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ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場

2010年03月25日 | クリント・イーストウッド
百戦錬磨の老軍曹と若い兵士たちの“戦争”

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えーと、これは戦争映画ですが二次大戦ではないんだね。
はい。生涯を海兵隊に捧げてきたタフで呑んだくれの老軍曹ハイウェイというのが、
ここでのイーストウッドの役どころです。
舞台は1983年。
まあ、ソ連とは冷戦関係ですが、アメリカはとりあえずどことも戦争はしていない。
年齢から言うと、もうとっくに退役しているか、
または幹部となっているはずというところなのですが、
なにしろ素行の悪いハイウェイなので、
軍曹程度の地位で若い兵士の訓練役となるわけですね。
かつての様々な武勲によって、勲章をたくさん持っているにもかかわらず・・・ということです。
上官は彼より若いし、実戦経験がなかったりする。
で、彼の受け持つ部隊の若者たちは、むろん戦場に行ったこともないし、
だらけきって規律も何もあったものではない、と。
そこで、老軍曹のきびしい訓練に反発しながらもたくましさを身につけていき、
絆も生まれていく・・・ということなんですね。
そういった部分ではなかなか気持ちのよいドラマではあります。


ハイウェイもただの鬼軍曹なのではなくて、
呑んだくれでけんかっ早く、どうも札付きの人物だ。
でも、それ故か、家庭には恵まれなかったようで孤独。
昔なじみだったらしい女性には冷たくされ・・・といった私生活での弱みをたっぷりみせるあたりもいいですよね。
それで、訓練ばかりでいくらたくましくなったって、どうなのよ・・・と思い始める。
そこが1983年という背景の意味なんですけどね。
なんと実戦があったのですよ。
アメリカのグラナダ侵攻という。
ほえ。・・・よく知りませんが。
えーとですね、カリブ海の島国グラナダでクーデターがあって、
そこへソ連・キューバによる共産主義の影響を食い止めるため、
アメリカが武力介入したという事件。
ああ、いつもの手ですね。
そこでこのハイウェイの部隊が大活躍するという・・・。
ストーリー的にはめでたしめでたしなんですが。
一歩離れてみるとあまり釈然とはしませんね。
この作品が1986年作品なので、
各国から非難を受けたこの侵攻の擁護をしているとも思われてしまう・・・。
時代が時代・・・というところもありますが。
まだ、イーストウッド監督の昨今に見られるような反戦の思想はない
ということなんですね。
まあ、それを別とすれば、彼の年齢相応の渋みと、
全く衰えない格好の良さを感じる、いい雰囲気の作品ではありますね。
そういったイーストウッド監督の変遷を知る上では、意味のある作品・・・
ということにしておきましょう。

1986年/アメリカ/130分
制作・監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、マーシャ・メイスン、マリオ・バン・ピーブルズ