古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

ジングル・ベル   安岡章太郎

2024-12-27 01:41:43 | 小説の紹介

新潮文庫   昭和三十四年

 

未だ戦後といっていいような頃、ジャングル・ジム

 

だけ新しく、虚しく、高崎歩兵連隊初年兵の頃の軍曹

 

の掛け声を思い出させる。

 

へいっち、にっ、と云う拍子に合わせて、思わず、歩く

 

自分とは裏腹に街の喧騒はなんだか、実体なく、リアリ

 

ティーを感じられないのだろう。そして、「ウナドン」を

 

頼んでしまう。うなぎは嫌いなのに、なんでそう叫んだ

 

のか。無理やりに口に押し込み食べたものの、「三百円

 

頂きます」と非情な請求。悦子に会うために満員電車に

 

乗るも、「車内の空気にたまらなくなって」しまう。

 

電車は止まってしまい、「クタクタに疲れていた」僕は

 

悦子との待ち合わせ時間には間に合わない。渋谷に着いて

 

「クリスマスの夜、日本橋通りにはひと気が」なく、蜜柑を

 

三百円分買うも、それは大量で、いらないです、とも言えず、

 

彼女に電話すると、駅で会った見知らぬ男とダンスホール

 

など引き回され、多量に酒など飲まされたという。

 

電話を切ったあとになって、「僕」は女の裏切りに気づき、

 

燃え立つ怒りの中で、親父の就職運動で立ち回るのがバカバカ

 

しくなってきた。と云うような、大体に於いて、こういう

 

話しだ。奇妙な感じも漂いつつ、リアリティーもある、と云う

 

ものだった。

 

(読了日 2024年12・1(日)21:55)

                (鶴岡 卓哉)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする