題作成方針」において「漢字については、常用漢字を読む力と学年別漢字配当表に示されている漢字を書く力」について出題するとのこと。書き取りは小学校で習った文字しか出題しないことが明示されていたのだった。(以上追記)
それに、書き取りは、使われた文章の中から抜き出して出題されるのが一般的だから、文章中に書き取りに適当なレベルの箇所を探すことが大変かもしれない。
その先生も、当時は若くて、そんな事情をご存じなかったのだろう。
でも、学力日本一の秋田県の小中学生には、もっとレベルの高い問題でもいいかもしれませんよ。
【2014年3月6日追記】翌平成26年入試では、書き取りに「察知」「保てる」「雑誌」「大勢(おおぜい)」が出題された。
2013年よりは難易度が上がって、良問のような気がする。
【2015年3月6日追記】平成27年度入試では、漢字の読み書き、慣用句、敬語の問題をまとめて大問「二」(「一」は「聞くこと」に関する調査=リスニング)に独立して出題された。過去にない出題形式。
文章題から抜き出して出題するよりも、このほうがやりやすいだろうし、たしか青森県などでは以前からこの方式。
漢字は読みが「体裁」「費やす」、書き取りが「討議」「奮って」「専念」。昨年同様、一定のレベルがありそう。県教委では出題の狙いとして、「基礎的・基本的な言語事項。」「(これまでの全国学力テストなどによって)明らかになった弱点が補強されているか。」などとしている。
●合格発表
合格発表は、3月12日に各高校に掲示(時間は学校ごとに異なる)し、ホームページにもアップ。今は当然のごとく、受験番号だけの発表。
今からすれば信じられないが、昔は合格者の氏名も発表され、しかもそれがテレビで中継されていた。
僕の頃はワープロ専用機が普及していたので、学校によっては合格発表にも使っていたような気がするが、巻紙に毛筆の手書きで縦書きしたものを掲示する学校もまだ多かった。筆を揮える先生はそう多くなく、多くても筆跡があちこちで違えば見た目が悪いわけで、いずれにしても少人数での作業となり、書く担当になった先生は苦労していたようだ。
昔は16時に発表する所が多く、解答速報同様に民放テレビ局(たしか2局とも)が特番を組んでいた。秋田市内の高校から順に、一部は中継を出し(各校の掲示板を直接撮影するので、ちらつく雪や見に来た人の頭が映ったりした。合格者へのインタビューもあったか)、残りはスタジオで紙の名簿(ワープロ作成の横書き)をカメラで映していたかと思う。
もちろん、新聞にも掲載された。
【2018年2月24日追記】大学入試での話だが、1996年に新聞に合格者の氏名を載せるのはプライバシーの侵害だと日本弁護士連合会が各社へ要望、文部省(当時)が各大学に配慮するよう通知したとのこと。これが地方の高校入試へも波及していくのだろう。
※合格発表に関する2014年の記事
【2014年3月31日追記】記事と直接の関係はないけれど、宝塚音楽学校の合格発表について。
屋外で合格者の受験番号を掲出し、受験生や保護者が詰めかけるのは、よくある光景(服装は華やかだけど)。
合格発表の時間になると、覆っていた紙や布を剥がしたり、裏返した掲示板を表にしたり、フライング気味にえっちらおっちら運んできたり、やり方は学校によってさまざまだが、宝塚では、蝶番がついていて半分に折りたためる掲示板を用い、それを開く方式。美的といえば美的か。
ユニークなのは、発表の作業を教職員でなく生徒(2年制なので1つ先輩か)が行うこと。受験会場の設営を現役生徒が行うのは公立高校などで広く行われているし、それと同じではある。
さらに宝塚ならではなのが、「ただ今から、合格者を発表致しますっ!」と、舞台の一場面のようなセリフ付きなこと。ニュースでこのシーンを何回見ても、失礼ながら笑ってしまう。
(以上追記)
秋田では、修学旅行の安否を伝えるテレビCMが放映されるとか、一般の人が亡くなった時に新聞広告が出る(死亡広告。秋田県外でも地方では見られる)とか、他の地域や特に大都市圏に住む人が驚く“風習”があるものだが、高校入試に関しても、それに相当するものがあるみたいだ。そして、時が経てば変化するものもあるもんだ。
※その後、2016年の話題。
ここでの「公立高校」とは、各秋田県立高校と秋田市立秋田商業高校のこと。
