中間管理職は、つらいよ
* * * * * * * * * *
本作はすでに本で読んでいて、しかも苦手な前・後編、ということで、
ややためらっていたのですが、それにしてもこの出演陣の豪華さはどうよ・・・って、
見れば見るほどこれは見逃せないという気持ちになってきました。
それに、確かに読んだのですが、程よくストーリーも忘れかけていますし・・・(^_^;)
昭和64年、年頭のわずか一週間の間に起こった少女誘拐殺人事件、通称ロクヨン。
この事件が未解決のまま14年が過ぎた平成14年。
時効が目前に迫ったこの時が本作の舞台です。
かつて刑事部の刑事としてロクヨンの捜査にもあたった三上(佐藤浩市)は、
今は警務部の広報官を務めています。
しかし、記者クラブとの確執や刑事部と警務部の対立の矢面に立ち、
神経をすり減らしているのです。
おまけに個人的には一人娘が家出し行方不明。
仕事でも家庭でも心休まらないヒリヒリした毎日を、しかし、三上は真摯に立ち向かっていく。
そうそう、本を読んだ時にも感じたこの重圧感、
組織の中で生きる男性はキビシイなあ・・・と、つくづく思うのでした。
中間管理職は特に・・・。
この前編は記者クラブとの対立を中心に描いていきますが、
64の事件との関連では、なんと14年前の事件の時に、
捜査側に大きなミスがあったことを隠蔽し続けていたということがわかります。
そんなこともあって、殺害された少女の父親(永瀬正敏)は
警察に対しても心を閉ざしているのです。
本編の見どころはなんといっても、ラスト近くにある記者クラブの前での三上の語り。
三上を敵視している面々は始めのうち、聞くのも嫌だという顔をしています。
今さら言い訳めいたことなど聞きたくもない、と。
しかし、とつとつと語り始めた三上に次第に皆引きこまれ、
最後の方では感動を隠せず涙ぐむものもいるほど。
いや、私も少し泣けました。
独り語りなので佐藤浩市さんのセリフはすごく長いです。
でも、ものすごく気持ちのこもった説得力のある話。
後ほど解説を読んで知りましたが、ここのところは
やはりノーカットの長回しで一気に撮影したそうなのです。
画面的には回想シーンも入るので、実はカットを入れても大丈夫なところなのですが、
佐藤浩市さん自身の希望で、ノーカットで撮影したとのこと。
まさにその効果だと思います。
素晴らしいシーン、佐藤浩市さんの底力を見せられるシーンでもあります。
その場には今人気上昇中の若手の俳優さんも大勢いたわけですが、
すごく刺激になったのではないかと思います。
警察も新聞記者も、つい自分たちの論理で物事を考えます。
けれども、自分たちも記者も、もっと被害者に寄り添うべきなのではないかと、
つまりそういう話だったのだと思います。
この事については、三上自身も始めからそう思っていたわけではない。
けれども本作中での色々な苦い経験を経て、
その答えにたどり着いたのです。
さてそんなわけで、ようやく記者クラブとの関係が緩和された矢先、
なんとロクヨンを模倣した誘拐事件が発生?!
というところで「つづく」・・・。
ひゃ~、これは見ないわけには行きません。
私の苦手とする前・後編ものではありますが、
でもこれは、この気持ちの変化を表現するためには、
やはりじっくりと順を踏んで描かなければダメだったろうということがよくわかります。
まあ、一ヶ月後には続きも見られるので、
さすがにそれまでに忘れ果てることはないでしょう・・・。
それにしても、豪華出演陣もダテではなく、
素晴らしいキャスティングですね。
主役佐藤浩市さんはもちろんですが、
彼を補佐する若手青年に綾野剛。
引きこもりになってしまう技師に窪田正孝、
記者クラブの先鋭に瑛太、
誘拐殺人を受けた少女の父親に永瀬正敏、
いかにも現場を知らなさそうなキャリアの県警本部長に椎名桔平、
ものすご~く嫌な上役、警務部長に滝藤賢一・・・。
滝藤賢一さんは、いじめを受けて精神が危うくなってしまう気弱な男の役も似合っていましたが、
こういう徹底した嫌われ役もまたこなせちゃうんだなあ・・・・。
文句のない力作。
後編が楽しみです。
「64 ロクヨン」
2016年/日本/121分
監督:瀬々敬久
原作:横山秀夫
出演:佐藤浩市、綾野剛、瑛太、永瀬正敏、榮倉奈々、瑛太、夏川結衣、窪田正孝、筒井道隆、坂口健太郎、滝藤賢一、椎名桔平、
中間管理職の悲哀度★★★★★
熱演度★★★★★
