お母さんの中から5百分の一、
お父さんからは5億分の一の狭き門を突破してきた遺伝子のエリート
* * * * * * * *
帝華大学医学部の曾根崎理恵助教は体外受精のエキスパート。
この本は、生命の発生や出産の神秘的で感動的な営みを描くと共に、
産婦人科を取り巻く医療行政の悲惨な状況を
例によって痛烈な語り口で語っています。
理恵は大学での研究の他、マリアクリニックという産院で5人の妊婦を受け持っています。
望まない妊娠をしてしまったヤンキー娘のユミなどの他、体外受精で妊娠をした2名。
そのうちの一人はなんと55歳、山咲みどり。
しかし、理恵の上司清川教授は、理恵が代理母出産に関わっているという噂を耳にする。
不妊治療を行った際、体外受精した卵子を本人に戻すというのが普通ですが、
そうではなく、別人の子宮に着床させてしまうというのが代理母出産。
まだ世間的に認められていることではありません。
もし本当に代理母出産が行われているとしたら、55歳山咲みどりが怪しいけれど・・・。
ほとんど、理恵の心情を描き出しながら物語は進行するのですが、
この肝心の部分は伏せたまま。
なかなか心憎い演出です。
ラストの4名同時出産はなかなか感動的です。
始めの方に、理恵が学生たちに発生学の講義をする形で、
妊娠の始まりを説明する部分があります。
「つまり皆さんはお母さんの中から5百分の一、
お父さんからは5億分の一の狭き門を突破してきた遺伝子のエリートたち、なんです。
・・・・・五体満足で生まれ落ちることがどれほどの奇蹟か、
半年の授業でわかってもらえるとうれしいです」
このような説明の後では、
私自身が今こうして生きていることも奇跡の様に思えてしまいますね。
全く、始めはたったひとつの卵子と精子が、
どうしてこんな複雑な体にまで変化していくのか。
神秘というほかありません。
だからどの命もとても貴重で大切というのが、実感を伴って感じられます。
私が気に入ったのはヤンキー娘のユミちゃん。
失敗してできてしまった子。
しかも父親も誰だかよくわからない。
当然堕ろすつもりでいたのですが、堕胎シーンのビデオを見せられて考えが変わる。
すっかり生む気持ちになってきたところで、
胎児に障害があることが解る。
やはり堕ろすべきなのか。
ユミの出した答えは・・・。
母は強し、ですね。
女は妊娠を自覚したときから少しずつ大きくなってくるお腹をかかえながら、
どんどんお母さんになっていくのです。
子供を産まないことも、今女性のひとつの生き方ではありますが、
子供を安心して産めて、育てられる環境があるとしたら、やっぱり産んでみては・・・?
と思うんですよね。
生命の神秘を自ら体験。
悪くないですよ。
この本の続編、「マドンナ・ヴェルデ」は、この妊娠した55歳山咲みどりが主人公とのこと。
とっても興味があります。
文庫化まで待ち切れなさそう。
55歳妊娠って、ちょっと考えられないです~。
しんどすぎます。
無理です。
と、ほぼその年の私は思う!
満足度★★★★★
お父さんからは5億分の一の狭き門を突破してきた遺伝子のエリート
![]() | ジーン・ワルツ (新潮文庫) |
海堂 尊 | |
新潮社 |
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帝華大学医学部の曾根崎理恵助教は体外受精のエキスパート。
この本は、生命の発生や出産の神秘的で感動的な営みを描くと共に、
産婦人科を取り巻く医療行政の悲惨な状況を
例によって痛烈な語り口で語っています。
理恵は大学での研究の他、マリアクリニックという産院で5人の妊婦を受け持っています。
望まない妊娠をしてしまったヤンキー娘のユミなどの他、体外受精で妊娠をした2名。
そのうちの一人はなんと55歳、山咲みどり。
しかし、理恵の上司清川教授は、理恵が代理母出産に関わっているという噂を耳にする。
不妊治療を行った際、体外受精した卵子を本人に戻すというのが普通ですが、
そうではなく、別人の子宮に着床させてしまうというのが代理母出産。
まだ世間的に認められていることではありません。
もし本当に代理母出産が行われているとしたら、55歳山咲みどりが怪しいけれど・・・。
ほとんど、理恵の心情を描き出しながら物語は進行するのですが、
この肝心の部分は伏せたまま。
なかなか心憎い演出です。
ラストの4名同時出産はなかなか感動的です。
始めの方に、理恵が学生たちに発生学の講義をする形で、
妊娠の始まりを説明する部分があります。
「つまり皆さんはお母さんの中から5百分の一、
お父さんからは5億分の一の狭き門を突破してきた遺伝子のエリートたち、なんです。
・・・・・五体満足で生まれ落ちることがどれほどの奇蹟か、
半年の授業でわかってもらえるとうれしいです」
このような説明の後では、
私自身が今こうして生きていることも奇跡の様に思えてしまいますね。
全く、始めはたったひとつの卵子と精子が、
どうしてこんな複雑な体にまで変化していくのか。
神秘というほかありません。
だからどの命もとても貴重で大切というのが、実感を伴って感じられます。
私が気に入ったのはヤンキー娘のユミちゃん。
失敗してできてしまった子。
しかも父親も誰だかよくわからない。
当然堕ろすつもりでいたのですが、堕胎シーンのビデオを見せられて考えが変わる。
すっかり生む気持ちになってきたところで、
胎児に障害があることが解る。
やはり堕ろすべきなのか。
ユミの出した答えは・・・。
母は強し、ですね。
女は妊娠を自覚したときから少しずつ大きくなってくるお腹をかかえながら、
どんどんお母さんになっていくのです。
子供を産まないことも、今女性のひとつの生き方ではありますが、
子供を安心して産めて、育てられる環境があるとしたら、やっぱり産んでみては・・・?
と思うんですよね。
生命の神秘を自ら体験。
悪くないですよ。
この本の続編、「マドンナ・ヴェルデ」は、この妊娠した55歳山咲みどりが主人公とのこと。
とっても興味があります。
文庫化まで待ち切れなさそう。
55歳妊娠って、ちょっと考えられないです~。
しんどすぎます。
無理です。
と、ほぼその年の私は思う!
満足度★★★★★