昨年6月に図書館に予約(リクエスト)していた、畠山健二著 、「本所おけら長屋(十八)」(PHP文芸文庫)が、やっと順番が回ってきて、一気に読み終えた。人気の「本所おけら長屋シリーズ」の第18弾目の作品である。本書には、「その壱 あやつり」「その弐 たけとり」「その参 さいころ」「その四 きんぎん」の連作短編4篇が収録されている。
「本所おけら長屋シリーズ」は、江戸本所亀沢町の貧乏長屋「おけら長屋」の店子、万造、松吉の「万松コンビ」を筆頭に、左官の八五郎、お里夫婦、粋な後家女お染、浪人の島田鉄斎、等々、貧しいくせにお節介焼きで人情に厚い、個性豊かな面々が、次々巻き起こる問題、事件、騒動を笑いと涙で体当たりし、まーるく収めていくという時代小説だが、とにかく面白い。演芸の台本執筆や演出等の経歴を持たれる著者特有の小気味よい文体、まるで江戸落語、漫才を聞いているようなテンポ良さに引き込まれてしまい、随所で、笑いを堪らえ切れなくなったり、思わず泣かされてしまったりする。「本所おけら長屋シリーズ」のテーマについて、著者は、「品行が悪くても品性が良い」ことだと述べておられるようだが、「いつも馬鹿やっていながら、決して人を裏切ったり騙したりしない」全ての登場人物達に、読者も気持ちよくなり、人の優しさがジーンと心に沁みてくる時代小説になっている。
畠山健二著「本所おけら長屋(十八)」
その壱 あやつり
▢おけら長屋の面々以外の主な登場人物
津軽黒石藩藩主甲斐守高宗、正室玉姫(お玉)、江戸家老工藤惣二郎、用人鎌田半十郎、田村真之介、奥女中志桜里、(準主役)李枝(淳)、耕介、丹後屋金五衛門、小田十内、
▢お世継ぎが無いと藩はお取り潰しになる江戸時代のこと、これまで度々、仮の姿、旗本の三男坊黒田三十郎として登場し、おけら長屋の面々とも通じていた殿様甲斐守高宗には、玉姫(お玉)との間に子が無く、藩の重臣がやきもきし、側室案が浮上するところから話が始まる・・が・・、のっけから抱腹絶倒・・。この殿様のキャラクターがいい。ファン?が多いことに応えて、作者は、この篇では、主役級?にしており、奥方玉姫(お玉)を初登場させている。田村真之介も大活躍、側室問題に力を貸す長屋の万造、松吉、お染、鉄斎、等々、笑い疲れてしまうが、後半では、泣かせる話になる。
志桜里の声も大きくなる。「・・・そうすれば、あなたは操り人形ではなく、一人の女になれるのよ。李枝さん」
その弐 たけとり
▢おけら長屋の面々以外の主な登場人物
お竹、六蔵、竹屋彦之助、研ぎ屋半次(早呑み込みの半ちゃん、わかったの半の字、岡惚れの半公)
▢おけら長屋の大家徳兵衛の家に、特に親しい間柄でもない竹屋の彦之助が、遠縁の娘お竹をつれてきて、しばらく匿って欲しいと両手をついた。暴力を振るう夫六蔵から逃げているというもので、つい引き受けてしまうが、その頼まれ方が大笑いである。
「ほう、なぜおけら長屋なのでしょうか」・・、「悪名高きおけら長屋なら、六蔵も容易く手を出せないでしょう。本所界隈では、与太者も、破落戸も、無頼漢も、おけら長屋には近づかないと評判です」「褒めていただき、大家としても嬉しい限りです」「近頃は、野良犬さえも近寄らないという噂です」「うれしいお言葉、涙が出そうです」「”仏の徳”さんにお頼みするしか・・・」
器量良し、愛想良し、気が利くお竹が、お染の家に同居し始めたが、さあ大変、おけら長屋の面々は騒然、あれやこれや・・・、ひとり暮らしの魚屋辰吉は、惚れてしまうし・・・・、お染が粋な図らいをする・・・、お竹に、本当の八五郎、お里夫婦の姿を見せてやる。
