映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「なんらかの事情」岸本佐知子

2016年04月08日 | 本(エッセイ)
どこかできっと自分とつながっている異次元の世界

なんらかの事情 (ちくま文庫)
岸本 佐知子
筑摩書房


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これはエッセイ?
ショート・ショート?
それとも妄想という名の暴走?
翻訳家岸本佐知子の頭の中を覗いているかのような
「エッセイ」と呼ぶにはあまりに奇妙で可笑しな物語たちは、
毎日の変わらない日常を一瞬で、見たことのない不思議な場所に変えてしまいます。
人気連載、待望の文庫化第二弾。
今回も単行本未収録回を微妙に増量しました。
イラストはクラフト・エヴィング商會。


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先に読んだ同じ著者の「ねにもつタイプ」があまりにも面白かったので、
その第二弾である本作も迷わず手に取りました。
これはエッセイというよりも、すでに未知なる異次元の世界への旅。
ただしやはり先に読んだ「ねにもつタイプ」のインパクトが強かった・・・。
どんなものにも「慣れ」はあるものです。
でも多分、こちらを先に読んだ方は、
やっぱりこの「異界」に驚かされるに違いありません。


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あのダース・ベイダーも夜は寝るのだろうか。
・・・という疑問から発した妄想の世界。
ダース・ベイダーは一日の終り、自室に入って黒マントを脱ぎ、ヘルメットも脱ぐだろうか。
一日の終りにはじめて顔に頭に涼しい風を感じてやっと人心地をつくだろうか・・・
うーむ、考えたこともなかったですが・・・。
これはあれですねえ、例えば会社で偉そうにふんぞり返っている重役が、
帰宅してステテコ姿になっている悲哀とか、そういう雰囲気がありますねえ・・・。

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「日本タイトルだけ大賞」は、内容は関係なくタイトルのインパクトのみで決められる賞。
2011年度の大賞は「奥の細道・オブ・ザ・デッド」で
「息するだけダイエット」や「薄毛の食卓」などがノミネート・・・・。

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人は死ぬ前に思い出が走馬灯のように目の前に立ち現れるという。
だからいつ死が襲ってきても構わないように
走馬灯の手入れをしておかなくてはならない。
歯車の一つ一つに油をさして、錆びついたところがないかどうか点検する・・・。

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そうそう、私も驚いた話が一つ。
アスパラを食べた後に尿が変な匂いになる、という話。
うん、そうだよ、それ常識でしょ、と私は思っていたのです。
ところが日本ではそういう現象が起こるのは人口の一割しかいないとのこと。
えー! 私は皆そうなのだと思っていました。
そうじゃなかったんですか。
欧米ではかなり常識的な話らしいのですが・・・。
少なくとも私と岸本氏はある意味同類なんですね・・・。
だからこんなにシンパシーを覚えるのかしらん??? 
私も<アスパラ秘密結社>に入会しよう。


・・・こんな感じで、きっとどなたにも琴線に触れる部分があると思います。
やっぱりユニークな本。

「なんらかの事情」岸本佐知子 ちくま文庫
満足度★★★★☆