事実を伝えようとする熱意

* * * * * * * * * *
さてお待ちかね、アカデミー賞作品賞受賞作です。
2002年にあった実話を元にしています。
ボストン・グローブ紙の新聞記者たちが、
神父による児童への性的虐待と、カトリック教会がその事実を看過しているという、
大スクープを成し遂げるまでのストーリー。

ある神父による児童への性的虐待という一つの事件が発端です。
聖職者にあるまじき行為。
これはネタになる、と。
ところが調べていくうちに、同じような事件が過去にいくつもあったことがわかってきます。
いや、いくつもなどというものではない、異常な多さ。
しかもそれがすべて、教会により隠し通されてきているし、
どうやら弁護士もその隠蔽に加担しているようだ・・・。

これは常に禁欲を強いられる神父のいわば職業病のようなもの
・・・と言われればとてもわかりやすいですが、
だからといってそれを放置するのはやっぱりダメですよね。
もしかすると、これって、この近年だけではなく
カトリック教会の創始期からずっとそうだったのではないか?という気さえしてきます。
だからそれを隠蔽するノウハウも教会は多分たっぷり持っていたのではないかな?
・・・などと、考えすぎでしょうか。

これが警官や教師がしでかしたことなら、すぐに公になるでしょう。
(そうでない場合も時にはありそうですが。)
でも、神父という立場が、余計にことを表沙汰にさせなくする。
神に一番近いはずの神父様が、そんなことをするはずがない、
という思い込みが一つ。
その神父様を悪く言うと、何か自分自身が悪いかの様な気がしてしまう。
だからそのことを口にすることをまず躊躇してしまいます。
タブーである事件はそれを語ることすらもタブーになってしまう。
被害者は、しっかりした家庭にない気弱な子どもばかり。
だから虐待のことは人に言うことができず、
自分で抱え混んだままずっと苦しんでいる。

「スポットライト」の記事は、神父の個別の罪を言うのではなく、
これらを隠蔽し続けたカトリック教会の問題
として取り上げることにするというのは一つの英断だと思います。
けれどもある意味これは一国の政府のスキャンダルを暴くよりも
もっと大きなことなのですよね。
だって、カトリック教会の信者は世界中にいるし、宗教は、より人の心を操ります。
だから、彼らチームの緊迫感がどんどん高まっていくのがリアルに伝わります。
本当にこんなことを続けても大丈夫なのか。
何か自分や家族に類が及ぶのではないかという恐れ。
そして一方、この真実を伝えることは自分たちの使命だ。
そういう矜持。
取材の一つ一つがとても丁寧で、そして最後の最後まで、
実証されたことだけを伝えるように努力する、
そういう姿勢にも感銘を受けました。
「フォックスキャッチャー」のマーク・ラファロ、
「バードマン」のマイケル・キートン。


いま旬の俳優の起用がピッタリはまっていますし、
キャストばかりでなく、スタッフの熱意までもがひしひしと感じられる。
これぞ「映画力」たっぷりの作品。
ちなみに、このテーマを追うことを決断した新任局長役のリーブ・シュレイバーは
私の好きな役者さん。

このようなところでお目にかかれてウレシイ!
近年のアカデミー賞受賞作品の中では、一番好きかもしれません。
「スポットライト 世紀のスクープ」
2015/アメリカ/128分
監督:トム・マッカーシー
出演:マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、リーブ・シュレイバー、ジョン・スラッテリー
スキャンダル度★★★★★
緊迫感★★★★★
満足度★★★★★

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さてお待ちかね、アカデミー賞作品賞受賞作です。
2002年にあった実話を元にしています。
ボストン・グローブ紙の新聞記者たちが、
神父による児童への性的虐待と、カトリック教会がその事実を看過しているという、
大スクープを成し遂げるまでのストーリー。

ある神父による児童への性的虐待という一つの事件が発端です。
聖職者にあるまじき行為。
これはネタになる、と。
ところが調べていくうちに、同じような事件が過去にいくつもあったことがわかってきます。
いや、いくつもなどというものではない、異常な多さ。
しかもそれがすべて、教会により隠し通されてきているし、
どうやら弁護士もその隠蔽に加担しているようだ・・・。

これは常に禁欲を強いられる神父のいわば職業病のようなもの
・・・と言われればとてもわかりやすいですが、
だからといってそれを放置するのはやっぱりダメですよね。
もしかすると、これって、この近年だけではなく
カトリック教会の創始期からずっとそうだったのではないか?という気さえしてきます。
だからそれを隠蔽するノウハウも教会は多分たっぷり持っていたのではないかな?
・・・などと、考えすぎでしょうか。

これが警官や教師がしでかしたことなら、すぐに公になるでしょう。
(そうでない場合も時にはありそうですが。)
でも、神父という立場が、余計にことを表沙汰にさせなくする。
神に一番近いはずの神父様が、そんなことをするはずがない、
という思い込みが一つ。
その神父様を悪く言うと、何か自分自身が悪いかの様な気がしてしまう。
だからそのことを口にすることをまず躊躇してしまいます。
タブーである事件はそれを語ることすらもタブーになってしまう。
被害者は、しっかりした家庭にない気弱な子どもばかり。
だから虐待のことは人に言うことができず、
自分で抱え混んだままずっと苦しんでいる。

「スポットライト」の記事は、神父の個別の罪を言うのではなく、
これらを隠蔽し続けたカトリック教会の問題
として取り上げることにするというのは一つの英断だと思います。
けれどもある意味これは一国の政府のスキャンダルを暴くよりも
もっと大きなことなのですよね。
だって、カトリック教会の信者は世界中にいるし、宗教は、より人の心を操ります。
だから、彼らチームの緊迫感がどんどん高まっていくのがリアルに伝わります。
本当にこんなことを続けても大丈夫なのか。
何か自分や家族に類が及ぶのではないかという恐れ。
そして一方、この真実を伝えることは自分たちの使命だ。
そういう矜持。
取材の一つ一つがとても丁寧で、そして最後の最後まで、
実証されたことだけを伝えるように努力する、
そういう姿勢にも感銘を受けました。
「フォックスキャッチャー」のマーク・ラファロ、
「バードマン」のマイケル・キートン。


いま旬の俳優の起用がピッタリはまっていますし、
キャストばかりでなく、スタッフの熱意までもがひしひしと感じられる。
これぞ「映画力」たっぷりの作品。
ちなみに、このテーマを追うことを決断した新任局長役のリーブ・シュレイバーは
私の好きな役者さん。

このようなところでお目にかかれてウレシイ!
近年のアカデミー賞受賞作品の中では、一番好きかもしれません。
「スポットライト 世紀のスクープ」
2015/アメリカ/128分
監督:トム・マッカーシー
出演:マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、リーブ・シュレイバー、ジョン・スラッテリー
スキャンダル度★★★★★
緊迫感★★★★★
満足度★★★★★