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「紙魚家崩壊 九つの謎」北村薫

2016年05月02日 | 本(ミステリ)
ちょっぴりビターな短編集

紙魚家崩壊 九つの謎 (講談社文庫)
北村 薫
講談社


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日常のふとした裂け目に入りこみ心が壊れていく女性、
秘められた想いのたどり着く場所、
ミステリの中に生きる人間たちの覚悟、
生活の中に潜むささやかな謎を解きほぐす軽やかな推理、
オトギ国を震撼させた「カチカチ山」の"おばあさん殺害事件"の真相とは?
優美なたくらみに満ちた九つの謎を描く傑作ミステリ短編集。


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北村薫氏のミステリ短編集。
これらの短編は、特につながりはなく(連作となっているものもありますが)
それぞれの味わいがありますが、ちょっぴり苦味のきいた作品も多いのです。


冒頭の「溶けていく」はちょっと怖い。
就職し、一人暮らしを始めた女性が主人公。
仕事は順調そうに見えたのですが・・・、ふとしたことから次第に心が壊れていく・・・。
誰の近くにも、もしかしたらこんなふうに、
心の落とし穴がぽっかりと口を開けているのかもしれない・・・。


こんな中で、少しほっとするのが「サイコロ、コロコロ」と「おにぎり、ぎりぎり」。
こちらも出版社に就職した女性のストーリーで、
一瞬嫌な予感が走ったのですが、でも大丈夫。
こちらは、ほんのささやかな日常の謎を解く、
ちょっぴり陽だまりで休憩するような雰囲気の作品。
10面のサイコロの使いみちは? 
3人で作ったおにぎり、どれを誰が作ったのか、当てられるかな?


そしてラスト「新釈おとぎばなし」は、
カチカチ山を題材にした、まさしく、ミステリ。
おばあさんを殺したのは、本当に「たぬき」なのか? 
ちょっぴり色っぽいウサギの探偵が、仕組まれた謎を解き明かします。
面白いなあ・・・、
こういうの、もっと読んでみたいと思いました。

「紙魚家崩壊 九つの謎」北村薫 講談社
(図書館蔵書)

満足度★★★.5