かつては、近隣市町村が共同で運営していた「公立(組合立)合川高校」があったが、市町村合併で北秋田市立になって、現在は県立秋田北鷹高校に統合。(開校当初は私立秋田短大附属合川高校だったので、私立→組合立→市立→県立と変遷したことになる)
それから、能代市立
【9日訂正】上記「能代高校」とあったのは「能代商業高校」の間違いでした。すみません。
なお、中高一貫の秋田市立御所野学院は、高校からの編入はないそうなので5日の試験はなかったはず。(国立秋田高専や美短(来年度から美大)附属高等学院は、高等学校ではないので、もちろん別)
秋田県の高校入試の学科試験は、昔は9教科とか3教科だった時期もあったと聞くけれど、今は5教科。【2016年6月28日追記】秋田県の高校入試が9教科から3教科に変更することが決まったのが、1966(昭和41)年6月28日だそう。
【2021年12月28日追記】2021年12月28日付 秋田魁新報「シリーズ・時代を語る」で元・秋田県教育次長の佐々田亨三氏の発言で、3教科になったのが「昭和42(1967)年春」と判明。3教科は「昭和55年春の入試まで」で1981年度から5教科が続いていることになる。したがって(ストレートの受験生は)1951~1965年度生まれの14学年が、3教科だった。ただし、下の追記のように、3教科+作文という時期もあったらしい。
教科減には生徒・教員の負担を減らし、授業内容の充実を図る狙いがあったようで、「国語は社会もきちんと学んでいけないと解けない、数学では理科の理解度も測ることができる」という理由付け(コジツケでは)がされていたそうだ。佐々田氏は3教科入試は、試験外科目の学力低下など「今考えても、教科減が本当に良かったのか、疑問が拭えません。」とし、「高校入試は当面、5教科が適当と捉えています。」としている。(以上追記)
全国的に多くの県で同様のようだが、5教科の試験と面接を1日で行う。
北陸地方では、同じ試験内容でも2日間にまたがってゆっくりと行う県もあるそうだ。
【2017年12月16日追記・秋田県の9教科入試当時のこと】
2017年12月15日付秋田魁新報「シリーズ時代を語る」本荘山の会会長・荘司昭夫氏(1941年生まれ)の連載4回目で、1957年の県立本荘高校の入試科目について言及されていた。
当時は「中学校で習う全9教科が入試で出題されていました。」ものの、「当時の入試は英語か技術・家庭のどちらかを選ぶことができたのです。」だそう。
実際には9教科でなく8教科を勉強して受験すれば良かったということのようだ。今の感覚では、9教科の中で、どうして英語/技家の2教科だけ部分的に選択制となっていたのか、理解し難いが、当時としては、英語をさほど重要視していないとかの理由で、そんなもんだったのだろうか。
本荘高校以外の高校でも、同じ選択だったのだろうか。
また、当時は男子が技術、女子が家庭と男女で科目が分かれていたと思うが(1976年度生まれまではそうだった)、試験も男女で別だったのだろうか。とすれば、試験問題としては10教科あったことになる。
【2018年3月12日追記・秋田県の面接について】
2018年3月12日付秋田魁新報「内外の歴史」欄によれば、1985年3月12日に実施された入試(つまり1985年度入試)から、「秋田、湯沢、大曲工を除く60校で筆記試験後「面接」を実施」とある。残り3校がどうして実施しなくて、いつから初めたのかは不明だが、1969年度生まれの人から大部分が面接を受けるようになったようだ。思ったより遅い。
【2021年5月12日追記・この記事のコメントより、1975年度の入試科目について】
3教科時代だったわけだが、今は国語の問題の1つである「作文」が国語と独立して試験されていたようだ。(以上追記)
私立学校が5校(うち秋田市内に4校、さらにうち2校が女子高)しかない秋田県においては、公立高校の一般入試はある意味とても重要な日。高校入試にちなむいろいろ。
●解答速報
秋田では、高校入試の日の夕方、テレビで「解答速報」すなわち「学科試験の解答と解説を伝える特番」が生放送される。今年は、民放3局が揃って16時台に放送した。
インターネットテレビガイドより。左からABS、AAB、AKT
こんなことをする地域って、他にあるのだろうか?
