この世には、不思議なことはやはりある?
* * * * * * * *
川に死体がある風景。
それを織り込んだミステリのアンソロジーです。
歌野晶午
黒田研二
大倉崇裕
佳多山大地
綾辻行人
有栖川有栖
という豪華競演。
まず始めの歌野晶午「玉川上死」で、驚かされました。
早朝、川を流れるうつぶせの死体が発見されるのです。
そのことが警察に通報される間も死体は流れていき、
それを追いかける巡査が、
自分でもばかげていると思いながらつい「おい、止まれ!」と叫んでしまう。
ところがなんとその死体がむくりと顔を上げて「僕のことですか?」。
なんとこれは、高校生の悪ふざけだったのですが、
実は事件はそこではなくて、
その様子をカメラで撮っていたはずの仲間が死んでいたというところ・・・。
なかなか意外性に満ちておりまして、
もちろん真犯人の正体もオドロキ。
その動機も現代性が出ていまして、
まさに、この本のオープニングを飾るにふさわしい作品となっています。
綾辻行人「悪霊憑き」。
これは始めのフレーズに見覚えがありました。
この世には不思議なことなど何もない---とは、
おそらく今この国で最も有名な古本屋の決め台詞だが、
本当にそうだろうか・・・・・・・
そう、あの「深沼丘奇談」に収められている一作でした。
悪霊・・・不可思議なもの・・・、
そういうものはやはりある、という方向に話が進みながらも、
結局は非常に生々しい現実に着地していくこのストーリーは、
さすがミステリ界の大御所ならでは。
こうして1話だけ切り離しても、際立ちますねえ。
ラストを飾るのは有栖川有栖「桜川のオフィーリア」
桜の花の舞い散る川辺に美しい女性の死体。
まるで「ハムレット」のオフィーリアのように。
うん、いいですね。
美しい死体。
この作品、アリスが登場しますが、
火村准教授ではなく、江神二郎シリーズの方です。
なんと、あの「女王国の城」の前の作品。
この作品が前日譚になっていて、「女王国」につながっていきます。
そういう意味で私には大変興味深い作品。
大満足の一冊です。
満足度★★★★★
![]() | 川に死体のある風景 (創元推理文庫) |
大倉 崇裕,有栖川 有栖,歌野 晶午,佳多山 大地,黒田 研二,綾辻 行人 | |
東京創元社 |
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川に死体がある風景。
それを織り込んだミステリのアンソロジーです。
歌野晶午
黒田研二
大倉崇裕
佳多山大地
綾辻行人
有栖川有栖
という豪華競演。
まず始めの歌野晶午「玉川上死」で、驚かされました。
早朝、川を流れるうつぶせの死体が発見されるのです。
そのことが警察に通報される間も死体は流れていき、
それを追いかける巡査が、
自分でもばかげていると思いながらつい「おい、止まれ!」と叫んでしまう。
ところがなんとその死体がむくりと顔を上げて「僕のことですか?」。
なんとこれは、高校生の悪ふざけだったのですが、
実は事件はそこではなくて、
その様子をカメラで撮っていたはずの仲間が死んでいたというところ・・・。
なかなか意外性に満ちておりまして、
もちろん真犯人の正体もオドロキ。
その動機も現代性が出ていまして、
まさに、この本のオープニングを飾るにふさわしい作品となっています。
綾辻行人「悪霊憑き」。
これは始めのフレーズに見覚えがありました。
この世には不思議なことなど何もない---とは、
おそらく今この国で最も有名な古本屋の決め台詞だが、
本当にそうだろうか・・・・・・・
そう、あの「深沼丘奇談」に収められている一作でした。
悪霊・・・不可思議なもの・・・、
そういうものはやはりある、という方向に話が進みながらも、
結局は非常に生々しい現実に着地していくこのストーリーは、
さすがミステリ界の大御所ならでは。
こうして1話だけ切り離しても、際立ちますねえ。
ラストを飾るのは有栖川有栖「桜川のオフィーリア」
桜の花の舞い散る川辺に美しい女性の死体。
まるで「ハムレット」のオフィーリアのように。
うん、いいですね。
美しい死体。
この作品、アリスが登場しますが、
火村准教授ではなく、江神二郎シリーズの方です。
なんと、あの「女王国の城」の前の作品。
この作品が前日譚になっていて、「女王国」につながっていきます。
そういう意味で私には大変興味深い作品。
大満足の一冊です。
満足度★★★★★