古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

愛玩    安岡章太郎

2024-12-28 03:05:29 | 小説の紹介

新潮文庫  昭和三十四年

 

まだ母も父も元気だった頃の話だ。ウサギのアンゴラの

 

毛を獲りたいがために買い始め、家中がすっちゃかめっちゃか

 

になっていくと云う。ミミズ、ナメクジのたぐいがおびただしく

 

棲息している、と云うのだから、気持ちが悪くなってしまう。

 

父は恨めしそうな目でぼくの毛を欲しそうにしている。

 

そのうち、アンゴラの毛の人気もなくなってしまい、ウサギは

 

食肉のソーセージの業者の指に噛み付いたりしつつ、売られて

 

ゆくことになる。赤貧洗うが如き、貧しさの中で、人生を

 

足掻いていたのは、ある意味幸せであったと云える時期

 

なのかもしれない、と思わせる。

 

(読了日 2024年12・1(日)22:45)

                (鶴岡 卓哉)

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