今年の状況をざっと見てみると、青森県、富山県、福井県では放送されなかった模様。
岩手県や静岡県では、いずれもTBS系列局(ラジオもやってる老舗局)だけが放送。大都市圏の愛知県でも、テレビ東京系列局が放送しているので、まあ、地域・テレビ局によってやったりやらなかったりということかもしれない。
秋田のように、複数の局で解答速報をするところは、北海道が5局のうち3局、山口県が秋田同様3局中・全3局で放送した。
全国的には、解答速報の番組は、予備校や進学塾がスポンサーとなり、解説もそこの講師が出演して行なっているものが多いようだ(山口は3局とも予備校講師が解説)。
秋田でも、予備校講師が出演する局も今はある。だけど、ほかの局では、公立中学校の先生が出演して解説する。
僕が中学生だった平成初期は、AAB開局前でABSとAKTの2局しかなかったが、2局とも解答速報を放送し、どちらも予備校ではなく、学校の先生が出ていた。
中学校の先生を生でテレビに出すとなれば、スタジオは秋田市にあり、平日だから制約がある。
出演するのは秋田市立中学校の先生だけだと思う。年代は30歳代前後の人が多いか。当日は3年部の先生は各高校の引率に出ていてテレビ出演どころじゃないだろうから、おのずと1・2年部所属の先生だったのだろう。
考えてみれば、中学校の先生が出演して高校入試の解説をするというのは、どこかヘンな感じもする。
中学校の先生の出演は、全国的にはどんなもんなんだろうか。スポンサーの予備校にすれば、解説も自前で行えば、説得力も宣伝効果も高まるだろうから、そちらへシフトしているのかもしれない。
【2021年5月12日追記・学校の先生が出演することについて、関連するかもしれない話】
魁「中学自習室」の記事へのコメントで、こんな話を教えてもらった。1974年には、紙面と連動してABSで「ラジオ講座」が放送されていて、秋田市内の中学校教員が出演していたとのこと。
解答速報とどちらが先かは分からないが、中学校の先生が放送で解説するという形は同じ。どちらかがきっかけとなってもう一方ができたのかもしれないなどと憶測。(以上追記)
ところで、解答速報の放送時間帯が気になった。全国的には、16時台か17時台に放送している。
秋田県では3局とも16時台の放送なわけだが、これって早すぎると思う。学科試験が15時15分に終了し、以後、順次面接なので、16時に帰宅できる受験生はごく限られている。(僕が受験した時は、16時ちょうどに高校を出た記憶があるが、放送時間は少し遅かったような気もする)
以前はどこかの局で深夜に再放送していたが、今はないようだし。まあ、自分で録画して見なさいということでしょうか。
ちなみに、山口県では、3局ともいつもはネットしている夕方の全国ニュースを一部休止(開始を遅らせて)、IBC岩手放送でも、時代劇の再放送を休んで、それぞれ17時台に解答速報を放送している。
今は、県教育庁自身や一部予備校が、すぐにネット上に解答を公開するようにもなった。テレビで、しかも民放各局がこぞって解答速報すること自体の意味合いも薄れてきているように思えてしまうが、解答速報はこれからも放送され続けるだろうか。【末尾リンクの続編の通り、この後、中学校教員の出演がなくなったり、放送しない局ができたりして、2021年春にはどこも放送しなくなってしまった。】
●新聞解説
テレビと同じようなことは、翌日の新聞でも。
大学入試センター試験でも同じだが、問題と解答が掲載される。秋田魁新報は本紙に、全国紙は別刷り。
さらに秋田魁新報では、翌日の紙面を一面割り振って、5教科の出題意図や解説が掲載される。文章による解説は、テレビ同様に中学校の先生によるもの。
●問題
上記の通り、試験問題と解答は、ネットや新聞で公開される。
県教育庁高校教育課のホームページから、国語の試験問題をダウンロードしてみた。表紙はちゃんと表示されるが、スクロールすると、
真っ白?
