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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

あの日のように抱きしめて

2016年04月18日 | 映画(あ行)
聡明な彼女なら、もっと早くに気づくはず



* * * * * * * * * *

ネリーはナチスの強制収容所で奇跡的に生き残りますが、
顔に大怪我を負っています。
そこで、顔の再生手術を受けましたが、以前の顔とは変わってしまいます。

彼女の願いは再び夫と会って、以前の幸せな生活を取り戻すこと。
彼女を救い出した友人、レネの制止も振り切って、
ネリーは生き別れになった夫を探し出そうとします。
そしてようやく夫ジョニーと再開したネリーでしたが・・・。
ジョニーは以前と顔の違うネリーをネリーとは気付きません。
ジョニーはネリーが収容所で亡くなったと思っており、
「亡き妻になり変わって、妻の遺産をせしめよう」
と彼女に持ちかけるのです。



夫は本当に自分を愛したのか、
それとも裏切ってナチに自分を売ったのか。
夫を信じたいと思いながら、ズルズルと夫の提案に乗り、
自分で自分を演じるはめになってしまうネリー。
そしてどこまでも真実に気付きもしない夫ジョニー。



・・・まあこの辺りで、ジョニーの本当の気持は読めてしまいますよね。
いくら顔が違っていたって、声は同じだし、
おそらくちょっとした表情とかしぐさで気づきそうなものです。
そのことを感じていながらもなお、
彼に再び妻として愛されることを願ってしまうネリーの
いじましい気持ちがにじみ出ます。
でも、この辺で夫の正体に気付き、目が冷めて欲しかった、と実は思ってしまいました。



ユダヤ人の被った悲惨な過去を忘れて、新しい環境で出直したいと願うレネは、
でも、いつまでも過去に戻ろうとするネリーに絶望してしまう。
その心情も哀れでした。


しかしラストで、ネリーが夫に自分の正体を明かすシーンは小気味よい。
多分ようやくここでネリーの戦争は終わるのでしょう。
大きな犠牲を払ってしまいましたが・・・。
面白くはありましたが、やや設定にムリがあるような気がしなくもない。

あの日のように抱きしめて [DVD]
クリスティアン・ペッツォルト,ユベール・モンティエ,ピオットル・シュトエレキ
アルバトロス


「あの日のように抱きしめて」
2014年/ドイツ/98分
監督:クリスティアン・ペッツォルト
出演:ニーナ・ホス、ロナルド・ツェアフェルト、ニーナ・クンツェンドルク

皮肉度★★★★★
満足度★★★.5