「あんな人でも、私の亭主だった人ですから・・・」・・・、「お竹さん、これからどうするんですかい」・・・・、
万造と松吉は驚いて辰次の顔を見る。「仕方ねえですよ。かぐや姫は月に帰っていくもんですから」
その参 さいころ
▢おけら長屋の面々以外の主な登場人物
木田屋宗右衛門、お満、聖庵、お栄、由兵衛、
▢分別が有っていつもしっかりしているおけら長屋の大家徳兵衛と薬種問屋木田屋宗右衛門が、酒を呑みながら、お互いに惚れた相手の名前を先に言わせようとさいころ勝負、まるで子供?、年甲斐もなくエスカレート、これでもかこれでもかと笑わせる、・・、抱腹絶倒・・、おけら長屋の面々も巻き込まれ騒然、その惚れた相手とは?、早速、万造、松吉は、双方を煽り立てて、おこぼれ頂戴を企てるのだが・・・、
お律の頬に涙が流れた。お染は、お律に手拭いを渡す・・・・。
徳兵衛と宗右衛門がしみじみと酒を呑んでいるところに、おけら長屋の住人、相模屋の隠居与兵衛が顔を見せ・・・、「実は、お律さんのことが・・・」・・・・、徳兵衛と宗右衛門は顔を見合わせると深い溜息をついた。
その四 きんぎん
▢おけら長屋の面々以外の主な登場人物
油問屋黄金屋忠左衛門、慶太郎、東助、お晴、お克、お満、松葉組棟梁長蔵、駒吉、町田武堂、南町奉行所同心伊勢平五郎、
▢忠左衛門の三男慶太郎が野良犬に襲われ大怪我をし、忠左衛門は、必ず仇を討ってやると囁き、子守の老女お克を解雇したところから始まる。首吊りを図ろうとしたお克を助けたのは往診の帰りの聖庵堂のお満、お克をおけら長屋へ。一方で、おけら長屋の棒手振り八百屋金太(馬鹿金、抜け金)は野良犬を殺そうとする6人の男から野良犬をかばって大怪我をする。犬は銀太と名付けられる。さらに忠左衛門の娘お晴がかどわかされ、身代金200両?、その真相は?、許せない・・・、おけら長屋の面々が立ち上がり・・・、1件落着。
振り返ると、黄金屋の前では、お晴と銀太がみんなを見送っている。・・・・「金太。振り向くんじゃねえぞ」「振り向かねえで、真っ直ぐ前を向いて歩くんだ」・・・「唐茄子屋でござい~、唐茄子はいらねえか~」、その売り声は悲しい調に聞こえる。・・・・・
(参照・引用)
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PHP研究所(PHP文庫)「本所おけら長屋シリーズ」
すでに発刊されている、次作「本所おけら長屋(十九)」を予約(リクエスト)してきたが、新刊本である。順番が回ってくるのはいつのことやら。またしばらくは、「本所おけら長屋シリーズ」とは、お別れになりそうだ。
とんでもありません。
ただ気まぐれに、やたら手を伸ばしているだけの読書初心者で、特に拘っている分けではないんです。
阿川佐知子著「ブータン」・・・ですか?、
どこかにメモしておいて、いずれ、そういった書にも挑戦してみたいと思います。
今のところは、時代小説に次々目が行っている爺さん、これはという書が有ったら、教えて下さい。
コメントいただき有難うございます。
書籍の作家連へのジャンルが豊富ですね。
幅が広いです。
わたくしは、歴史物を好むのでどうしても偏ります。
先日は阿川佐和子・ブータンが目に留り読みました。
何でもない内容に、何故か涙が溢れて来ました。
更新、楽しみにしております。