映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

カッコーの巣の上で

2010年07月24日 | 映画(か行)
自由を求める声は受け継がれていき、消えない。

カッコーの巣の上で ― スペシャル・エディション [DVD]
ケン・キージー
ワーナー・ホーム・ビデオ


             * * * * * * * *

この作品、確か公開時に見た記憶が・・・。
かなり若かりし頃です。
思わず遠い目・・・。
もっとも、ほとんど覚えていなかったので、初めてのように見ました。


刑務所の強制労働を逃れるために、
精神病を偽って精神病院へ送られてきたマクマーフィー(ジャック・ニコルソン)。
そこには、冷徹な看護婦長ラチェッド(ルイーズ・フレッチャー)の徹底した管理のもと、
無気力な患者たちがいました。
病院のルールに抵抗するマクマーフィーは患者たちに命を吹き込むのです。
でもそれは病院にとっては不都合なこと。
病院はマクマーフィーに電気治療を試みたりしますが・・・・。


カッコーの巣というのは、精神病院を指しています。
おぼろげながら見えてくるのは、
これは特に精神治療のあり方を問う物語ではなくて、
この病院は私たちの社会を暗喩しているということ。
徹底的に管理された自由のない社会。
時代が時代なので、共産圏の社会を指すのかもしれないし、
単に様々な制約の上に成り立っている現代社会を指しているかもしれない。
それは見る人によって様々でかまわないのだと思います。
人は本来、他者から制約されたり規制されたりすべきではない。
しかし、自由を声高に求めようとすれば、社会から抹消されてしまう危険がある。
これは今も変わらない世のありようかもしれません。

けれども、自由を求める思いは、
どんなに障害が大きくても、挫折しても、消えてしまうことはない。
それはきっと誰かの胸の内に引き継がれていくものなのです。
とても崇高な精神を歌う作品ですね。

原作本では、
この病院の患者であるネイティブアメリカンのチーフが語り手となっているそうです。
彼は大変重要な役どころ、なるほどと思います。
特にラストシーンは鮮やか。

それにしても、あのラチェッド看護婦長はこわかったですね~。
常に冷静で、言葉使いも丁寧なんですよ。
決して激昂しない。
にも関わらずと言うか、だからこそというか、その目が怖い。
冷え冷えとしています。


1975年/アメリカ/134分
制作:マイケル・ダグラス
監督:ミロス・フォアマン
出演:ジャック・ニコルソン、ルイーズ・フレッチャー、ウィル・サンプソン、クリストファー・ロイド、ダニー・デビ-ト