地味な教師がたどる、ある鮮烈な人生

* * * * * * * * * *
スイスの高校で古典文献学教師をしているライムント・グレゴリウス(ジェレミー・アイアンズ)。
妻と別れ一人暮らし。
淡々と仕事をこなし、それを良しとしている毎日でしたが・・・。
ある時、1冊のポルトガルの古書を手に入れ、
その著者アマデウ・デ・プラトに興味を惹かれます。
彼は仕事も放り出し、ポルトガルはリスボン行きの夜行列車に乗ったまま帰らず、
アマデウの家族や友人を訪ね歩き、
その素顔と鮮烈な人生を明らかにしていきます。

冒頭がとても印象深いのです。
雨の中学校へ向かうライムントが
橋の上から身投げしようとしている女性を引き止める。
彼女の着ている赤いコート。
いかにも地味で退屈なこれまでの人生に、何かが起こる。
そういうことを暗示しています。
ポルトガルの本はこの女性が残したのでした。

本の著者の思考に「まるで自分自身のようだ」と深い共感を覚えたライムント。
しかし調べていくうちにわかったのは、
アマデウはポルトガルの激動の時代を生きた人物であったということ。
1970年代独裁政権の圧政下のポルトガル。
医師として関わったある事件。
危険な反体制運動への参加、
そして親友を裏切るほどの激しい恋。

でも、すべては過去の出来事です。
それを知ったからといって、彼の人生が変わるわけではない
・・・が、しかし。
仕事の存続を賭けてまでこの地にとどまり、アマデウの人生をたどって得た感銘は、
ライムントをも少し変えたようです。

沈んだ過去のストーリーですが、
本作の底の方にほんのりしたユーモアが漂っていて、なんだか和んだ気持ちにさせられます。
赤いコートを持っただけで、列車に飛び乗ってしまうライムント。
教師が女性と一緒に授業を抜けだしたままで、大騒ぎになっている彼のクラス。
野暮ったい眼鏡を軽い銀縁のメガネに変えて、オシャレゴコロが蘇るライムント。
うん、渋い。
まだまだモテますよ!
早く女性を食事に誘えばいいのに、と密かにやきもきする宿屋のオジサン・・・。
どこかやることがスマートではない、き真面目な教師の姿が浮き上がってきます。
でも、そこが魅力です。

そしてまた「過去」編のアマデウ(ジャック・ヒューストン)も素敵です。
当時の体制側も反体制側も、当時のことは語りたがらない・・・というような悲惨な歴史。
実際私も生きていた時代なのですが、よく知ってはいませんでした。
静かなる良品。
オススメです。
「リスボンに誘われて」
2013年/ドイツ・スイス・ポルトガル/
監督:ビル・アウグスト
原作:パスカル・メルシエ
出演:ジェレミー・アイアンズ、メラニー・ロラン、ジャック・ヒューストン、マルティナ・ゲデック、トム・コートネイ
歴史発掘度★★★★☆
満足度★★★★★

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スイスの高校で古典文献学教師をしているライムント・グレゴリウス(ジェレミー・アイアンズ)。
妻と別れ一人暮らし。
淡々と仕事をこなし、それを良しとしている毎日でしたが・・・。
ある時、1冊のポルトガルの古書を手に入れ、
その著者アマデウ・デ・プラトに興味を惹かれます。
彼は仕事も放り出し、ポルトガルはリスボン行きの夜行列車に乗ったまま帰らず、
アマデウの家族や友人を訪ね歩き、
その素顔と鮮烈な人生を明らかにしていきます。

冒頭がとても印象深いのです。
雨の中学校へ向かうライムントが
橋の上から身投げしようとしている女性を引き止める。
彼女の着ている赤いコート。
いかにも地味で退屈なこれまでの人生に、何かが起こる。
そういうことを暗示しています。
ポルトガルの本はこの女性が残したのでした。

本の著者の思考に「まるで自分自身のようだ」と深い共感を覚えたライムント。
しかし調べていくうちにわかったのは、
アマデウはポルトガルの激動の時代を生きた人物であったということ。
1970年代独裁政権の圧政下のポルトガル。
医師として関わったある事件。
危険な反体制運動への参加、
そして親友を裏切るほどの激しい恋。

でも、すべては過去の出来事です。
それを知ったからといって、彼の人生が変わるわけではない
・・・が、しかし。
仕事の存続を賭けてまでこの地にとどまり、アマデウの人生をたどって得た感銘は、
ライムントをも少し変えたようです。

沈んだ過去のストーリーですが、
本作の底の方にほんのりしたユーモアが漂っていて、なんだか和んだ気持ちにさせられます。
赤いコートを持っただけで、列車に飛び乗ってしまうライムント。
教師が女性と一緒に授業を抜けだしたままで、大騒ぎになっている彼のクラス。
野暮ったい眼鏡を軽い銀縁のメガネに変えて、オシャレゴコロが蘇るライムント。
うん、渋い。
まだまだモテますよ!
早く女性を食事に誘えばいいのに、と密かにやきもきする宿屋のオジサン・・・。
どこかやることがスマートではない、き真面目な教師の姿が浮き上がってきます。
でも、そこが魅力です。

そしてまた「過去」編のアマデウ(ジャック・ヒューストン)も素敵です。
当時の体制側も反体制側も、当時のことは語りたがらない・・・というような悲惨な歴史。
実際私も生きていた時代なのですが、よく知ってはいませんでした。
静かなる良品。
オススメです。
「リスボンに誘われて」
2013年/ドイツ・スイス・ポルトガル/
監督:ビル・アウグスト
原作:パスカル・メルシエ
出演:ジェレミー・アイアンズ、メラニー・ロラン、ジャック・ヒューストン、マルティナ・ゲデック、トム・コートネイ
歴史発掘度★★★★☆
満足度★★★★★