映画と本の『たんぽぽ館』

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インサイド・ヘッド

2015年08月08日 | 映画(あ行)
大人になるための脳内再構築



* * * * * * * * * *

頭のなかで、喜びや悲しみ、いろいろな感情が会議を繰り広げている・・・
先日見た「脳内ポイズンベリー」と同じ発想なのですが、
それぞれに見どころはあり、
今回こちらのライリーの脳内も、泣きたいくらいに身近に感じながら拝見しました。



ミネソタの田舎町で暮らしていたライリー11歳。
親友がいて、アイスホッケーも楽しく、両親とも仲良し。
充実した毎日です。
ところが、父親の仕事の都合で、
サンフランシスコへ引っ越さなければならなくなってしまいました。
知る人が誰もいない都会の町。
勇気を振り絞って何とかやっていこうと思うのですが・・・。
そんな不安なライリーの心のなかで、
ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリの5人が忙しく議論をしています。
しかしヨロコビとカナシミが、司令塔から放り出されてしまい、
戻るための必死の冒険を始めます。
また、ヨロコビとカナシミを失った司令部はライリーを制御しきれなくなってしまうのです・・・。



「脳内ポイズンベリー」の記憶は記録帳に書き綴っていくのみですが、
こちらでは一つ一つの記憶がボールに封じ込められます。
楽しい記憶は黄色。
悲しい記憶は青・・・。
無数のボールがびっしりと迷路状の収納棚に並べられ、
必要なくなった記憶は谷底へ「処分」されていきます。
こういうイマジネーションがやっぱりアニメだと自在なのでいいですね。



ヨロコビは自分のこの感情こそがライリーを幸せにすると思い、
カナシミをちょっぴり疎ましく思っているのです。
人生にカナシミなんか必要ないでしょう・・・と。
だからカナシミにはできるだけウロチョロしないで、奥のほうでじっとしていて欲しい。
ところが、悪戦苦闘の冒険の中で、
生きていくためにはカナシミもまた必要なのだということがだんだんわかってくるのです。
この辺りは本作を見たチビッコ達には少し難しいだろうな。
でも今はそれでいい。
きっと大きくなってもう一度見たらその意味がわかると思うのです。
そういう可能性を秘めて、いい作品だと思います。


それからライリー自身ももう忘れていた、
幼いころに自分で作り出していたキャラクター「ビンボン」が登場しますね。
なんだかちょっと虚を突かれた感じ。
もしかしたら、かつて私にもそういう存在があったりはしなかったか? 
なんだか忘れていた何かが胸の奥でうずくような気がしましたよ・・・。



ライリーの性格を作り出す島は崩壊し「特別な思い出」も変質していくけれど
それはライリーが大人に近づくための脳内の再構築なのかもしれない
などと思ったりして。
この事件は「引っ越し」がなくてもいずれ起こることだったのかもしれません。


私はお子様向けアニメであっても本当は字幕で見たかったのですが、
字幕上映のところはなく、吹き替え版を見ました。
でもヨロコビの竹内結子さんとカナシミの大竹しのぶさんがすごく良かった。


そうそう、ライリーだけではなくてほかの人たちの脳内会議の様子も少し出てきました。
特にライリーのお父さんとお母さんのやりとりの様子がめちゃくちゃ面白い。
これ、ずっと見ていたかったですね。

「インサイド・ヘッド」
2015年/アメリカ/94分
監督・脚本:ピート・ドクター
吹き替え版 出演(声):竹内結子、大竹しのぶ、佐藤二朗
脳内のイマジネーション★★★★★
満足度★★★★☆