映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

南極料理人

2009年09月16日 | 映画(な行)
食べてみたいな、伊勢えびのエビフライ

* * * * * * * *

南極のドームふじ基地に料理人としてやってきた西村(堺雅人)が語るストーリー。
ストーリーといっても、特にストーリーはありません。
基地の一年を描いているわけなので・・・。
原作は実際に南極観測隊で料理人をした西村淳さんのエッセイ「面白南極料理人」。

ドームふじ基地というのは、
昭和基地から1,000㎞も内陸に入ったところにあって、標高3,810m。
これは富士山より高い位置・・・。
年平均気温が-54℃。
ペンギンもアザラシも何もいません。
昭和基地からは雪上車で20日かかる・・・。
そんなところへやってきた男8人。
究極の左遷(?)にして究極の単身赴任。

まあ、それぞれの役割・仕事はあるわけですが、
単調な毎日の中で楽しみは食べることだけ、という感じですね。
どんなところへ行っても、食べることは生きる基本。
しかし、ただ食べればいいというものでもない。
みんなで一緒に食べる。
ここがミソですね。

メンバーは次第に髪が伸びひげも伸びて、むさ苦しくなって行くのと同時に、
一つの家族のように気持ちのつながりができていくのですね。
「同じ釜の飯を食った」同士、ですね。
この、超閉鎖された空間を共有する8人に関わるあれこれ。
とてもユーモラスに語られています。


この西村さんの作る料理は、どれもとてもおいしそうなんですよ。
これなら、毎日食べることだけが楽しみになるのも無理はない。
中でも、圧巻は伊勢えびの特大エビフライ。
見ただけでげんなりして、
皆さんやっぱりさしみにするべきだった・・・なんていっていましたが。
う~ん、でも、こんな贅沢なエビフライ、食べてみたいですね~。
すごいですね~。
おにぎりもやけにおいしそうだったし、ラーメンは極めつけ!
材料豊富に手に入る我が家の方が、
よほど貧しい食生活って、どうなんでしょ・・・?


さて、南極の冬はずっと太陽が顔を出さず、夜ばかりが延々と続きます。
こうなると、いよいよ皆がおかしくなってきます・・・。
日本の家族や社会から孤立し、
置き去りにされてしまったかのような閉塞感、孤独。
こんなときに力になるのは
やはり、日本の家族からのFAXであり、電話の声なんですね。
待ってくれている人がいる。
そう思うことが力になります。
そしておいしいご飯があればもう怖いものなし!

西村さんは、家族から「いなくて清々する」
・・・なんて言われて来たんです。
ちょっぴりさみしい・・・。
いやいや、でも本当は奥さんも子供も、お父さんの帰りを待ちわびている。
こんなふうに素直ではない、家族の情景もたのしいですね。

極寒なのに、とってもあったかい。
オススメ作です。
ちなみに、この作品ロケは南極じゃなくて、北海道の網走だったそうな・・・。

2009年/日本/125分
監督・脚本:沖田修一
出演:堺雅人、生瀬勝久、きたろう、豊原功補、西田尚美



『南極料理人』