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ジョゼは深海から脱出できるのか
* * * * * * * *
さてとどこから話しましょうか。
ジョゼ登場までが、なかなかいわく付きで楽しい。
大学生恒夫(妻夫木聡)は雀荘でバイトをしています。
近頃お客の噂では、近所にいつもボロボロの乳母車を押して歩いている老婆がいるという。
それも、最近からというのでもなく、もう何年も前から・・・。
それは、なくなった孫のミイラだとか、
お宝だとか、麻薬だとか・・・、
みな、好き勝手なことを言います。
そんなある早朝、恒夫が店長の犬を散歩させていると、
坂の上から突然乳母車が走ってくる。
老婆が転んで叫んでいる。
坂の下で泊まった乳母車を恐る恐る覗き込んでみると・・・
1人の少女が包丁を持って睨み返している!
目力のあるこの少女が、ジョゼ(池脇千鶴)です。
彼女は足が不自由で、乳母車で散歩していたのです。
ジョゼというのはもちろん本名ではありません。
彼女の愛読書、サガンの小説「一年ののち」の主人公の名前。
恒夫に名前を問われた彼女が、こう答えたのです。
祖母と二人で暮らしているジョゼは、
愛想が悪くてほとんど口も利かないのですが、
その料理の腕は抜群。
そして、なにやら変なことを良く知っている。
恒夫は、この少女にちょっと興味を持つのです。
たびたび、この家を訪ねるようになる恒夫。
このストーリーは下手をすると、
身障者を題材とした問題提起のストーリーになってしまうところです。
でも、この作品は違う。
恒夫は、ただ単純に、この非常に個性的な少女を好きになったんです。
その個性というのがまあ、一般的にはハンディと呼ばれるものなのですけれど。
ジョゼのお婆さんも、強烈ですよ。
昔の人なんですよね。
「この子は壊れ物だから、人様の前には出せない。
何にもできないものが、人様よりいい思いをするなんてとんでもない。」
・・・と、こんな風です。
それでもゴミステーションから本を拾ってきたり、
乳母車で散歩させてくれたりするだけまだいいのですけれど。
単純にジョゼが好き。
ボランティア気分でも、同情でもない。
恒夫にとってはそれだけのことなのに、周りの受け止め方が違うんですよ。
よくも悪くも何か『特別』なこととしてとられてしまう。
その周りの特別視が恒夫にとって段々つらくなってきたのではないかなあ
・・・と思います。
そしてまた、単純に「好き」というだけで、
将来までジョゼの生活を引き受ける覚悟も始めからなかった
・・・ということなのでしょう。
だから、これは普通に男女の出会いと別れ、
そういう物語と受け止めるべきなのかもしれません。
とはいえ、ジョゼがこれまでの心境を
「深海で一人ぽっちでじっとしていた・・・」
と語るシーンでは胸が締め付けられます。
ここで唯一CGが使われているんですが、すごく効果的です。
名シーン。
それから、ジョゼと恒夫の彼女(上野樹里)の対決シーンが結構気に入りました。
ジョゼに嫉妬した彼女は、ジョゼを殴りつけましたね!
身障者だからって、そんなことは関係なし。
この、変に気取らないところがいい。
「のだめ」のイメージがまだない上野樹里というのもいいですよ。
男泣きに泣く妻夫木くん。
先日も「ノーボーイズ、ノークライ」で観たなあ・・・。
うん。なかなかこれもよし。
2003年/日本/116分
監督:犬童一心
原作:田辺聖子
出演:妻夫木聡、池脇千鶴、上野樹里、新井浩文
ジョゼと虎と魚たち 予告