古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

昭和幻燈館    久世光彦

2024-12-19 12:52:07 | 本の紹介

中公文庫  1992年

 

昭和も末になる頃の、TVプロデューサーの久世氏

 

の世界を垣間見ることが出来る一冊。

 

同潤会のアパートに身を潜ませたい、と願ったり、

 

ヴィスコンティのヴェニスに死す、の主人公、アッシ

 

ェンバッハは作家から作曲家になったのは、ワーグナーの

 

影響であるとか、〈夭折〉した久坂葉子に言及したり、

 

それにしても、ぼくは夭折の機会を逸してしまった

 

ようだ。ずるずると生きてしまった自分が恥ずかしい、

 

と同時に、ずっと長生きしてやるという感慨もある。

 

高畠幸宵と云う人への言及。美人画で有名だったが、

 

竹久夢二よりマニアックだ。

 

または、なかにし礼という作詞家への言及。「同棲」ソングの

 

発明を指摘している。

 

または、上村一夫、向田邦子らへの言及。言葉に対する

 

感度の問題。

 

または、誰も知らないような、野溝七生子と云う陰棲作家

 

について語る。

 

最後に、北か南か問題への言及。結果、ぼくは南に向かったわけだが

 

ぼくには後悔はない。寒いのは好きだが、寒すぎるのはちょっと。

 

夏も終わり、昭和も終わって久しい、久世氏の死から18年、

 

死んだ人には敵わない……そうだな、その通りですよ。

 

(2024年11・27(水)17:00)

             (鶴岡 卓哉)

 

 

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