松茸の生える場所
* * * * * * * * * *
江戸中期、松茸は幕府への貴重な献上品であり、
松茸狩は尾張藩主が好む一大行事であった。
算術が得意な江戸育ちの尾張藩士・小四郎は
それを生かして藩財政の立て直しを夢見ていたが、なぜか「御松茸同心」を拝命。
尾張の山守に助けられながらも松茸不作の原因を探る日々が始まった。
やがて小四郎は、山に魅せられ、自分の生きる道を切り開いていく――。
数式でははかれない世界がそこにはあった!
直木賞作家が描く、傑作時代小説!
* * * * * * * * * *
本作の主人公は、若き尾張藩士、小四郎。
頭がよく算術が得意。
けれどそれを鼻にかけるところがあって、
周りの年長者や上役が馬鹿に見え、つい見下してしまう。
だから自分では将来出世するのが当然と思っているのですが、
実は周りからは厄介者のように思われているという・・・。
ちょっとイタいですね。
そんな彼がある時「御松茸同心」という役を受けてしまい、田舎暮らしを余儀なくされます。
「まるで左遷ではないか、どういうわけだ?」
と、彼は思うのですが、実はその通りだったりする・・・。
松茸は尾張の重要な財源であったのですが、
近年、どんどん松茸が採れなくなってきているのです。
江戸屋敷からは
「贈り物にするので松茸を何千本よこせ」
とか気軽に言ってくるのですが、そもそも採れないのでどうすることもできない。
そこで仕方なく商人から用立ててもらってそれを送ります。
そんなことをするので、借金が膨らむばかり。
算術が得意な彼なので、そのへんはすごく気になってしまうのです。
以前はあんなにも採れていた松茸が、なぜ採れないのか?
小四郎は、その原因を探り、対処する方法も考えつきますが・・・。
松茸はただ生えているのではない。
赤松と菌の共生。
そしてそれを手助けする人の力がなくてはならないという、科学的根拠にまで迫る素敵な作品です。
前述のとおり、小四郎はちょっと嫌なタイプなのですが、
彼を取り囲むキャラクターが良いのです。
「三べえ」と呼ばれるいかにもお気楽なおじさまトリオ。
彼らのことを小四郎は嫌っていたのですが、
実は彼らは、人から爪弾きにされている頭でっかちの小四郎を気遣っているようにも見受けられるのですね。
実際、この山暮らしの小四郎のもとを彼らが訪ねて来なかったら、
あまりにもわびしくて、さすがに辛かったのでは?と思えます。
また、ここの山守の娘・千草の、侍を侍とも思わないゾンザイな口の聞きようがまた痛快。
そしてまた、将軍家の跡取り候補でもあったはずの尾張藩主宗春の
二十数年にわたる蟄居のことにも絡み、非常に興味深い歴史物語でもあります。
そしていつしか、小四郎も変わっていきます。
あんなにも功を焦り目立ちたがり出世したがっていた彼が・・・・。
読後感も最高の一冊。
朝井まかてさんの、ますますファンになってしまいました。
「御松茸騒動」朝井まかて 徳間書店 図書館蔵書にて
満足度★★★★☆
![]() | 御松茸騒動 |
朝井 まかて | |
徳間書店 |
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江戸中期、松茸は幕府への貴重な献上品であり、
松茸狩は尾張藩主が好む一大行事であった。
算術が得意な江戸育ちの尾張藩士・小四郎は
それを生かして藩財政の立て直しを夢見ていたが、なぜか「御松茸同心」を拝命。
尾張の山守に助けられながらも松茸不作の原因を探る日々が始まった。
やがて小四郎は、山に魅せられ、自分の生きる道を切り開いていく――。
数式でははかれない世界がそこにはあった!
直木賞作家が描く、傑作時代小説!
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本作の主人公は、若き尾張藩士、小四郎。
頭がよく算術が得意。
けれどそれを鼻にかけるところがあって、
周りの年長者や上役が馬鹿に見え、つい見下してしまう。
だから自分では将来出世するのが当然と思っているのですが、
実は周りからは厄介者のように思われているという・・・。
ちょっとイタいですね。
そんな彼がある時「御松茸同心」という役を受けてしまい、田舎暮らしを余儀なくされます。
「まるで左遷ではないか、どういうわけだ?」
と、彼は思うのですが、実はその通りだったりする・・・。
松茸は尾張の重要な財源であったのですが、
近年、どんどん松茸が採れなくなってきているのです。
江戸屋敷からは
「贈り物にするので松茸を何千本よこせ」
とか気軽に言ってくるのですが、そもそも採れないのでどうすることもできない。
そこで仕方なく商人から用立ててもらってそれを送ります。
そんなことをするので、借金が膨らむばかり。
算術が得意な彼なので、そのへんはすごく気になってしまうのです。
以前はあんなにも採れていた松茸が、なぜ採れないのか?
小四郎は、その原因を探り、対処する方法も考えつきますが・・・。
松茸はただ生えているのではない。
赤松と菌の共生。
そしてそれを手助けする人の力がなくてはならないという、科学的根拠にまで迫る素敵な作品です。
前述のとおり、小四郎はちょっと嫌なタイプなのですが、
彼を取り囲むキャラクターが良いのです。
「三べえ」と呼ばれるいかにもお気楽なおじさまトリオ。
彼らのことを小四郎は嫌っていたのですが、
実は彼らは、人から爪弾きにされている頭でっかちの小四郎を気遣っているようにも見受けられるのですね。
実際、この山暮らしの小四郎のもとを彼らが訪ねて来なかったら、
あまりにもわびしくて、さすがに辛かったのでは?と思えます。
また、ここの山守の娘・千草の、侍を侍とも思わないゾンザイな口の聞きようがまた痛快。
そしてまた、将軍家の跡取り候補でもあったはずの尾張藩主宗春の
二十数年にわたる蟄居のことにも絡み、非常に興味深い歴史物語でもあります。
そしていつしか、小四郎も変わっていきます。
あんなにも功を焦り目立ちたがり出世したがっていた彼が・・・・。
読後感も最高の一冊。
朝井まかてさんの、ますますファンになってしまいました。
「御松茸騒動」朝井まかて 徳間書店 図書館蔵書にて
満足度★★★★☆