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「依頼人は死んだ」若竹七海

2016年05月30日 | 本(ミステリ)
葉村晶シリーズのの始まり

依頼人は死んだ (文春文庫)
若竹 七海
文藝春秋


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念願の詩集を出版し順風満帆だった婚約者の突然の自殺に苦しむ相場みのり。
健診を受けていないのに送られてきたガンの通知に当惑する佐藤まどか。
決して手加減をしない女探偵・葉村晶に持つこまれる様々な事件の真相は、
少し切なく、少しこわい。
構成の妙、トリッキーなエンディングが鮮やかな連作短篇集。


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若竹七海さんの女探偵・葉村晶シリーズ、
本作が第一弾なのですが、私は第3弾から逆行して読んできました。
本巻は連作の短編集。


次巻で辛い展開となる相葉みのりと葉村晶の関係は、ここではまずまず。
相葉みのりが婚約者を亡くし、二人で住むはずだったマンションに
葉村が居候しているということになっています。
もともと二人とも思ったことをズケズケ言う遠慮のない仲だったようです。
本巻中には、この相葉みのりが探偵役を務めるという興味深い一作もあり。
だけれど、私は後の展開を知っているためか、
どうもこの女性はあまり好きになれないのでした。
一つの物語中に似たような気の強い女性は必要ない。
…だからこそ後々、相葉みのりは舞台から退場していくのかもしれません。


表題の「依頼人は死んだ」は、
「検査の結果、あなたはガンです」
という告知文を受けてしまった女性からの相談を葉村が受けます。
そもそも、健診すら受けていないのに!!
「再検の案内ならまだしも、いきなりガンの告知はあり得ない。
これは何かの間違いか、誰かのいたずら。」
という葉村の言葉に依頼人はすっかり安心して帰ったはずなのですが・・・。
翌日その依頼人が、「ガンを苦に自殺」してしまうのです。
いったい、なぜ???


本巻の葉村晶は一度も怪我も入院もしていません。
まだ、ハードボイルドにはないっていないのですね。
けれど、多少自虐的にコミカルに語られる部分がない。
そういうメリハリの点では、やはり後作のほうが読み応えがあるようです。


「依頼人は死んだ」若竹七海 文藝春秋  図書館蔵書にて
満足度★★★☆☆