満足度★★★★★
* * * * * * * * * *
本作はすでに本で読んでいて、しかも苦手な前・後編、ということで、
ややためらっていたのですが、それにしてもこの出演陣の豪華さはどうよ・・・って、
見れば見るほどこれは見逃せないという気持ちになってきました。
それに、確かに読んだのですが、程よくストーリーも忘れかけていますし・・・(^_^;)
昭和64年、年頭のわずか一週間の間に起こった少女誘拐殺人事件、通称ロクヨン。
この事件が未解決のまま14年が過ぎた平成14年。
時効が目前に迫ったこの時が本作の舞台です。
かつて刑事部の刑事としてロクヨンの捜査にもあたった三上(佐藤浩市)は、
今は警務部の広報官を務めています。
しかし、記者クラブとの確執や刑事部と警務部の対立の矢面に立ち、
神経をすり減らしているのです。
おまけに個人的には一人娘が家出し行方不明。
仕事でも家庭でも心休まらないヒリヒリした毎日を、しかし、三上は真摯に立ち向かっていく。
そうそう、本を読んだ時にも感じたこの重圧感、
組織の中で生きる男性はキビシイなあ・・・と、つくづく思うのでした。
中間管理職は特に・・・。
この前編は記者クラブとの対立を中心に描いていきますが、
64の事件との関連では、なんと14年前の事件の時に、
捜査側に大きなミスがあったことを隠蔽し続けていたということがわかります。
そんなこともあって、殺害された少女の父親(永瀬正敏)は
警察に対しても心を閉ざしているのです。
本編の見どころはなんといっても、ラスト近くにある記者クラブの前での三上の語り。
三上を敵視している面々は始めのうち、聞くのも嫌だという顔をしています。
今さら言い訳めいたことなど聞きたくもない、と。
しかし、とつとつと語り始めた三上に次第に皆引きこまれ、
最後の方では感動を隠せず涙ぐむものもいるほど。
いや、私も少し泣けました。
独り語りなので佐藤浩市さんのセリフはすごく長いです。
でも、ものすごく気持ちのこもった説得力のある話。
後ほど解説を読んで知りましたが、ここのところは
やはりノーカットの長回しで一気に撮影したそうなのです。
画面的には回想シーンも入るので、実はカットを入れても大丈夫なところなのですが、
佐藤浩市さん自身の希望で、ノーカットで撮影したとのこと。
まさにその効果だと思います。
素晴らしいシーン、佐藤浩市さんの底力を見せられるシーンでもあります。
その場には今人気上昇中の若手の俳優さんも大勢いたわけですが、
すごく刺激になったのではないかと思います。
警察も新聞記者も、つい自分たちの論理で物事を考えます。
けれども、自分たちも記者も、もっと被害者に寄り添うべきなのではないかと、
つまりそういう話だったのだと思います。
この事については、三上自身も始めからそう思っていたわけではない。
けれども本作中での色々な苦い経験を経て、
その答えにたどり着いたのです。
さてそんなわけで、ようやく記者クラブとの関係が緩和された矢先、
なんとロクヨンを模倣した誘拐事件が発生?!
というところで「つづく」・・・。
ひゃ~、これは見ないわけには行きません。
私の苦手とする前・後編ものではありますが、
でもこれは、この気持ちの変化を表現するためには、
やはりじっくりと順を踏んで描かなければダメだったろうということがよくわかります。
まあ、一ヶ月後には続きも見られるので、
さすがにそれまでに忘れ果てることはないでしょう・・・。
それにしても、豪華出演陣もダテではなく、
素晴らしいキャスティングですね。
主役佐藤浩市さんはもちろんですが、
彼を補佐する若手青年に綾野剛。
引きこもりになってしまう技師に窪田正孝、
記者クラブの先鋭に瑛太、
誘拐殺人を受けた少女の父親に永瀬正敏、
いかにも現場を知らなさそうなキャリアの県警本部長に椎名桔平、
ものすご~く嫌な上役、警務部長に滝藤賢一・・・。
滝藤賢一さんは、いじめを受けて精神が危うくなってしまう気弱な男の役も似合っていましたが、
こういう徹底した嫌われ役もまたこなせちゃうんだなあ・・・・。
文句のない力作。
後編が楽しみです。
「64 ロクヨン」
2016年/日本/121分
監督:瀬々敬久
原作:横山秀夫
出演:佐藤浩市、綾野剛、瑛太、永瀬正敏、榮倉奈々、瑛太、夏川結衣、窪田正孝、筒井道隆、坂口健太郎、滝藤賢一、椎名桔平、
中間管理職の悲哀度★★★★★
熱演度★★★★★
満足度★★★★★