「次の文章を読んで、1~6の問いに答えなさい。」とあるだけで、あとは真っ白。PDFファイルが壊れたのかと思って、再度ホームページを見ると、「大問二・三・五に関しては、著作権の関係で掲載できません。」だそうだ。
該当する問題では、文章だけでなく、著作権とは関係ないはずの問題文も見られない。解答は見られる。
というと、大問5つの国語の問題の半分以上が見られないことになる。
見られるのは、「聞くこと」に関する検査の「一」と、「枕草子」からの「四」だけ。
ところが、新聞には、大問二・三・五が文章部分も含めて公表されている。テレビの解答速報でも映ったはず。
大学入試センター試験の国語の文章題をネットで見てみたが、こちらは文章部分もすべて公開されている。また、他県では文章の部分だけ「省略」とし、問題文は見られるようにしている所があった。
ちなみに、大問二は「平田オリザ『わかりあえないことから』」、三は「山本一力『菜種晴れ』」が出典元の、普通の問題文。
大問五は、作文の問題。なんで作文に著作権が絡むのかと、不思議だが、こんな問題。
「次の言葉を読んで、あなたが思ったことや考えたことを、後の〈条件〉にしたがって書きなさい。」とあり、後に日野原重明氏(聖路加国際病院名誉院長)による一文が出ている。(条件とは、題名不要で200~250字)
なるほど。
たった1行の一文を使っただけでも、著作権が出てくるのは当然のことだが、問題をまるまる消してしまう秋田県教育庁の対応は、いかがなもんだろうか。
●書き取り問題
国語の問題を見ようと思ったのは、わけがある。漢字の書き取りの問題を知りたかったから。
今回は、読みも含めて、次の問題が出た。
大問二「トオく」「ハナって」「概念」「回避」
大問三「トドいて」「カクベツ」「家督」「生地」
大問三「トドいて」「カクベツ」「家督」「生地」
高校入試でこの漢字。どう思われるでしょうか?
個人的には「家督」「生地」が意表を突いた、やや難しい出題に感じた。他は簡単なようにも感じるが、まあ妥当かもしれない。
僕が高校入試の漢字にこだわるのは、こんな思い出があるから。
僕が受験した年は「ウツクしい」というのが出題された。「美しい」。
運良く合格し、入学しておそらく最初の国語の授業で、現れた先生がこんなことをお話しになった。
「「美しい」なんて簡単な漢字を高校入試に出すなんて、ずいぶん見くびられたと思わないか? 秋田県の教育なんてこんなもんなんだ!」(←若干誇張して記憶しているかもしれません)
聞いた生徒の多くが、たしかにそうだと納得したはず。
そう話された先生は、その後、順調に出世されて、入試問題を作成・監修する側にもいらしたことがあるようだ。(その先生が実際に問題を作ったか、書き取りの内容に口出しできたかどうかは不明)
時が経って、今は「遠く」。「美」は小学校3年生、「遠」は2年生で習う漢字だそう。うーん…
ただ、改めて調べたり考えたりすれば、「美しい」を高校入試に出題すること自体、間違いではなかったのかもしれない。
県内全部の高校で共通の問題なのだから、いろんな受験者がいる。極端に難しい漢字を出題すれば、県全体での正解率が低下し、試験問題として成り立たなくなってしまう。全国的に公立高校入試に出題される漢字の書き取りは、小学校で習う漢字(教育漢字)が中心のようでもある。
【2018年4月13日追記】2018年4月2日付秋田魁新報・中学自習室の第1回で漢字の出題基準が説明されていた。「秋田県公立高等学校入学者選抜学力検査問題作成方針」において「漢字については、常用漢字を読む力と学年別漢字配当表に示されている漢字を書く力」について出題するとのこと。書き取りは小学校で習った文字しか出題しないことが明示されていたのだった。(以上追記)
それに、書き取りは、使われた文章の中から抜き出して出題されるのが一般的だから、文章中に書き取りに適当なレベルの箇所を探すことが大変かもしれない。
