映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「はるひのの、はる」加納朋子

2016年05月26日 | 本(その他)
会うことの叶わない懐かしい人に会いたければ・・・

はるひのの、はる (幻冬舎文庫)
加納 朋子
幻冬舎


* * * * * * * * * *

ある日、僕の前に「はるひ」という女の子が現れる。
「未来を変えるために、助けてほしい」と頼まれた僕は、
それから度々彼女の不思議なお願いを聞くことになり…。
時を越えて明かされる、温かな真実。切なくも優しい連作ミステリー。


* * * * * * * * * *

「ささらさや」、「てるてるあした」に次ぐ加納朋子さんの
「ささら」シリーズ第3弾。


例によって、前作の内容は殆ど忘れてしまっているものの、
忘れていても全然大丈夫という内容なので、OKでした。
ただし、ここに登場するユウスケくんには覚えがあります。
「ささらさや」で、ゴーストとなって登場する夫の、忘れ形見の赤ん坊。
この子には、普通の人に見えない「何者か」が見えるのです。
そしてその彼が成長する過程で、時折現れる「はるひ」という少女の謎。
幽霊が見える彼ですが、「はるひ」は幽霊ではなく、しっかりと実態を持った女性なのです。
そしてその少女はユウスケに不可解なお願いをする。
けれども彼女はその後掻き消えたように姿を見せなくなり、
何年もたってからまた現れる。
そしてユウスケが高校へ上がった時に、
クラスに「はるひ」そっくりの少女がいたのですが、
彼女は全く別の名前で、「はるひ」のこともユウスケのことも知らないというのです。


同じ人物が登場するのに、微妙にずれていくエピソード。
ゴーストストーリーに若干SF風味も載せていく展開は、とても興味深いです。
時空をも超えてゆく"人の想い"に、幻惑され、
そして深い感動に導かれます。


ユウスケくんを始め登場する少年少女たちの成長ぶりを
つぶさに見ることができるのが存外の幸せ。
今はもう会うこともかなわない懐かしい人に会いたければ、
この佐々良の町に行ってみると良いかもしれません。



「はるひのの、はる」加納朋子 幻冬舎文庫
満足度★★★★☆