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「海街Diary3/陽のあたる坂道」 吉田秋生

2010年03月03日 | コミックス
それぞれの揺れる思い

               * * * * * * * *

海街diary / 3 / 陽のあたる坂道 (flowers コミックス)
吉田 秋生
小学館

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でました。お待ちかね海街Diaryの3巻目。
古都鎌倉で暮らす異母姉妹の物語。


一作目、「思い出蛍」
四人姉妹は亡父の一周忌のために山形へ向かいます。
ああ、そうなんですね。
三姉妹がすずちゃんと出会ったのがちょうどこの一年前、という物語の設定です。
あの一番始めの物語が鮮烈でした。
行き場のない思いと行き場のない身を一人で抱え込んでいたすず。
本当に彼女の嗚咽が聞こえるような気がしたのです。
お父さんとの思い出の地は、やっぱり苦い思いを呼び起こすけれども、
今きちんと自分の居場所があるすずは、思い出は思い出として割り切ることが出来る。
あの始まりのストーリーに、このような後日談があるのは何ともうれしいのです。


さて、この巻では四姉妹それぞれの思いがそれぞれに語られていきます。
特に、妻子ある医師と不倫の関係にある幸。
そしてすずが同じサッカーチームの裕也に寄せるほのかな思い。
それぞれの年齢に見合った揺れる女心。
それがやや変化をみせるのです。
緩やかな時の流れ。
変わらないように見える古都。
変わらないように見える彼女らの生活。
でも、それも少しずつ緩やかに変わって行く。

私はやっぱり風太君がオススメですけどねー。
よく気がつくし、いつも家の手伝いをしている働き者。
しかも家が酒屋なんて、もー言うことなし!!
さて、その酒屋さん。
やはり今風でHPなんか作っている。
そこにコラムを書いている「弁天」さんが、なんと次女の佳乃。
なるほど、ダテに大酒飲みではないわけなんですね・・・。
しかし、吟醸酒に「熊うっちゃり」や「熊おとし」は
ネーミングセンスがやや違うのではないだろうか・・・??? 
吟醸酒は「強さ」というよりは繊細な香りを楽しむ物、と私は解しておりますが。

しかしこの佳乃さん、意外にもきっちり仕事をこなすオツボネ信金職員だったのです。
それぞれですねー。
この巻では相変わらず三女千佳が未だにつかみ所がない。
もう少し先を期待しましょう。
一番年が近いすずにとっては、一番親しくつきあえるお姉ちゃんのようですが。


やっぱり大満足の一冊でした。
さて、いつも名前だけ出てくるドジな看護師アライさんとは、いったいどんな人なんでしょうね。
一度ちゃんと見てみたいものです!!

満足度★★★★★