映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ラヴェンダーの咲く庭で

2016年04月14日 | 映画(ら行)
その若さと美しさに、魅せられないはずかない。



* * * * * * * * * *

先日、柏木広樹さんのチェロコンサートに行きまして、
その中で演奏されていた曲の一つが、この「ラヴェンダーの咲く庭で」のテーマ曲。
私は公開時ではないですが、以前見ているのですが、
実はその2、3ヶ月前、この映画とそっくりなシチュエイションで、
海岸で発見された記憶喪失で言葉も通じない青年が、
ピアノの名手、という実際の事件が話題になったのですね。
この映画のPRではないかとのうわさもあったくらい。
それで印象に残っています。
元来イングリッシュガーデンにあこがれてもいましたし。
それで、また見たくなって、みて、驚いた!
主演の老姉妹というのが、ジュディ・デンチとマギー・スミスだったとは!!
当時は、私がぼちぼち映画を見始めた頃なので、
女優さんの名前もなにもわかっていなかった・・・! 
「マリーゴールドホテル」のお二人が、
こんなところでも共演していたんですねえ・・・。


1936年。
イギリス・コーンウォール。
ヨーロッパは第二次大戦の少し前という辺り。
ドイツが不穏な動きをみせている頃でしょうか。
しかし、イギリスの片田舎、海辺のこの小さな町では、平穏で静かな時が流れています。
アーシュラ(ジュディ・デンチ)とジャネット(マギー・スミス)の老姉妹は、
両親の残した家でつつましく暮らしていました。
ある日、家の近くの海岸で、倒れている一人の青年・アンドレア(ダニエル・ブリュール)を見つけます。
二人は彼を家へ運び込み、看病をするようになります。
これまで未婚のままでいたアーシュラは、
その若者の眩しいほどの若さと美しさに心奪われてしまうのです。
その青年はポーランド人で、始めは互いに言葉も通じなかったのですが、
次第に馴染んでいきます。
そしてある時、その青年アンドレアがヴァイオリンの名手であることがわかります。


老姉妹の時が止まったような日々の中に現れた青年は、
2人の生活に活力を与えます。
次第に二人にとってかけがいのない存在になっていく。
特に、アーシュラにとっての彼は、完全に「愛」の対象となっていくのですが、
それは所詮叶わぬ思いであることはもちろん本人もわかっているのです。
アーシュラの思いに気づいているジャネットもまた、
そのことでいつかアーシュラが傷つくことを恐れている。
そんな時、世界的に著名なヴァイオリニストを兄に持つ画家のオルガが、
アンドレアの才能を見出し、兄に紹介しようとするのですが、
姉妹はその話を握りつぶしてしまうのです。
アンドレアを失いたくない、ただその一心で。


だけれども、こんなに生気に満ちた若者を縛り付けておくことなんかできない。
きっといつか彼は出て行ってしまう。
そのことも二人にはわかっていたのですよね。
「老い」の悲しさ、切なさ。
ロンドンのコンサートシーンには泣けます・・・。
姉妹の家の女中ドーカスが、姉妹の留守にアンドレアをこき使い、
おイモの皮を剥かせているシーンが楽しかった!!

ラヴェンダーの咲く庭で(通常版) [DVD]
ジュディ・デンチ,マギー・スミス,ダニエル・ブリュール,ナターシャ・マケルホーン
KADOKAWA / 角川書店


「ラヴェンダーの咲く庭で」
2004年/イギリス/105分
監督・脚本:チャールズ・ダンス
原作:ウィリアム・J・ロック
出演:ジュディ・デンチ、マギー・スミス、ダニエル・ブリュール、ミリアム・マーゴリーズ

老いの切なさ度★★★★★
イギリスの田園風景度★★★★☆
満足度★★★★☆