映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ある愛の風景

2010年07月03日 | 映画(あ行)
兄が背負った罪。苦悩と狂気。

ある愛の風景 スペシャル・エディション [DVD]
アナス・トーマス・イェンセン
角川エンタテインメント


                * * * * * * * *

先日見た「マイ・ブラザー」の元の作品。
2004年デンマーク作品です。
なんとなんと、この二つの作品は相当に近いですね。
場面の切り替えやセリフ、
アメリカのリメイク作品は、ほとんどこの「ある愛の風景」そのままでした。
ですから、ストーリーはあえて繰り返しません。
評論家によれば、「ある愛の風景」の方が兄個人の苦悩に、
「マイ・ブラザー」の方が、家族の有り様に
力を入れて描いている、と。
なるほど、「マイ・ブラザー」の方が、壊れ行く家族をじっくり描いていたように思います。
が、どちらにしても、兄が背負ったどうにもならない罪。
その苦悩と狂気。
甲乙つけがたく重く描かれていたと思います。




兄ミカエルは、妻・子供たちを愛するあまり罪を背負いました。
こんなところで死にたくない。
あの我が家に戻って必ず家族に再び会う。
そう自分に誓って長期間がんばっていた。
しかし、その自分の信念が、人間としての倫理を超えてしまった。
どうすればよかったのかなどという答えはないのでしょうね。

ところが、そうまでして戻ってきた我が家に自分の居場所がない。
・・・というよりは自らを居られなくしている。
家族の中で幸福でいることは、許されない。
彼の中にはそうした思いもあるのでしょう。
また、あんなに恋い焦がれていた家族が、
案外簡単に弟を受け入れてまとまっていた、という疎外感。
重いですね。これは壊れない方がおかしい。

こんなに極端な例ではなくとも、
戦争で人を殺してしまったという罪の意識を、平和な家庭の中でひた隠しにし、
そして自ら傷ついて行く・・・ということは案外多いのかもしれません。

いろいろ考えるべきことの多い作品ですので、
アメリカのリメイクで
もっと多くの人が見るのであれば
それなりに意義はあるのかも。


2004年/デンマーク/117分
監督:スサンネ・ビア
出演:コニー・ニールセン、ウルリッヒ・トムセン、ニコライ・リー・コス