![]() | 三匹のおっさん有川 浩文藝春秋このアイテムの詳細を見る |
さて、私としては久しぶりに読む有川浩。
「図書館戦争」にはハマりました。
なんといいますが、彼女のベタ甘の恋愛描写には中毒性があると思うのです。
まるで、ハーレクインのように・・・。
あるとき、ハタとそれに思い至った私は、
こんな本(失礼!)を読んでいたら、ダメになる・・・、
と、それ以後読むのを止めていたのですが・・・。
この本はですね、まさにおっさんが主人公なわけで、
そうベタ甘な恋愛ものではなさそう。
しかも、いろいろな方の書評でも結構評判がいい。
ということで、読んでみました。
ちなみに、私、例の「定額給付金」をきっちり、図書購入に充てたんですね。
普段そう気安くは買えない単行本の購入に。
なので、この夏は結構リッチな読書ができました。
自民党さん、このことにだけはお礼を申し上げておきます・・・・・・・・・。
そこまでやったのに、残念でしたね。
それで、この本なのですが、まず主人公となる三匹をご紹介しましょう。
定年退職後、近所のゲーセンに再就職した剣道の達人キヨ。
柔道家で居酒屋「酔いどれ鯨」の元亭主シゲ。
機械をいじらせたら無敵の頭脳派、工場経営者ノリ。
「ジジイと呼ぶな。せめて"おっさん"と呼んでくれ。」
という幼馴染、もと悪ガキの彼らは、いま「アラ還」。
つまり、還暦前後。
町内の自警団を結成します。
それも人知れず・・・、というところがかっこいいですね。
自称、地域限定正義の味方。
町内のいろいろ不穏な事件を片付けていきます。
ところが読んでいくうちに、実はこの本の真の主人公は、
キヨの孫である祐希ではないかと思えてきます。
高校一年の祐希は、一見ワルっぽい雰囲気なのですが、
これがなかなかどうして、正義感の強い素敵なヤツなんですよ・・・。
そして、ノリさんの愛娘、早苗の登場で、
一気にいつもの有川ワールドに突入。
でもそれはすごくいい感じの展開でした。
二人の初々しい感覚が、なんとも言えないんですよ~。
結局私は、やっぱりこういうのが好きなんですワ・・・。
キヨさん、シゲさんと武術の達人がいるだけあって、
それで事件にケリがつくこともあるのですが、力技ばかりじゃないですよ。
最後の第6話は、悪徳商法・詐欺商法の話です。
おっさんたちが探っていくと、
この被害者というのは、
店員たちが親切に応対し話を聞いてくれることがうれしくて、
せっせと店に通っていたのだということがわかってきます。
話し相手もなく、孤独なお年寄りたちが多く被害者となっていたのですね。
そこで彼らが動いたのは、
町内の会館などの空きスペースを、町内のお年寄りの憩いの場にすること。
一日入り浸ってもよし。
もちろんお金はかからない。
現役を退いたけれどまだまだ元気。
そういう人たちは今大勢います。
こういう人たちを活用しない手はない。
地域のコミュニケーションの核として、
こういう人たちが動き出したら、相当のことができそうだなあ・・・と、
現実の社会の方向性の一つのヒントでもあるような気がします。
そして、祐希たちのように、若い世代も一緒に活動できたらもっとステキ。
退職後の生き方のヒント。
社会の元気を取り戻すヒント。
それに、ほんのりうれしはずかしラブストーリーの色付けをして、
とっても楽しいストーリーに仕上がっております。
納得の一冊。
満足度★★★★★