足腰大丈夫な内に出来る限り、不要雑物処分・身辺片付け整理をしよう等と思い込んでからすでに久しいが、正直なかなか進んでいない。それでもここ2~3年には、押し入れや天袋、物置、書棚等に詰まっていた古い書籍類等をかなり大胆に処分してきた。ただ、中には「これ、面白そう・・」等と目が止まり、残してしまった書籍もまだまだ結構有る。その中に、漫画家赤塚不二夫著、元東京学芸大学附属高等学校教諭石井秀夫指導の古典入門まんがゼミナール「枕草子」(学研)が有る。多分、長男か次男かが、受験勉強中に使っていた「枕草子」の解説本・参考書の一つのようだが、錆びついた老脳でもなんとか読めそうな、まんがで描いたくだけた内容、その内いつか目を通してみよう等と仕舞い込んでいたものだ。ながびく新型コロナ禍、不要不急の外出自粛中、ふっと思い出して、やおら引っ張りだしてみた。当然のこと、本格的な「枕草子」解説本、参考書とは異なり、限られたサワリの部分に絞ったものであるが、学生時代に多かれ少なかれ齧っていたはずの日本の代表的な古典、清少納言の「枕草子」も、ほとんど覚えていないし、「古典」に疎く、苦手な人間でも、十分楽しめそうで、御の字の書である。
「かわいいもの、うれしいもの」・まんがゼミナール「枕草子」 その27
第276段 「うれしきもの」
十七の「うれしきもの」が、語られている段。内容は多様であるが、清少納言の勝ち気な性格が、窺われる。
「うれしいもの」
「まだ読んだことのなかった物語の一の巻を読んで、とても続きを読みたいと思っていて、その続きを読むことが出来た時」
「人の破り捨てた手紙をつなぎ合わせ、ぴったり合った時」
「とても悪い夢を見て、怖くて心配でたまらない時に、夢判断してもろて、安心出来た時、とてもうれしい」
「身分の高いお方の前に女房達大勢はべり、世間話をされる時に、ワテにぴったり目を合わせられた時」
「愛する人が、高貴なお方に「あれはなかなかしっかりした人物」なんて褒めて言われた時」
「パーティーの支度に、着物の艶出しをさせて、気になっていた仕上がりが、きれいに上がってきた時」
「長いことひどく患っていたのが、すっきり治った時。それが、愛する人の全快どしたら、自分の場合より、いっそうれしおます」
「えらい高慢ちきで、憎たらしい人が、不幸な目に遭うのも、うれしいわあ。こないな思いは、仏様のバチが当たるかもしれへんけど」
「メイド・イン・陸奥の上質紙が手に入った時。普通の紙でも、真っ白できれいやったらうれしい。世間が面白なくて、もうこの世に住みとうなくなった時でも、立派な筆、白い色紙、陸奥紙等、手に入ると、もうすっかり気分は良うなり、やっぱりこのまましばらく生きていようと思うでおます」
原文だよーん
うれしきもの。まだ見ぬ物語の一を見て、いみじうゆかしとのみ思ふが残り、見出でたる。さて、心劣りするやうもありかし。(略)、物合せ(ものあわせ)、なにくれと挑むことに勝ちたる、いかでかうれしからざらむ。また、我はなど思ひてしたり顔なる人はかり得たる。女どちよりも男はまさりてうれし。これが答(たふ)は必ずせむと思ふらむと常に心づかひせらるるもをかしきに、いとつれなく、何とも思ひたらぬさまにてたゆめ過ぐすも、またをかし。
(注釈)
うれしいもの。まだ読んでいない物語の第一巻を読んで、その続きを読みたいとしきりに思っている物語の続きの巻を見つけた時。それでいて、実際は、幻滅を感じることも有るものだよ。(略)、物合わせとか、何やかやと争う勝負事に勝った時は、どうしてうれしくないと言えるだろうか。実にうれしい。また、我こそは等と思って得意な様子をしている人を、知的な遊戯等で騙した時(勝った時)、その場合、女同士よりも、相手が男の場合だったら、いっそううれしい。この仕返しは、必ずしようと、相手が思っているだろうと始終気づかいされるのも面白いのに、相手が全く平気で、何とも思っていない様子でこちらを油断させて時を過ごすことも、また面白い。
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