孤独な女達の安息はあるのか
* * * * * * * * * *
直木賞受賞!
私たちの心の奥底を静かに覗く傑作集
どこにでもある町に住む、盗癖のあるよそ者の女、
婚期を逃した女の焦り、育児に悩む若い母親
……彼女たちの疲れた心を待つ落とし穴。
* * * * * * * * * *
第147回直木賞受賞作。
私、辻村深月さんの作品はほとんど読んでいませんでしたので、
まあ、入門編に、と思いまして。
本作は5人の女性それぞれの夢と転落を描く5つの短編からなっています。
「石蕗南地区の放火」
笙子が以前いっとき付き合っていた男が、放火の疑いで逮捕される。
もしかすると彼は私とまた会いたいために放火をしたのかもしれない・・・。
笙子はそのように想像するのですが・・・。
しかし実はそんな男にすらも振り返ってもらえないような自分。
女のくすぶる虚栄心に、思わず目を背けたくなります。
「芹葉大学の夢と殺人」
こちらも状況は似ているかもしれません。
未玖は同じ大学の研究室の羽根木と付き合っていますが、
この男、今の大学をやめて医学部に入り直す、
おまけに本当にやりたいのはサッカーだなどと、
小学生のような「夢」を語る。
未玖にはそれが現状に適応できない男のただの逃げだということがわかっていながら、
別れることができない。
ついに羽根木は研究室の教授を殺害に及んでしまうが・・・。
結局こんなダメな男にすらも恋い焦がれてもらえない自分を見出すのみ・・・。
こういうストーリーは男性には描けないでしょうね。
全然魅力的でもないし、好きにもなれない主人公たちですが・・・。
私達の中にはどこか同じものが潜んでいるような気がする。
ちょっぴり心がひんやりします。
ラスト「君本家の誘拐」これがまた強烈。
ようやくの妊娠で初めて生まれた我が娘。
しかし、生まれてからのその世話があまりにも大変で、
ほとんどノイローゼ状態の良枝。
ある日買い物に出かけ、ベビーカーが見当たらないことに気がつく!!
自分で描く結婚、そして出産・子育てという段階。
人並みのその道から外れることの恐怖が彼女にはあったようなのです。
しかし幸せの象徴のようなその我が子が、
実は自分の平安をぶち壊すモノのように感じられ・・・。
このような心理も実は誰の中にもないとはいえない・・・。
辻村深月さん、怖い作家ですね。
でも本作はそういうところをえぐりすぎていて
私にはちょっと辛く思えました。
「鍵のない夢を見る」辻村深月 文春文庫
満足度★★★☆☆
鍵のない夢を見る (文春文庫) | |
辻村深月 | |
文藝春秋 |
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直木賞受賞!
私たちの心の奥底を静かに覗く傑作集
どこにでもある町に住む、盗癖のあるよそ者の女、
婚期を逃した女の焦り、育児に悩む若い母親
……彼女たちの疲れた心を待つ落とし穴。
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第147回直木賞受賞作。
私、辻村深月さんの作品はほとんど読んでいませんでしたので、
まあ、入門編に、と思いまして。
本作は5人の女性それぞれの夢と転落を描く5つの短編からなっています。
「石蕗南地区の放火」
笙子が以前いっとき付き合っていた男が、放火の疑いで逮捕される。
もしかすると彼は私とまた会いたいために放火をしたのかもしれない・・・。
笙子はそのように想像するのですが・・・。
しかし実はそんな男にすらも振り返ってもらえないような自分。
女のくすぶる虚栄心に、思わず目を背けたくなります。
「芹葉大学の夢と殺人」
こちらも状況は似ているかもしれません。
未玖は同じ大学の研究室の羽根木と付き合っていますが、
この男、今の大学をやめて医学部に入り直す、
おまけに本当にやりたいのはサッカーだなどと、
小学生のような「夢」を語る。
未玖にはそれが現状に適応できない男のただの逃げだということがわかっていながら、
別れることができない。
ついに羽根木は研究室の教授を殺害に及んでしまうが・・・。
結局こんなダメな男にすらも恋い焦がれてもらえない自分を見出すのみ・・・。
こういうストーリーは男性には描けないでしょうね。
全然魅力的でもないし、好きにもなれない主人公たちですが・・・。
私達の中にはどこか同じものが潜んでいるような気がする。
ちょっぴり心がひんやりします。
ラスト「君本家の誘拐」これがまた強烈。
ようやくの妊娠で初めて生まれた我が娘。
しかし、生まれてからのその世話があまりにも大変で、
ほとんどノイローゼ状態の良枝。
ある日買い物に出かけ、ベビーカーが見当たらないことに気がつく!!
自分で描く結婚、そして出産・子育てという段階。
人並みのその道から外れることの恐怖が彼女にはあったようなのです。
しかし幸せの象徴のようなその我が子が、
実は自分の平安をぶち壊すモノのように感じられ・・・。
このような心理も実は誰の中にもないとはいえない・・・。
辻村深月さん、怖い作家ですね。
でも本作はそういうところをえぐりすぎていて
私にはちょっと辛く思えました。
「鍵のない夢を見る」辻村深月 文春文庫
満足度★★★☆☆