その先生も、当時は若くて、そんな事情をご存じなかったのだろう。
でも、学力日本一の秋田県の小中学生には、もっとレベルの高い問題でもいいかもしれませんよ。
【2014年3月6日追記】翌平成26年入試では、書き取りに「察知」「保てる」「雑誌」「大勢(おおぜい)」が出題された。
2013年よりは難易度が上がって、良問のような気がする。
【2015年3月6日追記】平成27年度入試では、漢字の読み書き、慣用句、敬語の問題をまとめて大問「二」(「一」は「聞くこと」に関する調査=リスニング)に独立して出題された。過去にない出題形式。
文章題から抜き出して出題するよりも、このほうがやりやすいだろうし、たしか青森県などでは以前からこの方式。
漢字は読みが「体裁」「費やす」、書き取りが「討議」「奮って」「専念」。昨年同様、一定のレベルがありそう。県教委では出題の狙いとして、「基礎的・基本的な言語事項。」「(これまでの全国学力テストなどによって)明らかになった弱点が補強されているか。」などとしている。
●合格発表
合格発表は、3月12日に各高校に掲示(時間は学校ごとに異なる)し、ホームページにもアップ。今は当然のごとく、受験番号だけの発表。
今からすれば信じられないが、昔は合格者の氏名も発表され、しかもそれがテレビで中継されていた。
僕の頃はワープロ専用機が普及していたので、学校によっては合格発表にも使っていたような気がするが、巻紙に毛筆の手書きで縦書きしたものを掲示する学校もまだ多かった。筆を揮える先生はそう多くなく、多くても筆跡があちこちで違えば見た目が悪いわけで、いずれにしても少人数での作業となり、書く担当になった先生は苦労していたようだ。
昔は16時に発表する所が多く、解答速報同様に民放テレビ局(たしか2局とも)が特番を組んでいた。秋田市内の高校から順に、一部は中継を出し(各校の掲示板を直接撮影するので、ちらつく雪や見に来た人の頭が映ったりした。合格者へのインタビューもあったか)、残りはスタジオで紙の名簿(ワープロ作成の横書き)をカメラで映していたかと思う。
もちろん、新聞にも掲載された。
【2018年2月24日追記】大学入試での話だが、1996年に新聞に合格者の氏名を載せるのはプライバシーの侵害だと日本弁護士連合会が各社へ要望、文部省(当時)が各大学に配慮するよう通知したとのこと。これが地方の高校入試へも波及していくのだろう。
※合格発表に関する2014年の記事
【2014年3月31日追記】記事と直接の関係はないけれど、宝塚音楽学校の合格発表について。
屋外で合格者の受験番号を掲出し、受験生や保護者が詰めかけるのは、よくある光景(服装は華やかだけど)。
合格発表の時間になると、覆っていた紙や布を剥がしたり、裏返した掲示板を表にしたり、フライング気味にえっちらおっちら運んできたり、やり方は学校によってさまざまだが、宝塚では、蝶番がついていて半分に折りたためる掲示板を用い、それを開く方式。美的といえば美的か。
ユニークなのは、発表の作業を教職員でなく生徒(2年制なので1つ先輩か)が行うこと。受験会場の設営を現役生徒が行うのは公立高校などで広く行われているし、それと同じではある。
さらに宝塚ならではなのが、「ただ今から、合格者を発表致しますっ!」と、舞台の一場面のようなセリフ付きなこと。ニュースでこのシーンを何回見ても、失礼ながら笑ってしまう。
(以上追記)
秋田では、修学旅行の安否を伝えるテレビCMが放映されるとか、一般の人が亡くなった時に新聞広告が出る(死亡広告。秋田県外でも地方では見られる)とか、他の地域や特に大都市圏に住む人が驚く“風習”があるものだが、高校入試に関しても、それに相当するものがあるみたいだ。そして、時が経てば変化するものもあるもんだ。
※その後、2016年の話題。