何かを成し遂げようとする強さ、美しさ
* * * * * * * *
2010年 本屋大賞第一位作品。
これは格調の高い時代小説です。
舞台は江戸時代。
しかしチャンバラはありません。
碁打ちであり数学者でもある、渋川春海。
彼に与えられたミッションは「日本独自の暦」を作ること。
うーむ。
暦ですか。
カレンダーなんてどのようにしてできたのかなんて考えたことありませんでしたが・・・。
1年が365日で4年に一度うるう年があって・・・。
確か微調整もありましたよね。
というのは今、私たちは当たり前のように思っているわけですが、
気の遠くなるような長期間にわたる太陽や月、そのほかの星の観測の結果なんですね。
そのときまで使われていた暦には、明らかに間違いがある。
どう考えてもずれてきているというのです。
だから正しい暦が必要になった。
これがまた、恐ろしいことに数学の知識がなければできないことなんですね。
私は完全な文系でして、数学以前に算数が苦手。
サイン・コサイン・タンジェント・・・
高校で習ったときでさえ解っていなかったので、
今となってはそれこそ宇宙の彼方の話・・・。
それがですね、鎖国の日本で、
和算としてきちんと系統化されていたというのには驚かされてしまいます。
コンピュータもなしに・・・。
私ではコンピュータがあっても、全然何をどうすればいいのか解りません!!
江戸時代を見くびりすぎですね。
一般庶民はどうだったか解りませんが、
彼らはちゃんと地球が球であること、地球が太陽の周りをまわっていること、
すっかりお見通しです。
しかし、私同様に算数の苦手な方も、尻込みする必要はありません。
この本は、そのような理論ではなく、
この男春海の生涯をかけた事業にかける熱意を語っているのです。
彼がそれを成し遂げようとしてから、ついに実現に至るまでには20年を費やしました。
途中には二度と立ち上がれないかのような挫折もあるのです。
しかし、自分の学問を信じ、成し遂げる。
もちろん根底にはそれが「好き」ということがあります。
そうでなければ、なかなか続きません。
さて、さらに、暦の問題は単に正しいとか正しくないだけでなく、
政治的な意味が大変大きい。
農作の日取り、行事の日取り。
天の運行を書き示す「暦」は最も神の領域に近い。
それを幕府から出すのか、朝廷から出すのかという大きな問題がある訳です。
おそらく今のお役所よりももっとアレこれ制約が多くて、
ひとつのことを決めるにも大変やっかいだったことは想像がつきます。
そのようなことを見極め手順を考えて根回しをして
・・・というマネジメント部分がまたこの方のすごいところなんです。
これはつまり、先を読んで回りから一つ一つ攻めていく、
囲碁の基本なのかもしれませんね。
そしてまた、仕事一筋の彼の生涯にほんのりと添えられるロマンス。
これもまた読み進む中での楽しみの一つ。
これもまたストレートには行かず、紆余曲折を経ながら。
時の流れは無常でもありますが、
実りを迎えるために不可欠なものでもあるのですねえ。
一つのことを成し遂げようとする人間の生き様。
強くて美しいですね。
壮大な宇宙の中でひときわ光る星のようです。
やはり本屋大賞は、こうでなくては・・・!
満足度★★★★★
天地明察 | |
冲方 丁 | |
角川書店(角川グループパブリッシング) |
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2010年 本屋大賞第一位作品。
これは格調の高い時代小説です。
舞台は江戸時代。
しかしチャンバラはありません。
碁打ちであり数学者でもある、渋川春海。
彼に与えられたミッションは「日本独自の暦」を作ること。
うーむ。
暦ですか。
カレンダーなんてどのようにしてできたのかなんて考えたことありませんでしたが・・・。
1年が365日で4年に一度うるう年があって・・・。
確か微調整もありましたよね。
というのは今、私たちは当たり前のように思っているわけですが、
気の遠くなるような長期間にわたる太陽や月、そのほかの星の観測の結果なんですね。
そのときまで使われていた暦には、明らかに間違いがある。
どう考えてもずれてきているというのです。
だから正しい暦が必要になった。
これがまた、恐ろしいことに数学の知識がなければできないことなんですね。
私は完全な文系でして、数学以前に算数が苦手。
サイン・コサイン・タンジェント・・・
高校で習ったときでさえ解っていなかったので、
今となってはそれこそ宇宙の彼方の話・・・。
それがですね、鎖国の日本で、
和算としてきちんと系統化されていたというのには驚かされてしまいます。
コンピュータもなしに・・・。
私ではコンピュータがあっても、全然何をどうすればいいのか解りません!!
江戸時代を見くびりすぎですね。
一般庶民はどうだったか解りませんが、
彼らはちゃんと地球が球であること、地球が太陽の周りをまわっていること、
すっかりお見通しです。
しかし、私同様に算数の苦手な方も、尻込みする必要はありません。
この本は、そのような理論ではなく、
この男春海の生涯をかけた事業にかける熱意を語っているのです。
彼がそれを成し遂げようとしてから、ついに実現に至るまでには20年を費やしました。
途中には二度と立ち上がれないかのような挫折もあるのです。
しかし、自分の学問を信じ、成し遂げる。
もちろん根底にはそれが「好き」ということがあります。
そうでなければ、なかなか続きません。
さて、さらに、暦の問題は単に正しいとか正しくないだけでなく、
政治的な意味が大変大きい。
農作の日取り、行事の日取り。
天の運行を書き示す「暦」は最も神の領域に近い。
それを幕府から出すのか、朝廷から出すのかという大きな問題がある訳です。
おそらく今のお役所よりももっとアレこれ制約が多くて、
ひとつのことを決めるにも大変やっかいだったことは想像がつきます。
そのようなことを見極め手順を考えて根回しをして
・・・というマネジメント部分がまたこの方のすごいところなんです。
これはつまり、先を読んで回りから一つ一つ攻めていく、
囲碁の基本なのかもしれませんね。
そしてまた、仕事一筋の彼の生涯にほんのりと添えられるロマンス。
これもまた読み進む中での楽しみの一つ。
これもまたストレートには行かず、紆余曲折を経ながら。
時の流れは無常でもありますが、
実りを迎えるために不可欠なものでもあるのですねえ。
一つのことを成し遂げようとする人間の生き様。
強くて美しいですね。
壮大な宇宙の中でひときわ光る星のようです。
やはり本屋大賞は、こうでなくては・・・!
満足度★★★★★